牧野知弘 もはや短絡的に「都心部のマンションは必ず値上がりする」という結論にはならない…それでもマンションを所有するならどのエリアがいいか
2024年4月10日(水)6時30分 婦人公論.jp
牧野さん「国内外の投資マネーが集中するところにマンションなどのプロパティを持つべき」(写真提供:Photo AC)
「かつて超高額マンションと言えば1億円、いわゆる『億ション』でした。ところが今や、3億円を超える住戸は珍しくありません」と語るのは、オラガ総研代表取締役の牧野知弘さん。今回は、マンション価格高騰の背景を牧野さんに解説していただきました。牧野さんいわく、「国内外の投資マネーが集中するところにマンションなどのプロパティを持つべき」だそうで——。
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都心なら、どこを選ぶべきか
都心部に人が集まるから、都心部のマンションは必ず値上がりする。
なぜなら東京は不死鳥であり、実際コロナ禍の影響からも見事に立ち直って、ふたたび人を集めている──。
データだけを見れば、このように感じる人たちがいても不思議ではありません。しかし、本当にそうでしょうか。
東京都の調査では、東京都の人口は2030年の1424万人をピークに減少に転じる、と予測されています。
それによると2035年1417万人、2040年1398万人と推移し、2060年には1200万人台になると推計されています。
地域別に見ると、23区は2035年の999万人が、多摩・島しょエリアは2025年の435万人が人口のピークとされています。
在留外国人の増加
東京都では同様の調査を2021年にも行なっていますが、今回の発表(2023年)では予測値を修正して、ピークをやや先送りしています。
その理由は、在留外国人の増加です。
『なぜマンションは高騰しているのか』(著:牧野知弘/祥伝社新書)
コロナ禍で一時的に減少したものの、在留外国人は2022年で58万1112人、前年比で6万3230人も増加しています。【図参照】
つまり、東京都の人口増を支えているのは在留外国人なのです。このことはあまり知られていません。
したがって、都心に集まる人たちの属性を理解し、どこにどのような人たちが集まるかを考えないと、短絡的に都心部のマンションは必ず値上がりするという結論にはならないのです。
特に、35年におよぶ住宅ローンを借りて、超高額マンションを購入することは慎重でなければなりません。
今から35年後は2059年、東京都の人口は1200万人台に落ち込んでいることが前提になります。それでも資産価値を保ち続けるエリアを見定めるべきなのです。
不動産にお買い得なし
では、どのエリアが該当するでしょうか。
まず、都心部でマンションを所有するなら間違いなく山の手です。東京は西南部を中心に武蔵野(むさしの)台地の丘陵が続きます。
この台地上は地盤が良く、懸念されている東京直下型地震の影響をかなり小さくできるはずです。実は、江戸時代から大名屋敷があった場所はそのほとんどが台地上です。
ただ、台地上にあって地盤が良いだけでは十分ではありません。
これから人口が大幅に伸びることはないことを前提にすれば、国内外の投資マネーが集中するところにマンションなどのプロパティを持つべきです。
一言で言えば、外国人にもわかりやすい立地、具体的には麻布、青山、広尾、六本木、赤坂などです。
不動産業界には「土地は嘘をつかない」「不動産にお買い得なし」という金言があります。
これらの場所は価格も高いですが、価値もブランド力も高く、値崩れしない。つまり、資産価値を保つことができるのです。
人流
もう1つの視点は、人の出入(ではい)りです。
これはブランド立地でなくても、多くの人々が出入りする人気エリアのことです。湾岸エリアや鉄道が交接するターミナル駅近辺が該当します。
ただし一口にターミナル駅と言っても、エリアによる属性があります。
下町エリアでは自然災害に脆弱(ぜいじゃく)と言わざるを得ませんし、また開発余地が少なければ、一度きりの開発では街の発展に限りがあります。
また、特急や急行が停車しない駅などは要注意です。
地盤は変わりませんが、人流(じんりゅう)は時代と共に変化します。
流行の街がその面影(おもかげ)すら失う様(さま)はよく見られる現象です。
したがって、都心マンションを買うコツは、「ブランド立地は中長期所有」「流行のエリアは時代を見据えて」となります。
言い換えれば、それ以外の中途半端なエリアで高額物件に手を出すのは、自身が気に入って住み続けるならかまいませんが、資産価値の維持や向上を狙うには得策ではありません。
今後は東京でさえ、これまで経験してきた一方的な右肩上がりの社会ではなくなります。
都心部のなかでも成長する街、取り残される街に階層格差がついていくのがこれからの日本であり、東京なのです。
※本稿は、『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。
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