【インタビュー】鈴木亮平、挑戦を糧に突き進む新しい自分との出会い「まだ守りに入る段階じゃない」

2021年12月2日(木)7時45分 シネマカフェ

鈴木亮平『土竜の唄 FINAL』/photo:Maho Korogi

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俳優・鈴木亮平から滲み出る人柄のよさ、サービス精神は、インタビューの冒頭から垣間見えた。机の上に置かれたペン型のICレコーダーを物珍しそうにしげしげと見つめた鈴木さんは、「あ、じゃあ…」とスーツの内ポケットにしまい込む仕草をして、にやりと笑みを浮かべる。茶目っ気あふれる行動はほっこりした笑いを生み、取材場に漂っていた緊張感を瞬時にやわらげた。「実は関西人なんですよ」と言う鈴木さん、ちょっとだけ“ボケたい”思いは、兵庫県西宮市出身の血が騒ぐということか。

「最近、自分が“すごくストイックに役作り”みたいに書かれているのを読むと、そんなわけじゃないんだけどな…と思うことがあります(笑)。例えば『HK 変態仮面』だったら、ああいう(コメディの)作品だから“すごく真面目にインタビューで答えたら面白いのかな?”というのも実はちょっとあり、真面目に答えたりしているんですよ。ボケのつもりで答えていたら“こういう役でも、鈴木はすごく真面目にやってる!”みたいに書いていただいて…(笑)」。

冗談半分といった口調で話す鈴木さん。過去の記事を引っ張り出すと、確かに、2019年のシネマカフェのインタビューでも「『西郷どん』は俳優人生の第一章を締めくくる作品だったということ。それくらい、強烈だったんです。そう気づいたとき、“第二章はもう始まってる!”となって。がむしゃらに、リスタートする気持ちで、恐れずにやっていく時期が来たなと思いました」と、俳優人生について語っていた。そう振ると「…まずいな。また真面目なことを言ってるな…!」と破顔。

しかしながら、始まった俳優人生の第二章でも光彩を放ち、鈴木さんは存在感を見せつけている。正義の人だって、最凶の人だって、鈴木さんの手にかかればお手の物だ。いろいろな顔を見せていくことは、やはり念頭に置いているのだろうか?

「それよりも、あるとすれば、まだそんなに守りに入る段階じゃないと思っているんです。いろいろな役をたくさんの人とやり、学んでいきたいという気持ちが強くて。自分がやったことのない役ならもっとやってみたいし、自分にあて書きしてくれた役なら、本来の自分らしさでどこまでいけるんだろうとか、いろいろな挑戦があると思っています」と、あくなき精神全開。「そういうことをやっていかないと、自分の成長がないだろうなとも思います。…ただ、40代になったら、もう少し自分のスタイルを確立していってもいいかなとは思っているんですが」。

40代と言えば、あと2年。「“自分はこういう芝居をする俳優です”と、もう少し強く打ち出していきたいかもしれない」と、少し先の未来のイメージについても語る。「今までは、それぞれの監督と脚本に自分が染まることで、新しい自分を発見して、引き出しを増やしていきました。染まることで失敗もしましたし、そこから学ぶことも多かった。けど、40代からは自分に引き寄せて“自分はこの作品だったら、このラインでいったほうが一番いい”と思うところを、ある程度強めに持ってぶつけていこうかなと思っています」。大きな変化の前の武者震い。ずんずんと役者道を突き進む鈴木さんに、どこまで進化していくのだろうと、ときめきを感じずにはいられない。




『土竜の唄 FINAL』の轟烈雄、『孤狼の血 LEVEL2』の上林成浩…ヒールがハマる鈴木亮平

現在公開中の映画『土竜の唄 FINAL』にて、鈴木さんは原作漫画でも人気の高い最強最悪の敵・轟烈雄を演じた。鈴木さんが24歳のときからの朋友・生田斗真が主演する人気シリーズ。警察をクビになった菊川玲二(生田さん)が潜入捜査官:通称・モグラに任命され、日本から麻薬を撲滅するため最凶のヤクザ組織のドンを逮捕すべく、果敢に挑んでいく物語だ。2014年にシリーズ1作目『土竜の唄 潜入捜査官 REIJI』、2016年に2作目『土竜の唄 香港狂騒曲』が公開され、本作は5年ぶりのシリーズ3作目にして完結編となった。

