本郷和人『光る君へ』「カスミでも食ろうて生きていけるのか!」と激怒されて世の中の厳しさを知ったまひろ…豊かさの象徴「宝飾品」を平安貴族は持っていたのか?
2024年3月26日(火)12時0分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。第十二話は「思いの果て」。為時(岸谷五朗さん)が官職に復帰する目途もなく、生計を立てるためにまひろの婿を探すことを宣孝(佐々木蔵之介さん)が提案するも——といった話が展開しました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。今回は「平安時代の宝飾品事情」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!
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世の中は厳しい
11話で「まひろに婿を見つける」と言っていた藤原宣孝ですが、12話で実際に秋山竜次さん演じる藤原実資との縁談を持ってきました。
しかし、まひろは「その必要はない」と答えたため、「カスミを食ろうて生きていけるとでも思っておるのか!」と宣孝から激怒されてしまいました。
いつの時代だろうと、カスミだけでは生きていけない。
まひろ本人もそうでしょうが、視聴者の多くがあらためて世の中の厳しさを痛感させられたに違いありません。
ちょっとそこからはズレますが、今回は、豊かさを象徴する「平安時代の装飾品」について考えてみたいと思います。
平安時代に装飾品はあったのか?
装飾品というと、頭飾り、耳飾り、首飾り、腕輪、指輪くらいでしょうか。
平安時代の貴族にしても、お姫様にしても、そういうのをしている感じがしませんよね。
聖徳太子の肖像(今は像主は太子ではない、という意見の方が優勢)と伝えられている絵を思い出してみると、たとえば黄金や宝石で飾った太刀を腰に吊るすイメージはあるのですが、それも奈良時代とか、飛鳥時代。
いやそもそも、武具と装飾品は違いますよね。そうすると平安貴族、アクセサリーはなかったのかな。
アクセサリー文化は発達しなかったのか?
ただし、平安時代に限らず、その後の時代、絵巻物とかに出てくる女性を見てみても、アクセサリーは身につけてない。
それこそ、戦国のお市の方も、淀殿も。
金・銀はともかく、日本列島はダイヤとかルビーとかサファイアとかエメラルドとか、宝石類を産出しません。だからアクセサリー文化が発達しなかったのかな。
皇族が外国にお出でになるときは、式典などでは、色石を用いずに、真珠を身につけていらっしゃいます。とても上品ですよね。
宝石を知らなかったわけではなく
しかしながら、日本人が宝石をまったく知らなかった、ということはないんです。
仏教では「金、銀、瑠璃(るり)、玻璃(はり)、しゃこ、珊瑚(さんご)、瑪瑙(めのう)」を「七宝」といったらしい。
瑠璃はラピスラズリ。玻璃は透き通ったガラスのようなもの。「しゃこ」というのは、僕は知りませんでしたが、二枚貝で貝殻から光沢のある白い石が作れるそうです。
ただ、こういうのを身につけたかというと…。やっぱりそれは違う。法会といって、現世利益を期待した儀式に用いていたようです。
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