「怖くて立てない」閉山中の富士山で外国人登山客が悲鳴 救助した登山家が軽装備に苦言「危なすぎる」

2024年5月14日(火)19時46分 J-CASTニュース

閉山期間中の富士山の山頂近くで、軽装備のため動けなくなった登山客の若い外国人男性がいて救助したと登山家の女性がX上で報告し、安易な春山などの登山に警鐘を鳴らしている。

9月から翌年7月の山開きまでの閉山期間は登山のリスクも高い。インバウンドの影響なのか、登山客はほとんどが外国人だったという。どんな状況だったのか、この登山家に話を聞いた。

「雪面で滑ったら止まれず助からないかもしれない」

暗くなってきた雪原で、座り込んでいる外国人登山客に、大きなリュックを背負った別の登山客が声をかけている。

背後には、富士山の山頂が映っていた。リュックの登山客はヘルメットをしていたが、外国人はノーヘルだった。

登山家の「まっつん」さん(@red_mattsun)は2024年5月13日、こんな写真をXで投稿し、そのときの様子を説明した。

「山頂から下降中に座り込んでモゾモゾする人影を見つけました」。まっつんさんが近づいて、「大丈夫?」と声をかけると、下山中の外国人は、「怖くて立てない、降りられない」と答えたという。

まっつんさんの投稿やJ-CASTニュースの取材に答えたところによると、動けなくなった外国人を発見したのは、11日の16時15分ごろだった。山梨県側の吉田ルートの山頂から下山し始めて、直線距離で150メートルほどのところで外国人が座り込んでいた。

この日は、午後になって気温が下がり、雪面が固くなり始めていた。外国人は、雪面用にチェーンスパイクを履いていたが、アックス(ピッケル)も持っていなかった。まっつんさんは、春山でも条件次第で全面アイスバーンになるとして、「雪面で滑ったら止まれず助からないかもしれない」とX投稿で漏らした。

まっつんさんは、未踏峰を目指す秋のヒマラヤキャンプに備え、登山隊のメンバー4人で高山トレーニングをしていた。この日は、標高の高い場所で一夜を明かす予定だったが、外国人を救助するために変更を余儀なくされたという。

「外国人はわかったと言って少し落ち込んでいました」

動けなくなった外国人にアックスを貸し、「道も分からない」というので、4人で同行下山した。

外国人は、アックスの先端を雪面に刺してブレーキをかけながら進み、滑り落ちていかないように、まっつんさんら2人でサポートした。8合目ぐらいで傾斜が少し穏やかになると、外国人は立って歩いたが、危なっかしい足取りだったという。外国人は、ヘッデン(ヘッドランプ)も持っていなかったため、結局、そのまま付き添った。

この外国人は、フランス出身で東京に住んでいるというが、日本の山を知らない様子だったという。同行者と2人で富士山に登ったものの、同行者は途中で怖くなって下山していた。しかし、この同行者と連絡がつかず、登山隊の他のメンバー2人が探しながら歩き、7合目の小屋で見つけて合流した。

「独力では日没までに降りる事はできなかったろうし、どうなっていた事か..」。まっつんさんは、外国人の状況について、X投稿でこう振り返った。外国人には、少し厳しく注意したといい、取材にその内容を説明した。

「この時期の富士山は日中に晴れて暖かくなったら雪が柔らかく登りやすいが、午後になって太陽が当たらなくなったり、天気により気温が下がるとアイスバーンになることがあるので、今回のような装備で来てはならない、危なすぎる、ということを何度か話しました。外国人はわかったと言って少し落ち込んでいました」

外国人とその同行者にケガなどはなく、まっつんさんらは、5合目まで一緒に降りて、2人が車に戻るところまで付き添った。

閉山中でも登山客多数で、ほとんどが外国人だった

今回の富士山トレーニングでは、閉山中にもかかわらず、多数の登山客を見かけたと、まっつんさんは取材に明かす。それも、知人の日本人2人と山頂で出会った以外は、ほとんどが外国人だったという。

「他にも装備が不十分な登山者は何組か目につきました。特にフィリピンから来たという2名組の外国人は、上部で滑って転倒し、怖くなって下山してきたと話していました」

「彼らもハイキングシューズにチェーンスパイクを着用していました。フィリピンには冬山などないのかもしれませんが、事故になる前に、引き返してきてくれてよかったなと思いました」

もし外国人登山客らによる遭難や事故が起きるようになると、警察や行政が何らかの対策を迫られる可能性がある。

こうした状況について、まっつんさんは、登山家として、複雑な心境も明かした。

「人命が何よりも優先なのはもちろんですが、雪の時期の富士登山者の事故が増えて規制が強くなったりすると、海外の高所登山を目指す日本のクライマー(登山者)たちにとって、国内唯一の高山トレーニングの場(富士山)が使えなくなくなってしまうかもしれないので、そうならないで欲しいと思っています」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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