東大、女性医師による治療のメリットは女性患者の方が有意に大きいと確認

2024年4月25日(木)6時0分 マイナビニュース

東京大学(東大)は4月23日、米国の高齢者77万人以上の入院データの分析の結果、女性医師に治療された患者の方が、男性医師に治療された患者よりも死亡率や再入院率が低い傾向にあり、女性医師の治療によるメリットは、女性患者の方が男性患者よりも大きいことを明らかにしたと発表した。
同成果は、東大大学院 医学系研究科の宮脇敦士特任講師、米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の津川友介准教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国内科学会の刊行する公式学術誌「Annals of Internal Medicine」に掲載された。
これまでの研究から、女性医師による診療は、特に女性患者においてコミュニケーションの改善や、医師患者関係の良好化、医療アドバイスの遵守率向上、ひいては患者アウトカムの改善といった、良い影響があることが指摘されていた。
一方、女性患者は男性患者に比べて、集中治療を受けにくかったり、診断が遅れることがあったり、痛みなどの症状を過小評価される傾向があり、患者の性別により受ける医療の内容に差が見られることが指摘されてきた。これらの知見は、医師の性別が、男女の患者が受ける医療の違いに影響している可能性を示唆しているという。しかし、医師の性別が患者の健康アウトカムに与える影響が、患者の性別によってどのように異なるかについては、わかっていなかったとする。
そこで研究チームは今回、米国における65歳以上の高齢者の内科入院データを用いて、担当医師の性別が患者の死亡率や再入院率に与える影響が男性患者と女性患者でどのように異なるのかを調べることにしたという。
米国のメディケア診療報酬データ(メディケアは65歳以上の高齢者のほぼすべてが加入する医療保険)を用いて、2016年から2019年の間に4万2114人の医師が治療した77万6927人の患者について、医師と患者の性別の4つの組み合わせ(女性医師に治療された女性患者、男性医師に治療された女性患者、女性医師に治療された男性患者、男性医師に治療された男性患者)ごとの患者アウトカム(入院後30日以内の死亡率、退院後30日以内の再入院率)を分析。
その際、先行研究と同様に、ホスピタリスト(入院患者のみを診る医師)が治療した患者が注目された。米国のホスピタリストは通常、シフト制で勤務するため、医師は患者を選ぶことができない。また、患者が医師を選ぶことができない状況を作り出すために、緊急入院した患者のみに分析が限定された。このように医師も患者を選べず、患者も医師を選べない状況では、女性医師と男性医師への「患者の割付」が同じ病院の中で、ほぼランダムに近い状況と考えることができるため、患者の重症度の違いが結果を歪めることを防げるという。
また分析においては、さまざまな患者の要因(年齢、性別、主傷病、併存疾患など)、医師の要因(年齢、学位、年間診療患者数)、および病院の固定効果を調整することのできる回帰モデルが使用され、それらの影響が統計的に補正された。
その結果、入院後30日以内の調整後死亡率は、女性患者では、女性医師に治療された場合8.15%、男性医師に治療された場合8.38%と、女性医師の方が0.24ポイント統計学的に有意に低いことが確認された。それに対し男性患者では、女性医師に治療された場合10.23%、男性医師に治療された場合10.15%と、女性医師の方が死亡率が低い傾向はあるものの、統計学的に有意な差はなかったとした。再入院率についても同様の傾向が認められたという。これらの結果から、女性医師の治療による患者への「利益」は、女性患者において大きいということが判明した。
これらの結果は、特に女性患者が質の高い治療を受けるためには、医療現場における女性医師を増やす努力を続ける必要性が示されている。また結果のメカニズムは不明だが、男性医師が女性患者の症状を過小評価したり、女性患者が女性医師にはより気兼ねなく症状を打ち明けられたりすることなどが、この結果の背景にあると研究チームでは推測しているという。今後は、そうした具体的なメカニズムをより詳細に解明することで、質の高い医療を男女平等に提供する方策を講じていく必要があると考えているとした。

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