4万円を切ったXiaomiの「34インチ曲面ゲーミングモニター」がビジネス用途にも使えそうな件

2024年4月26日(金)18時46分 ITmedia NEWS

中心をメインの作業スペースにして、左右をサブの作業スペースに

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 日本ではあまりイメージがありませんが、中国のXiaomiは、スマートフォンだけではなく、テレビをはじめとするディスプレイも多く手がけるメーカーです。そして4月15日に日本でリリースしたのが、「Xiaomi 曲面ゲーミングモニター G34WQi」(以下、G34WQi)。実に今どきのスペックで、3万9800円というチャレンジングな値付けをしてきました。
 このモニターが実に今どきな仕様であるのは、なにも高リフレッシュレート対応で、湾曲型のウルトラワイドスクリーンなゲーミングモニターであるというだけはありません。ビジネス用途でも、十分に今どきといえます。
 コロナ禍を経て、在宅ワークやオフィスでもノートPCにディスプレイを追加している人も多いかと思います。その理由としては、ビデオ会議をしながらドキュメントを見たり、修正したりといったことや、メインで作業中している画面以外にも常駐させた方がいいアプリが増えていること。そして、そこに生成AIの使用頻度が増えていくことなども挙げられます。特にWindowsでは、今後Copilotもますます画面の右側に表示させたままになっていくはずです。
 そうなってくると、主にゲームや映画鑑賞を目的として出ていたアスペクト比が21:9のウルトラワイドディスプレイは、これまでの16:9のディスプレイ以上に画面を横に広く使うことができるため、ビジネス利用でも有効になってきます。
●21:9はインチ数のイメージに比べて高さが足りない
 ただ、このときに問題になってくるのが、21:9のディスプレイと16:9のディスプレイでは、インチ数におけるサイズ感が異なってくるという問題です。ちょっと分かりにくいと思うので、整理します。
・16:9のディスプレイで24インチの場合、縦辺長は約30cm
・16:9のディスプレイで27インチの場合、縦辺長は約34cm
・16:9のディスプレイで32インチの場合、縦辺長は約40cm
・21:9のディスプレイで24インチの場合、縦辺長は約24cm
・21:9のディスプレイで27インチの場合、縦辺長は約27cm
・21:9のディスプレイで32インチの場合、縦辺長は約32cm
・21:9のディスプレイで34インチの場合、縦辺長は約34cm
 お分かりでしょうか。それまで16:9のディスプレイを使っていた人が21:9のディスプレイに切り替える場合、ワンサイズ上にしても、縦方向の長さはまだ足りないのです。
 これを理解しておくと、今回のXiaomiのモニターがなぜ34インチに設定されたのがよく分かります。そう、16:9のディスプレイで27インチのものを使っていた人が、21:9のディスプレイに切り替えた時、過不足なく感じることができるのが、ちょうど34インチなのです。
 そして、3万9800円という価格は、同等レベルのスペックの場合、他社製品だと27インチになる価格帯。なんともうまい値付けです。
●湾曲画面は仕事に使える?
 ゲーミングモニターの特徴の一つである横幅の部分はこれでご理解いただけたかと思います。ただ、もう一つの大きな特徴である画面の湾曲はどうでしょうか。これはビジネス用途では不要、もしくはデメリットになるかもしれない部分です。
 ということで、こればっかりはスペックの数字だけで考えても分からないので、今回実機をお借りしてきました。
 ディスプレイというのは、ダンボールが届くと「なんて大きなものを注文してしまったのだろうか」と後悔しがちなものですが、ウルトラワイドディスプレイともなると、さすがに“細長い”です。ダンボールに、ディスプレイを箱から出す時やセットアップの手順が描かれています。これは親切ですね。
 組み立ては簡単でした。脚の下の方にある穴にケーブルを通すときれいにまとまります。またディスプレイの高さ調整はけっこう幅があり、これならアームなしでも、自分の好きな高さに調整できそうです。
 背面はとりあえず光ります。この辺はいかにもゲーミングディスプレイ。光のオン/オフ、色などは設定可能です。なんでも、これは部屋を暗くしたときに背面の壁を光らせるための物なのだそうです。
 ケーブルをつないで、画面が表示されるようにしました。まずはゲームと映画を試してみようということで、すぐに起動できる「8番出口」を軽くプレイ。映画は、Netflixで21:9の画面比率になっている映画を探すと「フェラーリVSフォード」がレースシーンもあるので、テストにちょうど良かったです。
 そして、テストのつもりだったのにフェラーリVSフォードを半分ぐらい見てしまって、なるほど湾曲ディスプレイによる没入感というのは、こういうことなんだなと、すっかり味わってしまいました。部屋を少し暗くして、音を大きめにすると、上出来の視聴環境でした。
 で、この記事の目的はそっちではないので、ウルトラワイドディスプレイに合ったビジネス用途での作業環境を試してみます。
●画面を3つに分けるといい感じ
 16:9のディスプレイの場合、左右どちらかをメインの作業スペースにして、残りをサブの作業スペースにすることが多いと思います。メインは3分の2でサブは3分の1という感じでしょうか。
 それが21:9のディスプレイになると、中心をメインの作業スペースにして、左右をサブの作業スペースにできます。それだけの横幅があるからです。
