ザ・ぼんち、『THE SECOND』への挑戦を語る「気持ちで負けたらあかん」「ギラギラに飛び込むチャンス」

2024年3月27日(水)15時0分 マイナビニュース

●2点差で敗退も「最高の出来」「100点」
結成16年以上の漫才賞レース『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』の第2回大会(グランプリファイナル:5月にフジテレビ系ゴールデンタイム生放送)に、芸歴52年の大ベテランがエントリーして話題を集めた。かつて80年代の漫才ブームを引っ張ったザ・ぼんちだ。
「大阪選考会」を勝ち抜き、24日に東京・台場のフジテレビで行われた「開幕戦ノックアウトステージ32→16」では、結成21年のハンジロウと対戦し、2日目のトップバッターながら客席を大いに沸かせた。結果はわずか2点差という大接戦で敗れたものの、キャリアを重ねても果敢に見せたチャレンジ精神と、勝者を称える姿に、会場からは大きな拍手が送られた。
そんな激戦を終えた直後の、ぼんちおさむと里見まさとにインタビュー。戦いを終えての心境や『THE SECOND』に挑んだ理由、互いの魅力や、今後の漫才への意欲まで、話を聞いた——。
○対戦相手のハンジロウは「お見事」「段取りがきれい」
——惜しくも敗退となりましたが、今日の漫才はいかがでしたか?
おさむ:最高の出来でした。ありがとうございました。完璧ですね。
まさと:いい遊びもできて、いい流れも作れましたから、自分たちに点数付けるには甘いけど、もう100点です。やってきたことをそのまんま思い通りにやれたし、太い笑いも取れたしね。
おさむ:お客さんは僕らのことを知らん若い人でほとんどアウェーという形やけど、反応が良くてうれしかったですね。今年72歳になるんですけど、若い人たちと同じ土俵に上がって一緒に戦えるのは良かったです。
——まさと師匠はネタ後に「ホッとしました」とおっしゃっていました。
まさと:本音です。この時間のサイズでネタを持ってこなあかんわけですから、そこから解放されたので、ホッとしてます。
おさむ:でも、ここで戦ったことによって先につながれば、一番ありがたいですね。世間の見る目もあるやろうし、自分たちの方向性もあるやろうし。出たことによって若さをもらったと思ってます。
まさと:コンクールは勝負つけなあかんから決着ついただけで、僕もおさむさんもきっと一緒やと思うけど、負けた感はないんです。もう今の我々の最高を出せたから、しゃあないなあって。
——相手があっぱれだったということですね。そんなハンジロウさんの印象はいかがでしたか?
まさと:お見事でした。素晴らしかった。彼らが頭の入りでやった野球ネタなんて、難しいですよ。そのへんで何人か採点で向こうに多く入れたのかもしれない。
おさむ:沖縄の人で、どういうふうにネタ持ってくるのかと思ったけど、しゃべりとか段取りがきれいで、すごいですね。
○大ベテランがトップバッターに緊張「全神経を使いました」
——トップバッターというのは、いかがでしたか? おふたりのキャリアですと劇場でもトップというのは、もうないと思いますが。
まさと:トップはつらいですよ。人様のトップを何回も見てますけど、空気が違うもん。だからスタートは全神経を使いましたね。普段は後ろに入れる「絶滅危惧種」とか「おさむさん、ご機嫌ですよ」っていうフレーズを、ネタ入る前に頭で使いましたから。それでウケて「とりあえずこれでいける」と思って。頭でちゃんとお客さんをつかまえんことには、スベってそのままいってる人、何十年の間に何十組も見てきましたから。
おさむ:こっちが引いたらお客さんも引くからね。もうこっちから入っていかないと。最初ウケなくて静かやったら、お客さんいてんのかなって思っちゃうから。
——そのおかげで、一気に会場が温まりました。この日の大会的にも、ザ・ぼんちさんがトップバッターを務めた意味は大きかったと思います。
おさむ:バーっと盛り上げて空気は作ったから、みんなやりやすかったと思うよ(笑)
——いや本当にそうだったと思います。
●賞レース『THE MANZAI』にも出場「青春時代を探し求める旅に」
——改めて、この『THE SECOND』にエントリーしたのは、どんな思いがあったのでしょうか?
