バイプレイヤーの泉 第125回 『さよならマエストロ』満島真之介は歩くエンターテイメント

2024年2月16日(金)21時0分 マイナビニュース

幼少期から熱血ドラマオタクというエッセイスト、編集者の小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。
第125回はタレントの満島真之介(みつしま・しんのすけ)さんについて。視線を向けているつもりはないのに、テレビを見ていると、何故か視界にずっと溶け込んでいる人がいる。気がつくとその正体は満島さんでした。やっぱり明るさは人を救うんだ、と考えたことについて綴ります。
○登場だけで視聴者の期待をそそる、エンパワーメント
まずは現在、満島さんが出演している『さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜(以下『さよならマエストロ』略)』(TBS系)のあらすじを。
「仕事で不在になるので、子どもの面倒を見てほしい」と妻から依頼を受けて、ウィーンから日本へ20年ぶりに帰国した夏目俊平(西島秀俊)。彼は天才と呼ばれた楽団の指揮者だった。日本で待っていたのは、とある事件によって、父親を受け入れなくなった娘の響(芦田愛菜)と、息子。家庭内もうまく回らない状態のまま、さらに存続が危ぶまれる、地元・晴見市楽団の指揮をすることになった俊平。彼、そして夏目家、楽団の未来やいかに?
とにかく俊平はポンコツお父さん。家事はできない、家族とは意思疎通が取れない。でも音楽に対する情熱と、指揮の才能だけはある天才。彼のような天然素材はお世話することが大変だろうと思っていたら、第4話で妻・志帆(石田ゆり子)から離婚を切り出されていた。このシーンが印象的だったので、ネタバレを含めて、書かせてほしい。家事、育児に加えて、日常生活に関しては0点ばかりの夫の世話が続いていた、志帆。彼女はパンク寸前だった。画家としてのキャリアも失いそうになっていたからだ。
「気づいていた? あなたと暮らしていた時に、私がまったく絵を描いてなかったことを気づいていた? 生きがいを失っていたことに!」
「あなたが指揮棒を振っている間、私は人生を棒に振っていたんだから!!」
楽団の演奏とともに、ラストはどうか夏目家のメンバー、それぞれに幸せな方向へ収まってほしい。
さて満島さんは『さよならマエストロ』に第4話から俊平の元マネジャーの鏑木晃一役として登場。響と俊平の間に起こった事件を知る人物らしく、志帆とも親しそうにハグを交わしていた。そして、第5話では楽団を盛り上げる一員となっていく。
○唯一の損得勘定ゼロ芸能人
私が満島さんのことを知ったのは、姉・ひかりさんの影響だった。女優として世間の認知度、賞賛が高まっている最中、姉の背後から突如現れたのが、弟だった。
しがらみの多いと言われる芸能界で、損得勘定ゼロを感じさせる満島さん。それが彼の最大の特徴であり、誇るべきもの。
こんなシーンを目撃した。
以前、バラエティー番組で「キンプリになりたい」と公言していたのだ。そう発言する目にも、声色にも曇りはない。その後、気になって彼の後を追ってみると、キンプリの番組に番宣ゼロで何度も出演していた。彼は6人目のメンバーを本気で狙っていたはずだ。
加えて彼からは「この人、止まっちゃったら死ぬんじゃないかしら」という、スピード感をビジバシ感じる。私のこの予想は大当たりで、満島さんはバスケットボールの熱血ファンらしく、昨年開催されたワールドカップ時は情報番組で、キレッキレの試合説明をしていた。この時も彼の本気度が伝わってきた。会ったこともないけれど、彼はきっと平熱が高いのでは……と、ますます目が離せなくなる。
ここまでの熱すぎるイメージが強すぎたのか、次はドラマで満島さんを見かけても、役柄が頭に入ってこないという現象が起きる。昨年放送の『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系)で演じていた、消防団の藤本勘介を見ても、役が彼に憑依している感覚を覚えた。今回の『さよならマエストロ』でも、たった2話しか顔を見せていないのに、やはり、強い。
そうやって彼のことを考えていくと、満島真之介の存在自体がエンターテイメントジャンルだと悟る。メディアは何かを彼に当てはめようとしたらダメだ。満島さん自身から勝手に発生するオーラを、制作サイドが拾う手法を採用したほうが、盛り上がるはずだ。
同じような雰囲気を他にも感じた人がいた……と回想すると、それは木梨憲武さんだった。とてつもなく元気な大人の2人。先日放送の『A-Studio+』(TBS系)で、2人の間には交友関係があると、ノリさんが話していたことが腑に落ちた。『春になったら』(関西テレビ、フジテレビ系)には木梨、『さよならマエストロ』には満島で、今年の冬ドラマはとても賑やかだ。
小林久乃 こばやしひさの エッセイ、コラム、企画、編集、ライター、プロモーション業など。出版社勤務後に独立、現在は数多くのインターネットサイトや男性誌などでコラム連載しながら、単行本、書籍を数多く制作。自他ともに認める鋭く、常に斜め30度から見つめる観察力で、狙った獲物は逃がさず仕事につなげてきた。30代の怒涛の婚活模様を綴った「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」(KKベストセラーズ)を上梓後、「45センチの距離感」(WAVE出版)など著作増量中。静岡県浜松市出身。Twitter:@hisano_k この著者の記事一覧はこちら

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