 左を4分の1、中心を4分の2(2分の1)、右を4分の1とするといい感じです。今回のG34WQiの場合、このレイアウトにすると、中心のメインの作業スペースが実寸で横約37.5cmぐらい。ドキュメント作成という意味では、十分ですね。そして、それが湾曲ディスプレイにうまくはまります。
 湾曲ディスプレイの場合、中心部はそれほど曲がっておらず、外側の左右が曲がっています。そのため、画面をフラットに見る必要がない画面を左右に配置します。湾曲しているので、それが若干手前にきます。そして、21:9の横幅では、ちょっとだけ手前にくるだけでも少し目に入りやすくなります。体感的には、それまで少し首を振らなくていけないものが、目の動きだけで見ることができる感じ、と思ってもらえば大丈夫です。
 そのため、まっすぐにディスプレイを見ると視線が自然と中心部に集中します。この感じは、ゲームや映画では「没入感」という表現となるのですが、ビジネス利用の場合には、メインの作業に「集中できる」という表現が適切な気がします。実際に自分の環境に置いてみて作業してみないと気づかない点でした。
 こういったテストをしながら、ディスプレイそのもの設定も調整していきました。私の作業環境では、こういう感じで落ち着きました。
・リフレッシュレート:100Hz
・応答速度:やや速い
・HDR:自動(画面上は自動に設置しても動作してないときはオフと表示される)
・AdaptiveSync:オン
●曲面ディスプレイのデメリット
 ここまで、メリットの話ばかりしてきましたが、ディスプレイが曲がっている湾曲ディスプレイをビジネス用途で使うことのデメリットについても触れておきます。
 まずは、左端右端の湾曲が気にならないか? という問題です。これは慣れの部分もありますが、例えば写真の調整みたいな作業をする際には、中心部以外はどうしてもゆがみが気になります。
 ただ、その場合も普段は画面の邪魔になっているナビゲーションやメニューなどを全部出してしまうことで、自然と作業部分は真ん中にのみ表示されるという感じに工夫できます。なにしろ、幅はまさに広大なわけですから。
 そして、そもそもビジネス用途で21:9である必要はあるのか? という問題もあります。普通に使っていれば、16:9で十分という話も分かります。この記事の最初の方で、Windowsは今後、Copilotは常時表示になってくるだろうという話をしましたが、当面はCopilotなんか使わないという意見もあるでしょう。
 でも、在宅でも勤務することが多い人であれば、ビデオ会議の画面、Slackなどのビジネスチャット、それ以外のSNSの画面ぐらいは常駐させている人も少なくないはずです。LINEもPC版ありますからね。
 そうなってくると、画面をメインとサブという分け方で使うのではスペースが足りなくなってきます。メインとサブとサブぐらいは必要になってくるのです。
 もちろん、そう考えたとしても、それなら16:9で大きいディスプレイにすればいいという意見もあるでしょう。ただ、16:9の32インチはフレームがない場合でも縦が約40cmで横が約70cm、27インチでも縦が約34cmで横が約60cmとかなりの高さ。32インチ(縦40cm)を実際に机の上に置くと、上から下で視線を移すだけで首を動かす必要が出てくるのです。
 さらに、16:9のディスプレイをさらに大きくしたい時、主要メーカーのラインアップでは、32インチの次はもう43インチです。これは一般的な感覚では大きすぎるサイズです。
 だいぶ文字数が増えてしまったので、整理します。
・今後、PCディスプレイではこれまでよりも幅の広さが求められることが予想できる
・16:9のディスプレイで幅を求めると必要以上に画面サイズが大きくなってしまい、置き場だけではなく、目線の運用的にも厳しくなってしまう
・そこで21:9のディスプレイが求められるが、フラットディスプレイだと左右を見るのが大変
・21:9の大きな湾曲ディスプレイなら1台でまかなえる
 一応、こんな感じになるのですが、整理したところでどうしても不安になるのが、自分は湾曲ディスプレイに慣れるのだろうか? という部分でしょう。こればっかりは、一度自分の環境でしばらく試さないと分かりません。
 そうなると、G34WQiの価格は、ものすごい優位性となってきます。解像度や画質では4Kディスプレイに劣ると思いますし、G34WQiより優れた湾曲ディスプレイも存在しますが、そういったディスプレイはそれなりのお値段です。湾曲ディスプレイを使ってみたい、でも不安もあるという人が、高価な製品を買うのはリスクが大きいです。
 さらに、せっかく湾曲ディスプレイを試すのであれば、今時は34インチ程度は必要です。繰り返しますが、画面比率の問題で、16:9の27インチと21:9の32インチだと、16:9の27インチの方が縦は約1.5cm高いのです。せっかく新しいディスプレイ買ったのに縦方向は小さくなるのって、いやですよね。
 そしておそろしいことに、G34WQiの価格は、他社なら27インチ曲面ゲーミングモニターの価格です。まさに、ビジネス用途で湾曲ディスプレイが使えるかどうかを試すにはもってこいの製品といえます。
 普段は16:9の32インチ4Kディスプレイを使っているのですが、G34WQiの試用を始めて短期間のうちにすっかりこのモニターに慣れてしまい、周辺機器の配置なども合わせ始めた私がここにいます。この製品が発表された時、私は「スペックと価格の設定がうまいな」と感じたのですが、それは間違いではなかったようです。

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