【医者が教える】ヨガや太極拳など「負担が少ない運動」をやるべき理由とは?
【医者が教える】ヨガや太極拳など「負担が少ない運動」をやるべき理由とは?
現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。
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ヨガや太極拳はメンタルも整える
運動は単に心拍数を高め、筋肉を鍛えるだけのものではない。
年齢を重ねても可動性を維持し、転倒の防止に不可欠なバランスと柔軟性を高めることも、運動の重要な目標となる。また、運動はメンタルヘルスにも良い効果をもたらす。
医学生だったころの私は燃え尽きていて、できる運動と言えばヨガと太極拳だけだった。
それでも、こうした運動をした後は信じられないほど気分が良かった!
ヨガと太極拳はそれまで経験したなかで最も身体的な負担が軽い運動だったが、とてもポジティブな気分になれた。
「身体化認知理論」がこの効果を説明している。
この理論によれば、私たちの動き方や体形のコントロールの仕方は、顔の表情や身振りとともに気分や認知行動を変える。それらは双方向の関係にある。
私たちの気分が動き方に影響を与えるように、私たちの立ち方や身体の運び方、動き方は気分に影響を与えるのだ。たとえば、ダンスをすると気分が良くなり、前かがみで座ると気分が落ち込むのは、そこに理由があるのだろう。
特定の運動は、心拍数を高めない低エネルギーで負担が軽い運動であったとしても、体内のエネルギーを高める。
東洋と西洋の運動理論の融合という観点から瞑想的運動を分析したある研究は、気功を行うと深いリラックス状態になり、筋緊張のバランスが整い、柔軟性と固有受容感覚(身体が空間のどこにあるかを感じる力)が高まると同時に、脳の可塑性や連動性、血流、(転倒防止に関わる)バランスが向上し、さらには、副交感神経の働き(「安静と消化」モード)が活発になることを立証した。
ヨガ、太極拳、気功といった心と身体にアプローチする「マインドボディエクササイズ」の素晴らしいところは、柔軟性や体力、バランス、血流、内分泌腺の刺激、連動性を向上させ、同時にリラックス反応も引き出す点だ。
気功と太極拳は、呼吸にしっかりと注意を払いながら身体に意識を集中する瞑想的な動きを取り入れているため、呼吸を遅くして、副交感神経の働きを高める。これによって自律神経系のバランスを整える深いリラックス状態が引き出される。
また、多面的動作を行うと、身体は一体的に動き、それが認知機能や脳の可塑性、神経と筋の連動性、注意力、姿勢をコントロールする力が高まる。
この種の瞑想的運動が炎症を抑え、免疫力を高め、DNA修復を促すことを明らかにした研究もある。
ヨガは太極拳や気功と少し異なる。曲げたり捻ったりする動作によって内分泌腺の刺激に特に効果を発揮し、姿勢とバランスを改善し、柔軟性と体力を高める。
だが、最も興味深い効果のひとつは、気分を変えられることかもしれない。
1890年、ウィリアム・ジェームズは、感情が姿勢や身体の状態を左右する場合もあるが、姿勢や身体の状態も感情を左右する(もしくは感情を強める)場合があるという理論を打ち出した。
私たちは幸せだから笑うというだけではなく、笑うと幸せになるのだとジェームズは説明した。ヨガは、思考・感情と身体活動とのこうした双方向関係を促進する。
(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)
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