はじめてのFinOps 第1回 FinOps(フィンオプス)ってなに?

2024年4月2日(火)11時0分 マイナビニュース

欧米を中心に広がり、昨今国内でも認知度が高まりつつある「FinOps」について、その基本から本連載では解説していきます。
国内でも注目を集める FinOps
「クラウドのコストが想定以上に高くつき、クラウドに舵を切ったのが果たして正解だったのかと思っている」「会社全体で継続的にコストを統制していくにはどう取り組めばいいだろうか」--。お客さまと会話している中で、こういったクラウドのコストに関わるお悩みを耳にすることが、最近増えてきたと感じています。
これにはいくつかの背景があるでしょう。コロナ禍で大きく落ち込んでいた経済活動の回復や、2022年2月以降に急速に進んだ円安などの外部環境の変化に加え、これまでコストを二の次としてクラウド移行の達成を優先し、移行が一段落したところで改めてクラウドの使い方を再点検する動きがあるためです。
そのような中、国内でも昨今注目を集めているのが「FinOps」(フィンオプス)です。FinOpsは、クラウドのビジネス価値の最大化、データ主導によるタイムリーな意思決定、そして部門横断の協調によりクラウド支出に財務上の説明責任をもたらすためのフレームワークおよび、その実践です。
「DevOps」(デブオプス)が、新たな機能追加を担う開発(Development)と安定稼働を担う運用(Operations)の協調によりビジネス価値を高め、安全安心なITサービスを迅速に利用者に届ける取り組みであるのと同様、「FinOps」は、財務・調達チームと、開発・運用チームが協調し、クラウドのビジネス価値の最大化を目指します。
ここでよくある勘違いは、FinOpsが「コスト削減」を目的にしたテクニック集と捉えられることです。FinOpsは「ビジネス価値の最大化」を目的としたもので、クラウドの利用に関して、役割・立場を超えて投資すべき対象やその時期について話し合い、ときには引き締めを、ときにはさらなる投資をしていくためのものです。そのためDevOpsと同様に組織文化の変革という大きなテーマも含んでいます。
FinOpsの体系化と普及を目指すFinOps Foundation
このFinOpsについて、2019年に設立され現在はLinux Foundation傘下にある非営利団体「FinOps Foundation」(※)が中心となり、フレームワーク(方法論)の体系化や、認定資格プログラム、各種イベントを通じた普及に取り組んでいます。最近では、クラウドのコストと利用状況に係るデータ形式の標準化「FOCUS - The FinOps Cost and Usage Specification」にも取り組んでおり、さまざまなクラウド事業者が対応に向けて取り組んでいます(Google Cloudの例)。
※2024年3月現在、FinOps Foundationには5000社以上から1万6000人以上が参加しています。
FinOps Foundation が公開しているFinOpsのフレームワークは、いくつかの要素から構成されます(2024年3月21日時点、丸カッコ内は筆者訳)。
1. Principles(指針)
FinOps の実践にあたり「道しるべ」となる6つの指針
2. Personas(役割)
FinOpsを実践にあたり、どのような役割の人たちと、どのように協調する必要があるか
3. Phases(フェーズ)
FinOpsで反復的に取り組む3つのフェーズ、「Inform」(可視化)、「Optimize」(最適化)、「Operate」(実行)
4. Maturity(成熟度)
FinOpsの実践の成熟度の3段階、「Crawl」(はいはい)、「Walk」(歩く)、「Run」(走る)
5. Domains & Capabilities(領域と能力)
FinOpsの実践を構成する4つの活動領域と、各活動領域で必要とされる合計22個の組織的能力
このフレームワークはFinOps Foundation内での活発な議論をもとに適宜見直しされています。FinOps Foundation の認定資格「FinOps Certified Practitioner」の有効期限は2年間ですが、その間にもフレームワークにはさまざまな更新が行われており、資格更新のたびにFinOps が急速に進化していることが感じられます。
FinOps のPrinciples (指針)とは
日進月歩で進化しているFinOpsのフレームワークですが、その中でも大きく変わることなく、実践の「道しるべ」となっているのが、FinOpsのPrinciples(指針)です(丸カッコ内は筆者訳)。
Teams need to collaborate(チームは協力する必要がある)
Decisions are driven by business value of cloud(意思決定はクラウドのビジネス価値に基づいて行われる)
Everyone takes ownership for their cloud usage(全員が自分のクラウド利用について責任を持つ)
FinOps data should be accessible and timely(FinOpsデータは時宜にかなってアクセスできるべき)
A centralized team drives FinOps(一元化されたチームがFinOpsを推進する)
Take advantage of the variable cost model of the cloud(クラウドの変動費モデルの強みを活かす)
組織によりFinOpsに取り組む背景や取り組みの内容・体制などさまざまです。100の組織があれば100通りのFinOpsの物語があります。
組織文化の変革ともなると一筋縄ではいかず、ときには壁にぶち当たり「これでいいのだろうか?」と不安になることもあるのではないでしょうか。そのような中で暗い道を照らす灯りとなるのが、さまざまな組織での教訓から導き出された、この6つの指針です。
本連載では今後複数回に分けて、この FinOpsについて解説していきます。
小原 誠 こばら まこと シニアソリューションアーキテクト 国内メーカーにおけるストレージ要素技術の研究開発に始まり、外資系コンサルティングファームにおけるITインフラ戦略立案からトランスフォーメーション(要件定義、設計構築、運用改善、PMOなど)まで、計20年以上従事。NetAppではソリューションアーキテクトとして、特にCloudOps、FinOps、Cyber Resilience領域を中心にソリューション開発やマーケティング活動、導入支援などに従事。FinOps認定プラクティショナー(FOCP)。国立大学法人山口大学 客員准教授。 この著者の記事一覧はこちら

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