与謝野晶子が教える、夫婦円満の極意。「ただ相手の男を愛する」だけでは、恋愛の名に値しない

2024年4月17日(水)12時30分 婦人公論.jp


与謝野さん「私たち一人ひとりの行為は社会とつながっている」(写真提供:Photo AC)

今年1月からNHKで放送中の大河ドラマ『光る君へ』。主人公は平安時代のベストセラー『源氏物語』を書いた紫式部。そんな彼女と同じように、近代の女流歌人として活躍し、『源氏物語』の翻訳を3度試みた与謝野晶子。今回は与謝野晶子が書いた評論集の中から、選りすぐりの言葉や詩を紹介します。与謝野さんいわく、「私たち一人ひとりの行為は社会とつながっている」そうで——。

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愛は感情だけではダメ


「愛」を確かなものにするには、感情ばかりではダメです。

「愛」には理性の協力が必要です。何を愛すべきか、いかに愛すべきか、ということには、自分の考えをしっかりもつこと、理性の判断が加わらなければなりません。

結婚するにしても、「ただ相手の男を愛する」というのではセンチメンタルな愛であって、現代の恋愛としては恋愛の名に値しないと言ってもよいでしょう。

私たち一人ひとりの行為は、どんな小さな行為であっても社会とつながっています。

だから恋愛も、二人が幸福な生活に導かれるなら、それだけにとどまらず社会を幸福にします。

反対に、恋愛が二人を不幸な結果に導くなら、結果的に社会にも迷惑を与えることになります。

それを考え、男も女も、相手と自分との共通点と違いとを十分に認識しなければなりません。

理性に裏打ちされた感情でなければ確かな感情とは言えないのです。

「女子の独立」(『優勝者となれ』より)

お互いに仕事も家事も


夫婦生活が円満に持続、発展するには、双方が教養によって互いの人格を美しく、清く、高くしようと努力し続けることです。

また、夫婦がともに何らかの職業に就いて労働することも大切です。

夫婦が共に働いて衣食を支え、苦楽をともにすることは、夫婦の愛を、緊張感のあるよい関係にすると思います。

そして、家庭におけるすべてのことを夫婦が協力し、分担するのがよいでしょう。

夫が外の仕事、妻が内の仕事、というふうに分かれていないことが、夫婦の愛をいっそう濃密にする一つの大きな力になると思います。

夫婦生活を持続していくには、こうした努力が絶えず必要です。

恋愛から出発したからといって、夫婦生活は決して順風の航海ばかりではありません。

「夫婦愛を濃密にする努力」(『婦人倶楽部』一九二五年一月)

愛情は変化し進化する


人間の心は、感情においても理性においても、幼年から少年へ、少年から大人へと、次第に移ってゆきます。

数千年の間に文化生活を築きあげてきた人間は、少しずつよい方向へ行っているのだと思います。人間は進化するものです。

花の趣味にしても、食事や衣服の好みにしても、少年少女のときから一生の間に何度変わるかわかりません。

それでこそ、人間の生活には進歩があるのです。


花の趣味にしても、食事や衣服の好みにしても、少年少女のときから一生の間に何度変わるかわかりません(写真提供:Photo AC)

自分の結婚生活をかえりみると、二十年間にどれほど多く愛情が変化してきたことだろうと思います。

最初のころの恋愛が続くわけではなく、夫婦で絶えず二人の愛情に新しい生気を吹き込み、壊しては立て直し、鍛え、深めるよう努力してきました。

毎日毎日、新たな愛の生活を築きあげる試みをしてきたのです。

「愛の創作」(『愛の創作』より)

夫婦は毎日が愛の創作


私たちは昨日の恋愛をそのままに静止させ、その上に塗りかためて、「永久不変の愛」というようなものに寄りかかっているのではありません。

常に二人の愛が進化し続けることを祈っているのです。

それでなければ、昨日の恋愛は心の化石であり、退屈と苦痛とを感じないではいられないでしょう。

私の実感に基づけば、「夫婦は毎日毎日愛の創作をしているのだ」と言いたいのです。

「愛の創作」(『愛の創作』より)

※本稿は、『与謝野晶子 愛と理性の言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

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