エンタープライズIT新潮流 第20回 重要な仕事を時間管理のマトリックスで進捗させるヒント

2024年2月13日(火)11時0分 マイナビニュース

企業の戦略遂行を阻害する敵は、われわれが日々直面している「日常業務」だそうです。これは、書籍『戦略を、実行できる組織、実行できない組織』(FCEパブリッシング 著者:クリス マチェズニーら)から学んだことです。同書では、この日常業務を「竜巻」と呼んでいます。重要な活動をまき散らすイメージですね。戦略遂行だけでなく、普通の仕事の進捗を阻害するのも日常業務です。きっとみなさんの多くも、日常業務に忙殺されていますよね。
業務を4つのマトリックスで考える
ヒトの時間には限りがあります。キリの良い「週」という単位で考えると、一年は365日を1週間7日で割ると約52週となり、ヒトの一生はおよそ5200週しかありません。筆者が支援をしている企業の多くで、日常業務に忙殺され、あまり物事が進捗せずに、1週間、また、1週間と時間が過ぎていくケースが散見されます。もったいないです。
では、どうすればこのような状況を脱することができるしょうか?それは、重要ではあるが緊急性の低い業務に対して、時間を計画的に使うことです。かの有名な書籍『7つの習慣』(キングベアー出版 著者:スティーブン・R.コヴィー)では、時間管理のマトリックスとして、活動を重要性と緊急性で分類しています。重要であるか重要でないか、また、緊急であるか緊急でないか。この4つでマトリックスを作り、活動を考えるのです。
戦略や仕事の進捗は、実は、重要であるが緊急性の低い業務をどのように進めるかがポイントです。そこには、中長期的に人や組織のケーパビリティの向上を行う活動、人間関係づくり、準備や計画などが含まれます。
マトリックスに当てはめて考えると、日常業務は重要でなく緊急性も低い、とるに足らない業務です。また、普段仕事をしていると、緊急であるが重要ではない活動が多いですし、それも日常業務と考えてもよいかと思います。
これら2つの重要でない活動に、実に40%以上もの時間を使っていると、書籍でも紹介されていました。みなさんの企業では、さらに多くの時間を使っているかもしれませんね。緊急かつ重要な領域は危機や問題への対応や期限のある仕事であり、どうしても避けられないストレスのかかる仕事です。
優先順位を付けてスケジュールを計画する
ではどのように、重要であるが緊急性の低い活動を進めればよいのでしょうか。それには何点かあります。
まずは優先順位付けです。先ほど週の話を書きましたが、やはり週単位で日々の計画を行うことがリズムを作りやすいです。やり方は以下の通りです。
毎週の始めに、その週にやるべき、重要であるが緊急性の低い、優先事項の高い活動をリストアップします。これには仕事だけでなくプライベートも含めると良いと思います。人間は仕事だけではないですからね。その週にプライベートの超重要な活動があれば、そちらを仕事より優先すべきです。そして、それらの活動の終わったとき(=1週間後)の目標を決めます。目標については、後で少し詳しく述べます。
次に、活動のスケジュールを決めます。スケジュール管理ソフトにあらかじめ予定を入れておけばいいと思います。その時間は、緊急かつ重要な活動以外はブロックします。筆者は、"Blocked for ○○活動"とスケジュールに入れています。学習の時間も入れるといいです。チーム内で、それぞれの重要であるが緊急性の低い活動について共有すれば、スムーズに物事が進みます。チームで実行する活動もあるでしょうし。
次週でも前週の活動を継続する場合は、現状とNext Actionを明確にします。これが物事を進捗させるヒントです。Next Actionとして、いつまでにだれが何をするかを定義して、そのActionを完結させることで、活動は確実に進捗します。
先行目標と遅行目標
目標はなるべく先行指標で作ります。前述の書籍『戦略を、実行できる組織、実行できない組織』では、遅行指標と先行指標の考え方が紹介されています。
遅行指標とは結果としての指標で、典型的な例は売上や利益などの財務指標です。売上のための案件数であるパイプラインも、微妙ですが遅行指標です。遅行指標はKPIとしては大事ですが、直接コントロールできない指標です。
遅行指標は結果ですので、遅行指標だけをみて経営や組織の運営をするのは、バックミラーだけを見て運転していると比喩されます。よく、売上が不足している場合に売上だけをみて活動することがありますが、売上は遅行指標なので正しい作戦ではないということです。
これに対して先行指標とは、遅行指標を作るために、コントロールできる、自分でなんとかなる指標です。例えば、インバウンドのリードを作成するためのWebサイトのトラフィック量やコンバージョン率などです。Google広告やSEO対策をがんばれば、Webサイトのトラフィック量を増やせます。
営業活動では、質の高い会議の数なども先行指標で使われる場合があります。これは、対象の顧客に質の高い会議を多く行えば案件が作成でき、案件に対して質の高い会議を多く行えば成約につながるという原則からきています。
毎週の活動目標を先行指標で定義することで、KPIに影響する重要な活動にフォーカスできるようになります。先行指標は自分やチームでコントロール可能なので、達成感がでてくるというメリットもあります。
やらないことを決めNoと言おう
もう1つ重要なのは、緊急でなく重要でもない仕事は、徹底してやらないことです。戦略では、実現のために優先順位の高いことに貴重なリソースを割り当てますが、それと同時にやらないことを徹底します。
日々の仕事も同じです。『Noと言える日本人』(光文社 著者:盛田昭夫ら)という古い書籍がありましたが、限りある時間の中でNoと言える会社員になるのです。その代わりに、重要な仕事の進捗を見せないと、単なるダメな社員と認知されてしまいます。
なお、どうしても避けられない、重要でないが緊急な活動は締め切りにかかわらずできるだけ早く開始して、できるだけ早く完了させるのがコツです。締め切り日間近には、別の活動が要求される可能性があり、そちらが生産性を下げてしまいます。
ぜひ、竜巻を退治して、生産性の高い活動を実施してみてください。
北川裕康 キタガワヒロヤス 35年以上にわたりB to BのITビジネスに関わり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workday、Infor、IFS などのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションなどで執行役員などを歴任。現在は、独立して経営・マーケティングのコンサルティングサービスを提供しながら、AI insideの Chief Product Officer(CPO)を担当。大学は計算機科学を専攻して、富士通とDECにおいてソフトウェア技術者の経験もあり、ITにも精通している。前データサイエンティスト協会理事。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、学習して、仕事で実践。書くことが1つの趣味で、連載や寄稿多数あり。 この著者の記事一覧はこちら

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