お風呂で3分×3曲、懐メロを歌って長生きに。入浴中の転倒骨折、誤嚥性肺炎を防ぐ極ラク健康法とは

2024年4月18日(木)12時30分 婦人公論.jp


歌詞を思い出してメロディーに乗せて歌うとき、脳はほどよく活性化するのでウトウトしません(写真提供:Photo AC)

交通事故死より多い入浴中に亡くなる高齢者の数。令和3年の厚生労働省「人口動態調査」によると、入浴中に溺れて亡くなった65歳以上の高齢者は約5000人。鼻と口が湯に浸かっても目覚めなかったり、動けなかったりすると、私たちは数分で窒息して、あっけなく命を落としてしまうと言います。声とのどの専門医・渡邊雄介先生は語ります。「そこで、のどの筋トレを兼ねた風呂カラオケをおすすめします」。「入浴中にウトウトしてしまう」「最近つまずきやすい」「食事中によくムセる」。ひとつでも思い当たる方は、風呂カラオケの始めどきです。

* * * * * * *

昭和の日本レコード大賞曲や懐メロの人気曲、童謡・唱歌がおすすめ


突然ですが、お風呂で歌ったことが一度もないかた、いらっしゃいますか?

人前では恥ずかしくて歌えなくても、お風呂ではつい鼻歌が出ませんか?

「好きな歌を3曲歌い終えたあとは、歌が得意な人もそうではない人も唾液の量が増え、ストレスホルモンが減っていた」という報告があります。

湯気の立ちのぼる温かい浴室は、湿気でのどがうるおって負担がかかりにくいので、のどの筋肉のトレーニングに最高の環境です。

無理なくいい声が出るし、四方が硬くなめらかな壁なので、音もよく響きます。

お湯に浸かって好きな歌を歌うと、とてもうまく歌える。のど筋の衰えを食い止めるのに、こんなに楽しいトレーニングはありません。

では、その方法をご紹介しましょう。

・ワタナベ式 風呂カラオケの方法

・お風呂に浸かって、好みの昭和歌謡や童謡・唱歌を3曲歌う。
・持ち時間は10分以内。お湯の温度は41℃まで。
・1曲目はいつも同じ定番曲でのどの調子を確かめる。
 あとの2曲は自由に。
・歌い終えたら、ゆっくり立ち上がって浴槽から出る。

これで「浴槽で溺れる」悲劇を防げると思います。

入浴中のウトウト居眠り、のぼせや熱中症、立ちくらみ。全部防ぎます


まず、歌詞を思い出してメロディーに乗せて歌うとき、脳はほどよく活性化するのでウトウトしません。

また、10分以内であれば熱中症にもならないし、浴槽からゆっくり出るので、立ちくらみを起こして失神したり、溺れたりすることもほぼ防げます。

なぜ昭和歌謡や童謡・唱歌をおすすめするのかというと、歌詞やメロディーが頭に入っているので、のどの調子に集中して、気持ちよく歌えるからです。

とりわけ、昭和の日本レコード大賞受賞曲や「懐メロ人気ランキング上位曲」は、テレビなどで繰り返し放送されることもあって、よく覚えていますよね。

さらに、昭和のヒット歌謡曲は全般に音域が広く、喜怒哀楽、愛憎などの感情を豊かに歌い上げています。

それにより、口のまわりの筋肉やのどの筋肉、舌が活発に動き、のど筋トレーニング曲として優秀なのです。

童謡や唱歌も音域の広い、楽しさやうれしさにあふれた曲が多くて、気も晴れます。

1曲およそ3分。定番曲+自由に2曲=合計3曲で10分以内。

これは時間の見当がつけやすく、その日の気分でいろいろな歌を楽しめてあきないし、歌によって、のどのさまざまな筋肉を動かせます。

昭和歌謡や童謡・唱歌にはタイムマシーン効果があって、「歌えば一瞬で、懐かしいできごとや人がありありとよみがえり、脳が元気づく」こともポイントです。

認知症の予防・リハビリのための「回想法」というトレーニングでは、過去のできごとを思い出して語ることで、脳の血流量が増えることが確認されています。

お風呂は個室で、だれも見ていません。思いきり歌いましょう。

うろ覚えの部分は「ハミング」や、歌詞を「ねいねい」に置き換えて構いません。どちらも、のどに無理な力がかからない、すぐれたのどの筋トレです。

女性の半数が90代まで生きる時代、転倒・骨折を風呂カラオケで予防する


風呂カラオケを続けることによって、「介護が必要になる原因」の上位「転倒骨折」と、80歳以上のかたの死因にとても多い「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を予防でき、認知症につながる「老人性うつ」もやわらぎます。

今、日本人のほぼ3割が高齢者(65歳以上)になり、厚生労働省は、「90歳まで生きる割合は、2016年生まれで男性4人に1人、女性は半数」と予測しています。

人生100年時代、はやばやと要介護や寝たきりになったら大変です。

よくつまずく高齢者のかたは、ほぼ例外なくのどの筋肉が衰え、食事のときにムセやすかったり、声がかすれぎみであったりします。


のどの筋肉が丈夫なら、「誤嚥」だけでなく「転倒」の危険もぐんと減る(写真提供:Photo AC)

逆に、スタスタ歩けるかたは、90歳を超えていても声につやとハリがあります。

これは偶然の一致ではありません。

どういうことかというと、のどの筋肉が丈夫なら、「誤嚥」だけでなく「転倒」の危険もぐんと減る。つまり、元気で自由に動ける老後をキープしやすいのです。

誤嚥を防ぐ、のどのフタで、「空気は気道」「飲食物は食道」に仕分けられる


2006年からの11年間に、食べ物をのどに詰まらせて窒息死した国民は約5万2000人。うち75歳以上が、73%を占めていました(厚生労働省人口動態調査)。

年間約3500人の後期高齢者が、食事のとき窒息して亡くなっている計算です。

のどの筋肉は、「誤嚥を防ぐ、のどのフタ」の開閉も担当しています。のどにはフタ(喉頭蓋(こうとうがい))があり、「空気は気道から肺へ」「飲食物は食道から胃へ」と、私たちの意思とは関係なく、交通整理をしてくれています。

たとえば、もちをのみこむときは気道でなく食道の方に行くように、気道の入り口を、のどのフタがパッと塞ぎます。

ところが高齢になって、のどの筋力が衰えると、フタの反射運動も鈍りやすく、もちが誤って気道の方に入りこみ(誤嚥)、最悪の場合、窒息死に至るのです。

高齢者に多い死因「肺炎」の大部分は「誤嚥性肺炎」です。飲食物や唾液、胃液などが誤って気道に入り、一緒に細菌も吸いこんでしまうことで起きます。

風呂カラオケは、この「のどのフタ」の強化トレーニングとしても最適です。

※本稿は、『毎日10分-長生き風呂カラオケ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

「入浴」をもっと詳しく

「入浴」のニュース

「入浴」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