ペットの死に直面し「こんなに辛いなら最初から飼わなければ」と悲しむ飼い主に住職は何を伝えたのか…別れを前にした時<いちばん大切なこと>

2024年3月5日(火)6時30分 婦人公論.jp


小島住職「自分を責める気持ちはすべて<自分(飼い主さん)が主人公>になっている」(写真提供:Photo AC)

環境省が公開しているパンフレット「ペットの終活ノート」によると、犬の平均寿命は約14.6歳だそう。いつかはやってくる愛犬とのお別れをどのように受けとめればよいのでしょうか。今回は、愛知県岡崎市にある圓福寺住職の小島雅道さんが、ペット供養の際に経験したエピソードとともに、愛犬の最後に私たちができることを紹介します。小島さんいわく、「ペットを亡くされた飼い主さんは、泣きながらお越しになる方がほとんど」だそうで——。

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供養の作法


最愛のペットを亡くされた飼い主さんは、圓福寺に泣きながらお越しになる方がほとんどです。

そして、多くの飼い主さんからよく聞くのが、「もうこんなつらい思いは二度としたくない。犬はもう飼えない」という言葉。

こんなに悲しくて苦しいなら、ペットなんて飼わなければよかったと後悔の言葉を口にする方もいます。

そこで、祭壇の前に大切なワンちゃんのご遺体をやさしく寝かせていただき、葬儀の前にお話をします。

大切な家族を亡くされたのですから、悲しくて、つらくて、寂しいのは当然です。「もっと何かしてあげられることがあったのではないか」と自分を責める気持ちもわかります。

でも、その思いをまず横に置くということを説明します。

なぜかというと、自分が寂しく悲しく、つらく、苦しい。この4つの想いや、自分を責める気持ちはすべて“自分(飼い主さん)が主人公”になっています。

ワンちゃんが主人公


お葬式では、亡くなったワンちゃんが主人公です。

自分の気持ちを優先させて「もうこんな思いは二度としたくない」と思ってしまったら、二度としたくないような思いを、愛犬がさせてしまったことになります。

仏教では、そのようなつらい思いをさせてしまったということは、かわいいワンちゃんに大きな大きな罪を着せてしまうことになるのです。

愛犬にとって、かけがえのない本当の親は、飼い主さんであるあなたです。大切な親に、悲しい思いや寂しい思い、二度としたくないようなつらく苦しい思いを与えたとしたら、どうでしょう。

ワンちゃんたちはその罪を背負って、みなさんよりも悲しく、寂しく、つらい、苦しい思いを抱えて地獄に行くしかありません。

「大切な飼い主さんにこんな思いをさせるなら、生まれてこなければよかった」と、とても悲しい思いをするのは、その子なのです。

幽霊になってさまよう


大切な人が悲しんでいる。そうするとどうなるかというと、肉体は滅んでも魂だけでもそばにいようとします。これでは成仏(じょうぶつ)できません。

極端なことをいえば、幽霊になってさまようことになる。これは決して幸せなことではありません。


大切な人が悲しんでいる。そうするとどうなるかというと、肉体は滅んでも魂だけでもそばにいようとします(写真提供:Photo AC)

二度と抱っこすることも、なでることも、ご飯を食べさせることも、散歩することもできない。

「でも悲しませてはいけないから、そばにいなくちゃ」。そんな気持ちをワンちゃんに起こさせてはならないということです。

心から感謝する


いちばん大切なことは、その子と出会えたことに心から感謝すること。

お葬式では悲しい自分の思いはいったん横に置き、出会えた喜びと感謝の気持ちを「ありがとう」の言葉に乗せてしっかりと手を合わせ、お勤めしましょう。

ワンちゃんたちだって、まだまだ今まで通りに飼い主さんのそばにいたい、甘えたいという気持ちと、みなさんを悲しませないようにそばにいなくてはいけないという2つの未練があります。

この未練を断ち切るために、仏教の伝統的な儀式を、心を込めて勤めるのです。

これはもちろん、人間が亡くなったときもまったく同じ。人間も動物も変わらない、大切な儀式なのです。

迷いのこの世界(娑婆)から旅立つ、言い換えるなら卒業式。区切りをつける重要な節目です。

※本稿は、『愛犬が最後にくれた「ありがとう」』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

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