米国政府が日本企業に半導体材料の中国への輸出制限を要請か? 米国メディア報道

2024年3月11日(月)13時19分 マイナビニュース

米国政府は、これまでの対中半導体規制の強化を目的に、これまでの日本やオランダに加え、ドイツや韓国に対しても中国への半導体技術の輸出規制強化に協力することを水面下で要請している模様だと米国紙が報じている。
米国関係者の話として、米国政府は、フォトレジストなど半導体製造に不可欠な材料の中国への輸出を日本企業にも求めているという。米商務省の当局者が2月に東京で開催された輸出規制に関する会議にて、この問題を提起したという。日本のフォトレジスト主要メーカーとしてはJSRや信越化学、富士フイルムなどが居るが経済産業省を含め関係者からの話は漏れてきておらず、米国政府の関係者からも具体的な話が出てきていないので、この新たな規制強化に向けた交渉の実態は不明である。
米商務省は、すでに2023年中に米国の半導体部材メーカー各社には中国に向けた輸出をしないようにとの通達を送っており、その影響で実際に中国メーカーへの輸出が不許可になったとされる事例も報告されており、米国政府による対中輸出規制がこれまでの半導体デバイスや製造装置のみならず、関連材料・部材にまで及んできている実態が明らかになっている。
SEMI EuropeがEUの貿易規制をけん制
このほか米国はオランダ政府に対して、中国の顧客が規制強化前に購入したASMLの半導体露光装置について、同社によるサービスや修理の提供も停止することを求めている模様である。オランダ政府は、ASMLに一度出していた露光装置の中国への輸出許可を2024年1月に取り消したことが報じられているが、この動きも米国政府からの圧力によるものとみられている。
関係者筋によれば、オランダ政府は米政府からの最近の働きかけに対し、より厳しい措置を検討する前に現在の規制の効果を見極めたいと主張しているという。こうした動きに併せる形でSEMIの欧州法人「SEMI Europe」は3月初旬、「SEMI Europe Priorities on the European Economic Security Strategy(欧州の経済安全保障に関するSEMI Europeの優先順位)」と題する欧州連合あての意見書を公開。「欧州の半導体産業の長期的な成功と発展を保証するには、企業ができるかぎり投資決定を自由に行う必要がある」との主張を展開したうえで、EUの技術を競合国が入手するリスクを考慮するのは正しいが、自由貿易パートナーシップこそが安全保障を確保する最善の方法であり、規制は最後の手段(last resort)でなければならないとしている。婉曲な表現ながら、EUは輸出管理の強化や域外への投資規制を講じる前に、もう一度よく考えるべきだとの意見表明となっている。
ASMLが海外に工場建設を模索か?
オランダ政府の規制対象の1社となるASMLは、オランダのビジネス環境に関する多項目にわたる要望書をオランダ政府に出したが、政府が聞き入れない場合は、事業拡大のために計画している先端露光装置量産工場をオランダ国外に建設するかもしれないと政府に伝えたとオランダの有力メディアであるDe Telegraafが伝えている。この要望書に、オランダ政府による対中輸出規制強化政策に対する内容が含まれているか否かは明らかではない。
AMDの中国向け低性能AI半導体の輸出が禁止に
AI向け半導体で存在感を示すNVIDIに対抗して、AMDはデータセンター向け新型GPUアクセラレータ「MI300シリーズ」を2023年に発表。米国政府の規制に合致する形で中国向けに性能を引き下げた「Instinct MI309 GPU」も開発したが、そのMI309の中国への輸出が米政府からの許可が得られなかったと、米国の経済メディアであるBloombergが3月5日付けで伝えている。
米商務省が製品性能が高過ぎると判断、輸出には米商務省産業安全保障局(BIS)からの許可を得る必要があると伝えてきたという。これを受けてAMDが許可を申請するかどうかの詳細は不明である。
米商務省は、国家安全保障は短期的な収益よりも重要であるとし、NVIDIAに対しも中国に向けたAI半導体の再設計をしないよう警告しているという。
先端半導体だけではなくレガシー半導体も規制を検討
商務省は、先端プロセスではない、旧来プロセスの半導体についても中国での生産動向を注視しているとされる。米国政府の規制で中国勢は先端半導体の製造が困難になってきたこともあり、代わりにレガシープロセスを用いた半導体の製造を活発化させてきており、中国各地で対応の半導体工場建設も進められている。さまざまな分野で活用されるレガシー半導体の分野で中国勢が価格攻勢を仕掛け、圧倒的な支配的地位を確立して世界を牛耳ることを米国政府は恐れている。
これを避けるために米商務省BISは2024年に入り、米国の自動車、航空宇宙、防衛業界の各社に、レガシー半導体の調達、使用状況についての調査を依頼しており、「次のステップを考える上での参考にする」(レモンド商務長官)という。米国下院の中国特別委員会は最近、超党派の報告書で、中国製レガシー半導体に関税を課すよう政府に求めているとされ、今後、米国政府は関税やその他の貿易手段で中国製レガシー半導体の輸入制限をかけるとともに、CHIPS法による補助金支給で米国内でのレガシー半導体の製造能力を強化しつつある。米商務省が初期段階として助成金の支給を決めたのは半導体メーカー各社ともに軍事・防衛/航空、車載などのレガシープロセスを採用して半導体の製造を行う企業ばかりである。

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