「タレントみんな辞めんじゃないの?と言われる中で…」木村拓哉(51)のLINEメッセージにSTARTO社長が涙した理由〈社名変更から1年〉

2024年10月20日(日)18時0分 文春オンライン

〈 「これを我慢しないと売れないから」“帝国崩壊”から1年、ジャニー喜多川の“罪”が明るみに出るまで 〉から続く


 故・ジャニー喜多川氏による性加害問題を受け、ジャニーズ事務所(現・SMILE-UP.)が被害者への補償終了後に廃業する方針を示してから1年が経過した。


 所属タレントのマネジメントを担う会社として新たに設立されたのが「STARTO ENTERTAINMENT」だ。同社の福田淳社長は、昨年末に「週刊文春」で150分におよぶインタビューに応じ、就任の経緯や「一番最初に会った」という木村拓哉とのやりとり、“辞めジャニ”との共演、SMAP再結成の可能性についても答えていた。当時の記事を全文公開する。


(初出:「週刊文春」2023年12月21日号。年齢、肩書は当時のまま。)



木村拓哉とのやりとりは…… ©時事通信社


◆◆◆



 1999年から始まった故ジャニー喜多川氏の性加害キャンペーン報道。以来、現在に至るまで、旧ジャニーズのタレントは一度たりとも小誌の取材を受けていない。福田氏という新たな血が入ることで、変化は生じるのか。



「これから文春でインタビューを受けてくると社員に告げたら、皆、青ざめていましたよ。本当に大丈夫ですか、無事に帰って来られるんですかって。戦場に行くわけじゃないんだから(笑)」


 150分におよぶインタビューの最中、福田淳新社長(58)は、こんな冗談を飛ばすのだった——。


日本の芸能界を厳しく批判してきた


 12月8日、旧ジャニーズ事務所からタレントのマネジメントを引き継ぐ新会社の社名が、「STARTO ENTERTAINMENT(スタートエンターテイメント)」と発表された。


 新たな経営陣も発表され、代表取締役CEOに就任したのが、株式会社スピーディ代表の福田氏である。福田氏は新会社が採用する「エージェント制」の日本における先駆けとして、7年前から女優・のんのエージェントを務めていることで知られる。


 移籍や独立が認められない「奴隷契約」や、人気タレントを出演させる代わりに、自社のタレントを押し込む「バーター出演」。福田氏は、そのような旧態依然とした日本の芸能界を厳しく批判してきた人物であり、その舌鋒は旧ジャニーズ事務所にも向けられてきた。そんな福田氏がなぜ社長に就いたのか。新社名の発表直前、小誌の独占取材に応じた。


ジュリー氏に会って「モンスターの印象はなく…」


 社長就任のきっかけは、旧ジャニーズ事務所の前社長、藤島ジュリー景子氏からの誘いだった。


「NPOの知り合いからジュリーさんと会ってみてくださいと言われました。まあ、むちゃくちゃ驚きましたよね。一連の報道を目の当たりにしているので、どうして自分が呼ばれたのか色々考えましたよ。複雑な思いを抱えながら、ジュリーさんと会いました。会見の1週間後くらい、10月10日か11日です」


 初対面のジュリー氏は、憔悴し切っていたという。


「ジャニーズ事務所の廃業を決めた後でしたからね。(一方で)きわめてすぐれた音楽プロデューサーの方だなという印象も受けた。一部で報道されているようなモンスターの印象はなく、ロジカルな話し方をされるなと思いましたね」


 ジュリー氏はエージェント制について、いくつも質問をしてきたという。


「アメリカの仕組みや、具体的なビジネス上の問題について聞かれました。僕は7年前から『のん』こと能年玲奈のエージェントを務めています。それに2019年の公正取引委員会のSMAP問題(ジャニーズがテレビ局に対し、退所したメンバーを出演させないよう圧力をかけた場合は独占禁止法に触れる恐れがあるという注意処分)が起きた際に、メディアの取材を受けて、タレントの自由とは何かという話をしていた。ジュリーさんからはすごく細かい質問もありました」


