岡山大と両備システムズが開発した胃がんAI診断支援システム、医療機器製造販売承認を取得

2024年4月25日(木)6時48分 マイナビニュース

岡山大学と両備システムズは4月24日、両者が協力して開発を進めてきた「早期胃がんAI診断支援システム」が、両備システムと協業するオージー技研により、2024年3月5日付で厚生労働大臣より「医療機器製造販売承認」を取得したことを発表した。
日本人の死亡原因1位である「がん」。中でも肺がん、大腸がん、胃がんは3大がんとして知られており、そのうち胃がんの死亡者数は2020年の統計で4万2000人強、診断数は2019年の統計で12万4000例強とされている。
近年、内視鏡を活用した治療技術の発達により、早期の胃がんであれば、胃の切除なしに病変だけを切除することで対応ができるようになってきたが、あくまで深達度が粘膜層付近に留まっている状態の早期であれば、という話で、その深達度の見極めは担当する医師が、(断面を見れるわけではないので)当該部位の表面からがんの形状などを見て、深達度をそれまでの経験から判断する必要があったという。そのため、鑑別が難しく、担当医の主観などのほか、大きな病院などでは複数医によるカンファレンスの結果に基づく治療方針の決定などが行われることとなり、治療までに時間がかかること、また、もともと内視鏡治療で切除できる深達度であったとしても、深読みをして外科手術に切り替えられるといった割合が症例の5〜10%ほど存在する一方、内視鏡治療を選択したものの、読みが浅く、外科手術を再度行う必要が生じる場合もESD(Endoscopic submucosal dissection:内視鏡的粘膜下層はく離術)の症例の10〜20%ほどあるとされており、患者の負担軽減などを鑑み、深達度診断の精度向上が求められていたという。
実際、専門医であっても深達度の診断精度は72%ほどと言われており、それ以上に精度を高めるためには、AIなど人以外の支援を活用することが求められていたとする。
そうした背景もあり、両者は2019年より本格的に早期胃がん深達度診断に関するAI研究の開発を開始。2021年には開発したAIの有用性を発表し、両備システムズが医療機器製造業の登録を完了。2023年には開発された早期胃がん深達度支援システムをプログラム医療機器としてオージー技研が厚生労働省(医薬品医療機器総合機構:PMDA)へ承認申請を実施、2024年3月に医療機器としての認可を取得するに至った。
開発されたAI診断システムは、500名ほどの胃がん患者から取得した5000枚ほどの内視鏡で撮影した病変画像を学習データとして活用することで、専門医を超える正診率82%を達成したという。実際の診断支援手法は、内視鏡検査で取得した画像のうち、6枚ほどをAI診断システムに読み込ませるだけ。1分弱ほどで、病変が表層がんである可能性がどれくらいか(もしくは進行がんである割合)をメーターと数値で示してくれ、治療の方針決定の指針として手早く活用することができる。
研究責任者である岡山大 学術研究院医歯薬学域の河原 祥朗 教授は、「症例を増やしていくことで、さらに精度が向上する可能性がある」とし、今後も改良を進めていくことで、次の目標値である正診率90%の実現を目指したいとする。
一方の両備システムズは、今回の承認を得たことを踏まえ、今後事業化に向けた本格的な取り組みを進めていく予定としており、まずは年内は興味のある医療機関にAI支援システムを提供していく形で、事業化にめどをつけていきたいとしている。また、同社がこれまで展開してきた医療ITシステムソリューションに、新たにAI診断サポートを加えることで、シナジーの創出を図っていきたいともしており、2030年までにメディカルAI事業として10億円、医療事業全体で30億円の売上高を目指したいとしている。また、岡山大とは、胆道や膵臓についても画像AI診断の適用領域を広げていく取り組みも併せて進めていくとしており、さまざまな部位や疾患への適用を目指すともしている。
なお、実際の製造販売については、製品の製造および出荷可否判定を医療機器製造業の承認を取得している両備システムズが行い、その管理および監督、出荷の可否判定・検収を医療機器製造販売業の承認を取得したオージー技研が担い、それを踏まえて、医療機器販売業の承認を取得している両備システムズがユーザーに販売するという流れになるという。

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