50歳から運動に挑戦。太極拳にダンベル体操…身体を痛めて辞めてばかり。理想の運動に辿りつくも、思わぬ敵が現れた

2024年4月25日(木)12時30分 婦人公論.jp


(イラスト:サノマキコ)

厚生労働省が発表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」によると、成人は歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上)、高齢者は1日40分以上(1日約6,000歩以上)が推奨とのこと。平均寿命が延びる中、健康のためにエクササイズなど身体を動かす機会を増やそうと考えている人も多いのでは。体のあちこちの衰えに抵抗すべく、いざ立ち上がってはみたものの…… 細田久美子さん(仮名・群馬県・パート・57歳)は——(イラスト:サノマキコ)

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腰のあたりから嫌な音が


人生後半をイキイキと過ごすには、やはり体が資本。それならば前から気になっていた太極拳を始めようと、50歳の時に市が主催する太極拳講座に申し込むことにしました。

太極拳はゆっくりとした動作ですが、腹式呼吸で行うため自律神経が整い、片足でバランスをとる動きによって筋力の向上も見込めるとか。

「たいして体力を使わずともいい運動になるなんて、ぐうたらな私にぴったりではないか!贅肉も落ちるはず」と、これからの日々を想像してワクワクしていました。

ところが当日、講師を見てびっくり。その姿は超肥満体形で、どう見ても不健康そう。想像とのギャップにとまどいながら、体ほぐしのジョギングやストレッチに加わるも、これが延々終わらない。結局この日は、最後の5分間だけ講師の盆踊りのような太極拳を見て終了した。

その後も太極拳らしい動作を教わることはほとんどなく、気分もやる気も下がる一方。年会費を納めてしまった後だったので辞めるに辞められず、渋々通い続けていたものの、ある日、2人1組のストレッチで相手の男性に思いっ切り腕を引っ張られ、腕と肩を痛めてしまったのです。

謝罪もないし、いつまで経っても痛みは治まらない。整形外科に行くと、なんと「五十肩」との診断。絶対安静を言い渡され、太極拳は断念することになりました。

数ヵ月が経ち、痛みを感じなくなった頃、家のポストにダンベル教室のチラシを発見。確か「五十肩は、回復してきたら意識して動かしたほうがいい」とどこかで聞いたことがあります。これも何かの縁、と感謝しながら入会を決めました。

嬉々として教室に向かった初日、ダンベルを握って体を動かしていると、背骨あたりに激痛が。まだリハビリには早すぎたかと思いましたが、幸い併設している体操教室に変更してもらうことができたのです。

体操教室ではストレッチを中心に行っているようで、腕や肩に負担がかからない動作だけやればいいと説明を受け、ひと安心。さっそく開脚ストレッチをしていると、同じクラスのおじいさんがそばに来て、「若いんだから、こんなもんもできないと困るぞ」と一言。

ムッとして怒りにまかせて体を勢いよく前に倒すと、腰のあたりから嫌な音が。腰は痛いわ、年上の受講生たちに笑われて恥ずかしいわで、退会することにしました。

何かを始めるたび故障するポンコツな私


張り切って運動を始めたのに、出ばなを挫かれて不完全燃焼の私。思わず「健康のためと思って高い授業料を払ったのに、怪我ばかりで嫌になる」と友人に電話で愚痴ると、「スロージョギングをやってみたら?」と意外な答えが返ってきました。

小さな歩幅でゆっくり走るスロージョギングは、足の指の付け根あたりから着地するという独特なフォームが特徴だそう。これならお金もかからないし、走るだけだから怪我の心配もないはず!

早速、人通りの少ない近所の裏道を走ってみることにしました。いざ走ってみると、着地を意識しすぎるせいか、なかなか前に進みません。同じ場所で足踏みをしているだけじゃないか。すれ違う学生に不思議そうに見られ、そそくさと退散することに。

その後も継続は力なりと思って続けていましたが、どうやら間違ったフォームだったようで膝を痛めてしまい、走れなくなってしまったのです。

ただ運動がしたいだけなのに、なぜこうもうまくいかないのか……。何かを始めるたびに、必ずあちこち故障するポンコツおばさんの私。絶望しながら洗濯物を干していると、「テレビ体操が健康にいい」と紹介するテレビ番組が目に飛び込んできました。

懲りない私は家事を終えると、早速リビングで録画したテレビ体操を流しながらやってみることに。簡単そうだけど、リズムに合わせて体を動かすのはなかなか難しい。こうなったら毎日コツコツ続けて極めよう。もう私にはこれしか残されていないのだから。

翌日。まだまだリズムには乗れないけれど、体をゆっくり動かすだけでも十分気持ちがいい。ところが、勇んで足踏みをしていると、飼い猫が足首に齧りついてきたのです。激痛で、そのまま転倒。転んだ拍子に猫に軽くぶつかってしまったことで、さらに攻撃的になった猫が飛びかかってきて大わらわ。

気を取り直して再び体操に励むも、またしても襲いかかってくる猫。これでは安心して体が動かせないじゃないか。場所を玄関に替えよう。部屋の扉を閉めれば猫がくる心配はないし——と思いきや、猫が二本足で立って、すりガラスの扉を前足でバンバンと叩いてやめようとしません。

どこまでも邪魔をする気だな、恐ろしい奴……。けれど、ここは無視して体操を続けねば。

ようやくテレビ体操が日課になり始めたある日の朝、起きようとすると肩に違和感があり、痛くて腕が上がらない。思い当たるのは、慣れてきたからと自分勝手なフォームでテレビ体操を続けたこと。あれだけ猫が邪魔してきたのは、「怪我をするからやめとけ」という忠告だったのかもしれません……。

けれど、老後も自立した生活を送るためには体づくりを諦めるわけにいかない。こんな私に合う運動はあるのでしょうか。

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運動を始めるときは


実際に運動をしようと思っても、今まであまり行っていない場合、知らず知らずのうちに体に負担がかかりすぎてしまうことも。

まずは自分の身体の状態を知ることから始めてみるのもいいかもしれません。

スポーツ庁のサイトでは、室伏長官が考案・実演する身体診断「セルフチェック」動画が紹介されています。

https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/jsa_00040.html

また、スポーツ庁Web広報マガジンでは、果的な身体活動について紹介している記事もあります。事前にチェックしておくと、自分に合った無理のない範囲の運動方法が見つかるかもしれません。

●「運動強度(METs)」で見る、効果的な身体活動は?
https://sports.go.jp/tag/life/mets.html

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