【インタビュー】水川あさみ×前田敦子、初共演ドラマで変化を遂げる――芝居とお互いの印象

2022年10月17日(月)7時45分 シネマカフェ

水川あさみ×前田敦子「モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~」/photo:Maho Korogi

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ニューヨーク・タイムズ紙のコラム「Modern Love」に投稿されたエッセーに基づき、1話完結ドラマとしてスタートした「モダンラブ」。ニューヨークを舞台に、様々な愛にまつわる物語を展開してきた同作は、シーズン1、2を経て舞台を日本・東京に移した。

全7話のエピソードからなる「モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形〜」は、東京という世界の中でも有数の大都市のリアルを映し出すような、華やかな街に住まう人々の裸の心をそっと覗ける物語だ。各話には、マッチングサイトでの出会い、シニアラブ、セックスレス、リモートで芽生えた恋など、バラエティ豊かなテーマを持ち、2022年・今の東京の空気を感じられる仕上がりとなっている。

このアンソロジー・シリーズのはじまりであるエピソード1「息子の授乳、そしていくつかの不満」では、仕事と子育てを両立し完璧を追求する高田真莉と、彼女のパートナーである河野彩の日常、その変化が描かれる。演じた水川あさみ前田敦子は、ドラマ初共演にして心地よい協和を生み出した。インタビューでは、作品への意気込みから「もうできない!」と思った演技の苦労まで、和気あいあいと語ってもらった。

——最初に、「息子の授乳、そしていくつかの不満」の脚本を読んだ感想から教えていただけますか?

水川:何か大きな事件が起きるとかいうようなお話ではないのですが、私が演じる真莉とあっちゃん演じるパートナーの彩という女性のことに関しても、とりわけ説明をすることもなく、当たり前にストーリーの中に組み込まれていたんです。そうしたナチュラルな展開の仕方も、すごく素敵だなと惹かれたポイントでした。

あとは、言葉で説明するようなことも少なかったので、すごく余白のある脚本だなと思いました。説明が少ないからこそ、空気感や相手との温度が作品に反映されるんだろうなと感じました。

前田:私も、家族愛がとても素敵だなと思いました。女性同士の恋愛も受け入れている(真莉の)母親がいて、みんなで協力し合って生活をしていて。その中で、ちょっとした感情のやりとりがあり、ぶつかり合ったりするんですよね。それってすごい愛だなとも思うんです。家族の愛は深いなと、脚本を読んでいてすごく感じました。

——水川さんは真莉を、前田さんは彩を演じるにあたって、大事にしていたことなどは何でしょうか?

水川:真莉は子育ても仕事もどちらも大切にしたい、とにかく自分の理想に近づけることに必死で…。だから、一番そばで支えてくれる彩や、お母さんという身近な愛に気づけていないというか、少し見失っている状態でした。仕事も家庭も一生懸命やっている誰しもに当てはまるような出来事かもしれない、と考えながら演じていましたね。

前田:私の役は、どちらかと言うと俯瞰で家族を見守る立場だったので、言葉も少なくて。いる雰囲気や空気感みたいなものはちょっと意識したほうがいいな、と思いながら淡々とやっていました。役柄と普段の私は全然違うとは思っています。でも彩は誰に対しても平等な感じがありましたし、こうやっていられたらいいなという憧れを持ちながら演じていました。

水川:彩、裏表がないよね。

前田:そう。淡々と、飄々としている感じで。彩が家にいると安心しますよね。

水川:そうだよね。

——水川さんはお料理も上手で完璧なイメージもあるので、こだわりがあるという面で、ご自身と真莉に共通点があるようには思わなかったですか?

水川:私は好きなものが多いというだけで、別にこだわりではないんですよね。料理も難しいことそんなにやらないですし(笑)。だから好きなことをやっているだけで、完璧にやらなくちゃいけないという考えではないから、真莉とはわりと真逆かなと思っていました。

前田:向き合い方がちょっと違うかもしれないですよね。

水川:そうね、ことがらの向き合い方が違うかもしれないかな。

——好きでやっているから完璧主義とは違うということですね。

水川:全然完璧じゃないですし、できなきゃできないでいいと思っているんです。自分ができる範囲の中で自分が楽しめて面白くできないと続かないから。



監督に「芝居するな」と言われて——
水川さん&前田さんの芝居の変化とは

——演じていて、特に心に残った場面やセリフはありましたか?