最初のオファーは断った


 当初、福田氏は社外取締役への就任を頼まれたという。新会社の社長は、当初補償問題を扱うSMILE-UP.社長の東山紀之が兼任することになっていた。だが、東山が補償問題に専念することになり、福田氏に白羽の矢が立った。


「最初に社長のオファーをいただいたときには一度、断りました。こんな重責はとても無理だと。これだけの世間の批判にさらされて、いろんな問題も起きているから難しいと思ったんですけど、(心変わりには)いくつかのきっかけがあったんです」


 その一つは東山の存在だった。


美しい文化を絶やしていいのか


「社長を受ける前に、東山さんとは何度かお話ししましたが、人間的魅力に溢れていて、本当に責任感の強い方です。どこかの雑誌で東山さんが『90歳までタレントとして活動する』と発言されていたのを読んだことがあった。そこまでエンターテイナーとして覚悟を決めていた彼が、一番大好きな仕事をやめるというんですよ。未経験の経営と、何年もかかる厳しい補償を自分の責任で行うと判断されたことに、感動というか、仰天しましたよね」


 もう一つが新会社のもつポテンシャルだった。


「僕の力でジャニーズを再生できたら、こんなすごいことはないなと興奮したんです。ジャニーズには、木村(拓哉)さんになりたい、松本(潤)さんになりたいと思って、若い子が入ってくるわけじゃないですか。そういう『美しい先輩の系譜』がある。いまや世界で人気の韓国エンタメにも影響を与えるような歌と踊りと芝居のコンテンツがある。考えようによっては、こんな巨大なエンタメのグループって日本の宝じゃないかと。このキャンセルカルチャーの中で、美しい文化を絶やしていいのかと考え直したんです」


社長のオファーは井ノ原快彦からだった


 社長就任にあたって、ジュリー氏からの要望はあったのだろうか。


「一切ありません。そもそも『社長になってください』と言ってこられたのは、井ノ原(快彦)さんです」


 社長のオファーはイノッチからだったというのだ。


「エージェント制の話を僕が解説していると、『じゃあ、福田さんがやってくださいよ!』って言われたんですよ。井ノ原さんは本当にコミュニケーション能力が高い方で、『この流れで役員になっちゃったけど、経営についてはわからない』と正直におっしゃる。逆に、僕は経営のことは分かりますけど、タレント養成については何もわからない。だからそこを教えてくださいねと役割分担しています。最近は、毎日一緒にいますよ」


 社長を引き受けることを決めたあとに、真っ先に始めたのはタレント160人との面談だったという。


 最初に会ったのは、あのトップスターだった。


「もちろん木村拓哉さんが一番です。僕に直接おっしゃったわけではありませんが、すごく評価してくださったと聞きました。木村さんとの面談が上手くいったおかげで、その後はかなり助けられました。というのも、今の事務所で木村さんは長男的なポジションにいる。その彼に『何だい、こいつ!』と思われたら、信頼を一気に失いますよね。この事務所はそういう序列がきちんと確立されています。現代の石原軍団ですよ」


「タレントみんな辞めんじゃないの?」…木村拓哉との対面


 木村は後輩たちとLINEのグループを持っていると聞くが、そこから後輩に福田氏のことが伝わったのだろうか。


「そんなLINEまでご存知とは……。やっぱり文春、怖いですね(笑)。どう書かれているか一字一句、気になって、後から聞きました。本当にすごく良く書かれていて……。それはね、変な話ですけど、ちょっと涙が出ましたね」


 木村と会うときは福田氏も緊張したという。


「やっぱり大スターですから。それに事務所が危機的状況にあって、マスコミから『タレントみんな辞めんじゃないの?』と言われるなかで、話すわけですからね。まだ自分の考えがきちんと定まっていませんでしたが、事務所の将来について木村さんに必死で話をして、おそらく理解していただけたと思います。だからこそ、そのLINEグループで、ちょっとこいつ、いけるんじゃない、と言っていただいたのかなと思います」