まさと:同年代が集まって話してると、趣味の話してるうちに、やれ膝が腰がって話になって、気づいたら出番くるまでずっと薬のことしゃべってるんですよ。それが、ルミネ(theよしもと)とか、大宮(ラクーンよしもと劇場)とか、沼津(ラクーンよしもと劇場)とかの劇場に出ると、若いのがみんなキラキラじゃなくて、ギラギラしてるよ。それ見てたら楽しくて、この中に飛び込むチャンスがあるんだったらと思って、おさむさんに話しました。
おさむ:僕も前からチャレンジしたいと思ってたから、「じゃ、いこか」ってね。もう行くんやったら前後考えずに行てまえ!っていうタイプやから。
——2014年に賞レースの『THE MANZAI』にも出場されましたが、そのときも同じような思いがあったのですか?
おさむ:やっぱり昔のドキドキハラハラの気持ちをもっぺん取り戻そうというね。青春時代の自分たちを探し求める旅に出たという感じでしたね。
まさと:未来のある人たちのチャンスを奪うのは嫌やけど、どこまでやれるかいってみようっていうんでね。だからその時も、出れるところがあるんだったらトライしたいなと思って。
——今回のエントリーが発表されてからの反響は、いかがでしたか?
まさと:ここに出ることに「偉いですね」とか、すごくお褒めの言葉が多かったですね。
おさむ:「すごいな」って言ってくれましたね。あと、金属バットが「師匠と当たりたいです」って言うから、「俺はお前んとこと当たりたいわ!」って言ってやりましたわ(笑)
○「おさむちゃんです!」も簡潔に…ネタ時間との勝負
——エントリーを決めてから、どのように準備して臨んだのでしょうか。
まさと:問題はネタ時間(6分)です。敵は対戦相手やなくて時間でした。最初の挨拶を除いたら5分40秒ぐらい。これは僕ら劇場に出てる人間からするとキツい。やれるにはやれるんですけど、ただ短くするだけでは点数に加算されないから、ドカーンとなる小爆弾を入れて5分40秒にせなあきません。そのネタを作るために、4カ月ほど「イイ〜〜!!!」ってなってましたな(笑)。元々あるネタをいいとこ取りしたり、他のとこから引っ張ってきたり、そんなんばっかりしてました。
——ザ・ぼんちさんと言えば、冒頭でおさむ師匠が「おっ、おっ、おさむちゃんです!」とたっぷり時間を使ってツカミの挨拶をするのがおなじみですが…
おさむ:あれやったらネタ入ってすぐ終わっちゃうから、そのための時間はとらなかったんですよ。
——おふたりくらいの芸歴のある大ベテランの漫才師さんだと、やはり時間にゆとりを持ってフリからオチに持っていくスタイルが多いと思うのですが、現代の賞レースで主流になってきている、いかにボケの数を詰め込むかというトレンドに合わせていたのが印象的です。
まさと:冷静に考えたら、全然違う話を持ってきてつなげてたりするんだけど、そうしないとここのルールでは勝てないですからね。
おさむ:ベテランと言いながら、若い人みたいに「現役やで」って見せたいだけです。ちょっと足腰弱いけどね(笑)
——50年以上にわたり漫才を見てきて、やはり技術の進化というのは感じますか?
まさと:『M-1(グランプリ)』を超えて16年目以上の人たちが、三段跳びみたいに力つけてきとるから、この『THE SECOND』っていうのは、ほんまに誰が勝つか分からんですね。
おさむ:今の若い人は、話の持っていき方が上手だからスーッと入るしね。僕も勉強せなあかんこといっぱいあるんですよ。でも僕がああいうふうにやったら暴走がなくなって面白くなくなるから、僕は僕を追求したほうがおもろいなと、改めて思いました(笑)
●「“ぼんちおさむ”というのはすごいですよ」
——コンビ解消の期間もありますが、結成から52年という中でお互いの魅力は、どんなところに感じていますか?
