血管の老化にあらがうクスリとは?生活習慣病薬、抗がん剤と老化の意外な関係
血管の老化にあらがうクスリとは?生活習慣病薬、抗がん剤と老化の意外な関係
Photo:PIXTA
食事や運動で血管老化にあらがうのもいいが、手っ取り早く治療できないものか。実は、生活習慣病の治療薬の中に、理論的には抗血管老化作用のあるものが幾つかある。特集『血管の老化を防ぐ! 血管強化術』(全8回)は、前半の4回で血管老化と病気の関係について、後半の4回で抗血管老化策について取り上げてきた。最終回では、血管老化にあらがう薬に迫る。(医学ライター 井手ゆきえ)
生活習慣病薬を服用するかいあり抗血管老化に貢献する薬
血管老化にあらがう薬は何か。まずシンプルに高血圧治療そのものが、血管への負担を抑えるという意味で「抗老化」治療である。脂質異常症、糖尿病の治療にも同じことが言える。従って、生活習慣病の治療薬は多かれ少なかれ、血管の抗老化に貢献しているといえる。
降圧剤を例にすると、ACE阻害薬、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)などの一部の薬剤は、血管老化に関与しているとされる「レニン・アンジオテンシン系」の分子をターゲットとしており、血圧を下げる効果だけではなく、老化細胞の減少も動物実験で観察されている。
故にヒトでも、血管の抗老化による心血管疾患の発症予防が期待されているのだ。事実、これらの降圧剤は血管と心臓の老化現象である「慢性心不全」の治療薬としても使われている。
さらに新しい心不全治療薬の中には、NO(一酸化窒素)の作用に代わって、あるいはNOをサポートして働く薬剤もある。これらの薬剤が直接的な抗血管老化作用を持っているのか否か、気になるところだ。(NOについての詳細は本特集#1『認知症にもつながる!?毛細血管が消える「ゴースト血管化」の恐怖』参照)
このほか糖尿病の治療薬として開発されたSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬も、心血管疾患の発症・進行の抑制効果を発揮し、動物実験レベルではあるが寿命を延ばす効果が確認されている。
もちろん現段階では、これらの薬剤が抗血管老化に直接働くとはいえない。しかし、生活習慣病の治療薬が血管老化にも良いと思えば、毎日服用するかいが増すというものだろう。
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