「斗真くんの代表作なので、そういう意味でプレッシャーはすごくありました。大事な友達だし、尊敬する同世代の俳優なので、彼の代表作を失敗させるわけにはいかない」と真剣な表情で、本作のオファーを鈴木さんは振り返る。撮影も終え公開を迎えた現在の心境を問うと、「作品はすごく面白かったですし、斗真くんは本当にすごい! あの軽快な感じやテンポとか、こっちを楽しませてくれる芝居は昔から天下一品なんですよね」と生田さんの演技を絶賛する。ちなみに、プライベートでふたりでいるときは、「お芝居の話とかは…しないです(笑)。お互いちょっと気恥ずかしいというか。褒め合いみたいなのは、聞いてくださる方がいるから(取材場で)言う、くらいですね」と、はにかんだ。

轟烈雄としては、原作ファンも興奮するほどのダイナミックな演技を披露し、スクリーンで鮮烈な印象を残す。さらに、鈴木さんと言えば、本年公開した映画『孤狼の血 LEVEL2』ではヤクザの上林成浩となり、極悪非道のキャラクターで映画ファンを震え上がらせたのも記憶に新しい。こうした、いわゆる“悪いやつ”を演じること、ヒールをオファーされることについて、自身はどう感じているのだろうか。

「基本的に悪いか・悪くないかは主観だと思っているので、“悪い人”は、そういう意味では、いないと思っているんです。特に自分は自分のことを悪いと思っていないはずなので、僕は“ああ、悪役か!”とは見ないんですよね」と、その人物の視点に立つと説明する。「何をやろうとしている人で、どういう正義を持っている人なんだろう、と考えるんです。だから、轟烈雄も上林も、そんな悪役だと意識はしていないんです」。

人物それぞれの正義や思いを役に投影させる。そのやり方は、役によって変わるという。「こう言うと、生真面目な俳優に聞こえるかもしれないですけど…、例えば白石さんの作品なんかでは、本当に人間としての恐怖みたいなものを立たせなければいけなかった。けど、轟烈雄は逆で。もっとわかりやすく“この人は世界の王になりたいんだ!”みたいに捉えていました。作品の中で存在感が軽くはなってはいけない、重しでいないといけないけど、自分より王っぽい生き物がいたら倒しに行くのが轟烈雄。だから巨大マンタが来たら行く! という感じでしたね(笑)」。当該シーンは、ぜひ劇場で!




意外な一面「なんか、すごい考えちゃうし、反省しちゃう」

ひとつ、ひとつの質問に対して濃淡織り交ぜ興味深いトークを繰り出す鈴木さん。人柄と才能…、その背中に憧れる人は多い。なので、こんな質問をぶつけてみた。「鈴木さんのようになるには、どうすればいいですか?」と。鈴木さんは、即座に「それはもう、僕のいいところだけを見てくれているんですね! 大変ですよ、私みたいになったら…!」と苦笑気味。「なんか、すごい考えちゃうし、反省しちゃうんです。“今日のあの表現は、あれでよかったんだろうか”とか“もっとあったかもしれない”と、夜中にずっとひとりで考えたりして」と、やはり生真面目な一面が顔を覗かせる。

鈴木さんのようになる、というよりも鈴木さんが生きる上でのヒントとして意識していることを、ここでは教えてもらった。

「歴史を知ると、客観的な自分が見えてきますよ! 例えば“ある偉人は人生の中で半分ぐらいかけて、こういう準備をしていた”となると、自分の人生を振り返ると“自分はまだこの段階だから焦るべきじゃないな”と、わかるんです。“信長がこうなって秀吉がこういうことをしたから徳永の天下が250年続いたんだ”とかをわかってくると、自分の人生も“あ、あのときのパターンだな”とか“これ、モンゴル帝国のと一緒だな”とかね(笑)」と、淀みないトークが続く。

「けど、歴史はやっぱり自分の未来や現在を客観的に見られるひとつの指針になります。そういう意味で、同じような経験をしている人とか、年長者にお話を聞くこともいいと思います!」とアドバイスを送ってくれた。マインドチェンジをしたら、さあ、明日から我々も鈴木亮平になれる…はず?

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