まさと:当然20代の時のような漫才を我々は今できないですけど、この年になってもこういうボケができる「ぼんちおさむ」というのはすごいですよ。
——言葉を選ばずに言うと、おさむ師匠はかわいく見えてくるんです。観覧客の皆さんも、きっとそう感じていたと思います。
まさと:ありがとうございます。
おさむ:うれしいですね。元気な年寄りなんで(笑)
——ネタの後の平場のトークでも、ステージの真ん中にどんどん出てきて、存在感を作ってくれますよね。
まさと:あれは死ぬまでやってはると思います(笑)
おさむ:目の前にお客さんがおったら笑ってほしいんですよ。緊張してるのが分かりますから、いらんことばっかりしてる(笑)
——おさむ師匠から見て、まさと師匠はいかがですか?
おさむ:「これをやるんだ」っていう筋が通ってるところがすごいですよね。
——今回の『THE SECOND』への出場にしても、先導してくれるんですね。
おさむ:そうそう。僕は全然ダメですから、途中言うてることが分からなくなってきて説得力がないけど、相方は説得力あるからね。
○来年のエントリー決断以前に望むこと
——漫才師の皆さんにとっての「セカンドチャンス」というコンセプトの『THE SECOND』ですが、この大会への印象はいかがですか?
まさと:よくこの大会を作っていただいたなというのが本音ですね。『M-1』という素晴らしいビッグなイベントがあって、そこの出場資格が終わって「師匠」と呼ばれる人も含めて、これからどうやって頑張ったらいいんだろうと思う人たちがいる中で、大きな目標ができて、やっぱり頑張りがいがありますよね。
おさむ:刺激になってると思いますね。僕らみたいな70過ぎてる芸人は「よう出るな」って言われますけど(笑)。でも、元気な若い人にも負けてられない。体力で負けるのはしゃあないけど、気持ちで負けたらあかんと思ってますから。
——スタッフの皆さんは、ぜひ来年もエントリーしてほしいと言っていました。
まさと:その前に、『爆笑ヒットパレード』(※)に出してください。3分半のネタ作っておきますんで。
(※)…フジテレビで毎年元日に長時間生放送している恒例のお笑い特番
おさむ:『爆笑ヒットパレード』で印象に残ってるのは、「おっ、おっ、おさむちゃんです!」って言った瞬間CM入ってしもうて、「まだ漫才やってません!」なんてこともありました(笑)。そんな長い時間「おさむちゃんです」やってたかな?って。
——生放送らしいハプニングですね(笑)。今回の出場で話題にもなりましたし、フジテレビでは年末の『THE MANZAI』や『ENGEIグランドスラム』もありますから、いろんなテレビのネタ番組に出られるのを期待しています。
まさと:ネタはいっぱいありますし、今日もテレビサイズでできましたから。こっちは出る気満々です(笑)
おさむ:テレビ局の人はそう言うけど、信用できんからな〜(笑)
●ザ・ぼんち高校の同級生のぼんちおさむと里見まさとで、1972年にコンビを結成。ツービート、島田紳助・松本竜介、B&Bらとともに80年代漫才ブームの立役者の1組として活躍し、シングルレコード「恋のぼんちシート」(81年)も大ヒット、芸人で初めて日本武道館でコンサートを開催した。86年に解散するも、2002年に再結成。14年には賞レース『THE MANZAI』で認定漫才師に選出された。現在は、なんばグランド花月以外にも、ルミネtheよしもと、大宮ラクーン吉本劇場、沼津ラクーン吉本劇場、さらには学園祭など、若手メインの舞台にも精力的に出演している。主な受賞歴は「上方漫才大賞」第14回新人賞・第16回大賞、「花王名人大賞」第1回最優秀新人賞、「ゴールデンアロー賞」第18回最優秀新人賞、「上方お笑い大賞」第7回銀賞。第73回文化庁芸術祭 大衆芸能部門大賞受賞、上方漫才師が大賞を獲るのは、73年の歴史上で初の快挙となった。

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