3月20日から「春分」。野遊び作家が教えるこの時期ならではの<野草の楽しみ方>とは?「サクラは花見以外にも一年中楽しみを与えてくれる」

2024年3月20日(水)6時30分 婦人公論.jp


大海さん「サクラは花見以外にも一年中なにがしか楽しみを与えてくれるもの」(写真提供:Photo AC)

日本には、旧暦の「二十四節気」をさらに初候・次候・末候の三候に分けた「七十二候」という暦があります。今回は、野遊び作家・フィールドアドバイザーとして活躍する大海淳さんに、旧暦の七十二候にちなんだ野草の楽しみ方を紹介していただきました。今回紹介する季節は「春分」です。大海さん、「サクラは花見以外にも一年中なにがしか楽しみを与えてくれるもの」と言っていて——。

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春分(しゅんぶん)


昼と夜の長さが同じになるころで、これ以降少しずつ昼が長くなってくる。

春の彼岸の中日で、「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、このころから寒さが遠のき、暖かい日が増えてくる。

新暦では3月20日〜4月3日ごろ。

主な歳時記
・3月22日…法隆寺聖霊会
・3月29日…東京でソメイヨシノ開花
・4月上旬…善光寺御開帳(7年毎)
上記、生物季節観測などの時期は、目安としてご覧ください。また、行事の日にちは変わることもありますので、お出かけになる場合は事前にお調べください。

初候


雀(すずめ)始(はじ)めて巣(す)くう
スズメが巣作りを始める

スズメは人間の生活圏で生息する留鳥(りゅうちょう)で、このころから枯れ草などで巣を作る。

・新暦では3月20日〜24日ごろ
・この候の植物=土筆(ツクシ)


『七十二候を楽しむ野草図鑑 季節の移ろいの中で心穏やかに暮らす』(著:大海淳/青春出版社)

次候
桜(さくら)始(はじ)めて開(さ)く
サクラの花が咲き始める

サクラは日本の国花。そのため、七十二候の本家である中国の暦にはない。

・新暦では3月25日〜29日ごろ
・この候の植物=桜(サクラ)

末候
雷(かみなり)乃(すなわち)声(こえ)を発(はっ)す
春雷が起こり始める

春雷は1〜2回鳴る短い雷鳴。その年はじめて鳴る雷を「初雷(はつらい)」と呼ぶ。

・新暦では3月30日〜4月3日ごろ
・この候の植物=蓬(ヨモギ)

註)新暦該当日は、年によって1日程度前後することがあります。

野草の楽しみ方


初候
雀始めて巣くう 土筆*ツクシ

「ツクシだれの子、スギナの子」と言われるように、ツクシはスギナという多年生シダ植物の胞子茎にあたる。

栄養茎であるスギナよりひと足先に、暖地では2月の末ごろから顔を出し始める。

子どものころ、野遊びのついでに摘んで帰ったツクシをお母さんが玉子とじなどにして食べさせてくれた経験がある人も多いだろう。

料理としては、この玉子とじが定番だが、他に、おひたし、和え物、きんぴら、炒め物、煮びたしなどでも楽しめるほか、意外な珍味が「つくしご飯」。

ツクシをおいしく食べるコツは、頭が開く前の若いものを使い、ホロ苦さを楽しむこと。

仄聞(そくぶん)したところでは、明治天皇が「つくし料理」をことのほか好まれたという。

次候
桜始めて開く 桜*サクラ

満開のサクラは、日本人の心を浮き立たせ、華やかな気分にしてくれるものだ。

けれども、多くの人は、サクラという樹と向き合うのは年に一度の花見だけであろう。

しかし、サクラは花見以外にも一年中なにがしか楽しみを与えてくれるものなのだ。

たとえば、ヤマザクラの若葉では「さくら餅」を包むし、ヤエザクラの花は塩漬けにして「桜湯」に、そして初夏に熟す果実ではガーネット色に結晶する「さくら酒」ができる。

また、夏期の樹皮は桜色に染め上げる染料になるし、剪定した枝は燻製用の上等なチップとして利用できる……。

このように、こちら側にそういう感性と知識とさえあれば、サクラという樹木はお花見以外にも一年中いろいろと楽しめるのである。

末候


雷乃声を発す 蓬*ヨモギ

わが家では、家族それぞれが自分の誕生日のための「薬湯(くすりゆ)」を定めていて、これを「バースデイ・バス」と呼んでいる。

そして、銘々の誕生日には自分のバースデイ・バスをたて、家族全員がそれに入浴する習慣になっている。

たとえば3月生まれの筆者の場合はヨモギを入れる「ヨモギ湯」という具合である。

ヨモギはキク科の多年草で、春の若葉で草餅を作ったり、下痢止めや健胃の健康茶、お灸のもぐさなど食用、薬用に重用される。

「ヨモギ湯」のたて方は、一回分として両手の平一ぱい分のヨモギを鍋で煮立て、その煮汁を風呂湯に加えて入浴する。

植物精油が多く、良い香りがするうえに、全身がよく温まり、風邪や腰痛に効用がある。

※本稿は、『七十二候を楽しむ野草図鑑 季節の移ろいの中で心穏やかに暮らす』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

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