 スタート社はタレントに対し、2種類の契約を提示している。新しく採用するエージェント契約は、事務所が仕事の斡旋や契約交渉を担う。従来のマネジメント契約は、それに加えてスケジュール管理から日常的な活動まで全面的にバックアップする。


 だが、どちらも選ばず、事務所を退所するタレントもいるという。


「移籍の自由を認めることがなにより重要です。『うちの事務所を出て行ったら仕事干すぞ』ということは、もちろんありません。それどころか『やっぱり戻りたい』というなら、出戻りのタレントのためにプラットフォームも用意したいと考えています。実は現時点でも、独立を決めたタレントに、『独立したらまずウェブサイトを作って、問い合わせフォームをこうやって作るんだよ』などとアドバイスしています」


 福田氏がトップになって、事務所の体質はどう変わるのか。


山下智久、平野紫耀…“辞めジャニ”との共演は


 福田氏はこれまで、バーター出演が日本のドラマの質を下げていると発言してきた。まさにジャニーズは自社の人気タレントが主演するドラマに、若手タレントをバーター出演させて認知度を上げてきた。


「主役のオファーを頂いたとき、こんな新人もいるので考えてもらえませんかと推薦することは、商慣行としておかしなことではないと思います。ただ新人を使わないと、主役を出さないぞ、となれば、ある種の脅迫ですよね。今後、そういう悪いバーターは行わないよう徹底します」


「新しい地図」の3人に象徴されるように、“辞めジャニ”はジャニーズのタレントとは共演NGとされてきた。彼らや山下智久、元キンプリの平野紫耀らとの共演は、今後あるのか。


「全くOKです。共演NGといったって、それって『(芸能事務所がいくつもある)港区の話』でしょう。我々は韓国と戦ってグローバルに打って出なきゃいけないのに、そんな狭い港区レベルの話をしてどうするんですか。根本的な理念としては、誰とでも共演すべきだし、そもそも芸能事務所はNGを出す立場にはありません」


SMAP再結成の可能性は…


 SMAPの再結成の可能性もあるということか。


「それはその人たちがやりたければ、『何でもあり』でしょうね。ただその(再結成の)ために、僕が何かを仕向けることはありません。ビジネスモデルにフィットすることであれば、何をやっても自由ですよ。僕が『やりたい』とか『やらない』じゃない。タレントが自由に動けるプラットフォームを僕が作れるかどうかが、課題だと思っています」


 福田氏はジャニーズファンからは“破壊者”と警戒され、そうではない立場の人々からは、新会社に関わることを批判されている。


「そこは全然気になりません。僕はタレントでもオーナーでもないので淡々と経営していくだけです。ファン向けの挨拶の動画を撮ったときに、偶然(関ジャニ∞の)村上(信五)くんがいたから、声をかけたんです。同じ大阪の高槻出身で同郷なんでもう仲良いんですよ。『ネット上で、福田は嫌だって言われて良い気がしないから、愛称を考えて欲しい』と言ったら、『福ちゃん』になりました」


なぜ「週刊文春」の取材をいち早く受けたのか


 小誌は1999年にジャニー喜多川氏の性加害問題キャンペーンを行うなど、旧ジャニーズ事務所に厳しい批判を行ってきた。その小誌の取材をいち早く受けた理由を福田氏は次のように語った。


「故ジャニー喜多川氏の性加害問題は週刊文春さんから始まったので、新しい会社は、やはりここから始めるべきだと思った。ジャニー氏のやったことは世界的な大犯罪だし、決して許されるものではない。その認識は今でも変わりません。


 新しい会社をどのように進めるのかを語るには、PR的な内容ではなく、内部事情を最も理解している文春さんに僕の肉声でそのままお伝えすることが会社の船出にいいのでは、と考えたんです」


 取材の最後、小誌記者が「熱愛スクープや、事務所に何か問題があれば、今後も書かせてもらいますから」と告げると、福田氏は「そこはもちろん分かっています」と応じるのだった。


◇◇◇


 インタビューの一問一答全文、動画は「 週刊文春 電子版 」で公開中。


(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年12月21日号)

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