「小さいイヌの方が長生き?」「長生きなネコの品種は?」── 犬1300万匹/猫230万匹を調査した“寿命表”公開

2024年5月20日(月)8時5分 ITmedia NEWS

犬1300万匹/猫230万匹を調査した寿命表、フランスの研究チームが公開

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 フランスのRoyal Caninなどに所属する研究者らが2023年2月に発表した発表した論文「Life expectancy tables for dogs and cats derived from clinical data」は、犬と猫の寿命に関する大規模調査を示した研究報告である。
 米国に1000以上の動物病院を展開するBanfield Pet Hospitalが、2013〜2019年までの7年間に及ぶ犬と猫の医療記録データを用いて、大規模な平均寿命調査を実施した。調査対象となったのは、犬が1329万2929頭、猫が239万78頭である。
 これまでにも犬や猫の平均寿命調査は各国で行われてきたが、ここまで大規模かつ長期間のデータを用いた研究は非常に珍しい。特筆すべきは、犬種・猫種、性別、ボディーコンディションスコア(BCS)別に平均寿命を算出し、それぞれの特徴を明らかにした点である。
 調査の結果、全犬種の平均寿命は12.69歳、混血犬が12.71歳、全猫種が11.18歳、混血猫が11.12歳であった。
 犬種別では、小型犬の平均寿命が最も長く13.53歳、次いでトイ犬(とても小さい犬種)が13.36歳、中型犬が12.70歳、大型犬が11.51歳、超大型犬が9.51歳と、体格が大きくなるほど平均寿命が短くなる傾向が明らかとなった。
 性別による違いも見られ、雌犬の平均寿命は12.76歳、雄犬が12.63歳と、雌の方がわずかに長寿であった。猫では、その差がより顕著で、雌猫が11.68歳、雄猫が10.72歳と、約1歳の開きがあった。
 肥満度合いを示すBCSでは、理想的とされるBCS 3の犬の平均寿命が13.18歳と最も長く、過体重(BCS 4)の13.14歳がそれに続いた。一方、肥満(BCS 5)では11.71歳、低体重(BCS 1)ではわずか1.54歳と、大幅に平均寿命が短くなることが分かった。
 猫でも同様の傾向が見られたが、興味深いことに過体重(BCS 4)の猫の平均寿命が13.67歳と最も長く、理想的(BCS 3)の12.18歳や肥満(BCS 5)の12.56歳を上回った。また、低体重(BCS 1、2)の猫は、年齢に関わらずほぼ一定の短い平均寿命(BCS 1が約1.39歳、BCS 2が約2.49歳)であった。
 調査期間中の推移を見ると、犬猫ともに平均寿命が年々伸びる傾向にあり、13〜18年にかけて全犬種で1.3カ月(0.93%)、全猫種で2.6カ月(2.01%)ずつ増加した。獣医療技術の進歩や、飼い主のペット健康管理意識の高まりが要因と考えられる。
●英国における猫の寿命
 英国における猫の寿命と死亡リスク要因についてを調査した研究も報告されており、7936匹の猫の電子カルテデータを分析した結果を示している。結果内容は、英国の飼い猫の平均寿命は11.74歳であった。
 性別による差異も顕著で、雌猫の平均寿命は12.51歳であるのに対し、雄猫は11.18歳と、雌猫の方が1.33歳長生きであることを示した。また、雑種猫の平均寿命は11.89歳で、純血種の10.41歳よりも1.5歳以上長いことが分かった。
 品種別の分析では、バーミーズとバーマンの平均寿命が14歳を超えて最も長く、次いでシャム、ペルシャ、雑種の順であった。一方、スフィンクスの平均寿命は6.68歳と最も短く、ベンガルの8.51歳がそれに次いだ。スフィンクスは心臓病や遺伝性筋疾患のリスクが高いことが知られており、この結果はそれを裏付けるものである。
 さらに、避妊・去勢をしていない猫は避妊・去勢済みの猫と比べて、3歳までに死亡するオッズが4.29倍高いことを示した。また、純血種の猫は雑種と比べて、3歳までに死亡するオッズが1.83倍高かった。
 Source and Image Credits: Montoya M, Morrison JA, Arrignon F, Spofford N, Charles H, Hours M-A and Biourge V(2023)Life expectancy tables for dogs and cats derived from clinical data. Front. Vet. Sci. 10:1082102. doi: 10.3389/fvets.2023.1082102
 ※ちょっと昔のInnovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。X: @shiropen2

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