水川:お話の中で真莉が今まで我慢していた気持ちや自分がとらわれていたもの、感情がわーっとあふれ出してしまう場面があって。そういうことって何気ないきっかけであったりしますよね。ポンってコルクが抜けてあふれ出すみたいな、そういう感情になるときがあるなと思いました。

一見ちょっとしたできごとなんだけど、真莉にとってはすごく大きな変化で。そういうのは、すごく愛にあふれた生活だからこそありえることなので、素敵な場面だなと感じました。

前田:私も水川さんのお話したシーンが、すごく素敵だなと思いました。「あ、安心できる場所がある!」と思ったので、すごくいいなあと。

あと、私は真莉たち親子のやりとりをそばで見させてもらっていたんですけれど、すごいリアルだなあと思いました。こういう母娘の感じ、あるよなーって。感情論のぶつけ合いは、自分にも思うところはありましたね(笑)。

水川:そっか(笑)!

前田:母親には甘えたい気持ちもあるからこそ「わかって!」となっちゃうんですよね。「わかって!」が出過ぎてすごい感情論になっちゃうので、真莉ちゃんの気持ちは痛いぐらいわかりました。

——監督ならびに脚本を務めた平柳敦子さんは、ロスなど海外で活動されていますが、普段のお芝居や演出とやり方が違うなどと感じたところはありましたか?

水川:全然違いました。私はもうとにかく「芝居するな、芝居するな」と言われていたので大変でした(笑)。監督は“そこに存在する"ということを言いたかったんだと思うんですけど、表現するとなると、どうしてもプラスの要素が働いてしまうんです。つけ加えてしまうというか。それをなくしてほしいという演出方法は、私にとっては新しくて。悩んだけれど、とてもいい経験でした。

前田:私は、ただただ水川さんを「さすがだな」と見守っているだけでした。監督が本当に空気感から作るのを大事にしてくれている方だったんですよね。

水川:うん、うん。

前田:私たちの家の中がそういう感じで。…なんか撮影という感じじゃなかったですね。

水川:本当にそうだよね。

——監督のいう「芝居するな」を体現するため、水川さんはどう工夫していったんですか?非常に自然な演技だと思い観ていました。

水川:うーん、そうですね…。現場の雰囲気に助けてもらうことももちろんありました。あと監督に言われたのは「もう顔を動かさないで」って。

前田:あー!言われましたね。

水川:「もう能面だと思って芝居しろ」と言われたんです。最初は何のこっちゃわからなかったんですけど、私は自分が思っているよりも表情が豊かだから、ひとつひとつのセリフに気持ちを込めすぎている、ということを言われたんです。そんなことを言われたのが初めてだったから、それを0にする作業はすごく大変でしたね。

くたくたになって家に帰ってくるという玄関先でのシーンは、何回も何回も撮り直したんです。「もうできない!」と言うと、「がんばれ!!」と助監督や監督に励まされて(笑)。

前田:確かに、監督はあきらめないですもんね!「よし、もう1回」「もう1回」って。「何がなんだろうー?」みたいな。

水川:わかんないよー! と思いながらやっていました(笑)。



“凛とした人代表”の水川さん&“肝の据わった人”の前田さん

——おふたりは過去にCMで共演されていますが、ドラマでは初共演となります。印象の変化はありましたか?

水川:私はとても印象が変わりました。共演してみて、本当に肝の据わった人だなと思って、彼女の格好良さというものを知りました。その感じは、あっちゃんの役にもすごく反映されているんです。彩のどーんと構えてくれる感じは、あっちゃんの内から出てくるものもすごくあったと思ったから。すごく安心できて、ご一緒できてよかったなと本当に思っています。…横にいるから、こういう話はなんか照れくさいよね(笑)。

前田:はい、褒めていただいてすみませんって思います(笑)。

——CMで共演していたとき、前田さんは今回のような印象ではなかったんですか?

水川:CMでは現場で少しご一緒したぐらいだったんです。だから印象というよりも、どういう人なのかをあまりわかっていなくて。あのときはかわいい印象が強かったけど、すごく覚悟の決まっているというか、肝の据わった人という印象になりました。何でも自分でやるし、ひとりでどこにでも行くし。そういう姿をそばで見ていて、めちゃくちゃ格好いいなと思いました。

前田:嬉しいです、やったー! …いや、でも女性からしてみると、水川さんは本当に凛としている方代表だなと、私はずっと思っているんです。みんなに分け隔てないですし、現場でも本当にずっとそういう風にいてくれたので。そんな水川さんにそうやって言ってもらえて、すごい嬉しいです。

Amazon Original「モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形〜」は10月21日(金)よりPrime Videoにて独占配信開始。


【水川あさみ】
ヘアメイク:星野加奈子/スタイリスト:番場直美
【前田敦子】
ヘアメイク:高橋里帆(HappyStar)/スタイリスト:有本祐輔(7回の裏)

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