【インタビュー】『SNS-少女たちの10日間-』監督が語る、子どもたちをネット上の性被害から守るために必要なこと
シネマカフェ2021年4月24日(土)10時0分
スタジオに3つの子ども部屋を用意し、幼く見える顔立ちの3人の18歳以上の女優が「12歳・女子」という設定でSNSのアカウントを開設し「友達募集」をしたところ何が起こるか――。
チェコで行われたそんな“実験”の様子をカメラに収めた衝撃のドキュメンタリー『SNS-少女たちの10日間-』が公開を迎えた。
10日の間に、3人にコンタクトを取り、裸の写真を送らせようとしたり、直接会おうとするなど、卑劣な誘いをかけてきた成人男性は2,458名――。
子どもを持つ多くの親たちを戦慄させ、チェコ警察、さらには国家までをも動かすことになった問題作が日本に上陸する! 公開を前に共同監督のひとりであるヴィート・クルサークがリモートインタビューで本作への思いを語ってくれた。
社会を動かした衝撃のドキュメンタリー
本作の製作にあたり、クルサーク監督と共同監督であるバーラ・ハルポヴァーの2人が、「12歳・女子」を演じる3人の女優と事前に約束したのが以下のルール。
1:自分から連絡しない
2:12歳であることをハッキリと告げる
3:誘惑や挑発をしない
4:(チャット相手からの)露骨な性的指示は断る
5:何度も頼まれた時のみ裸の写真(※映画スタッフが作成した偽の合成写真)を送る
6:こちらから会う約束を持ち掛けない
7:撮影中は現場にいる精神科医や弁護士などに相談する
撮影はカウンセラーや性科学者が同席する中で進められていった。映画はチェコで公開されるやセンセーションを巻き起こした。
「ある種の社会現象とも言える事態を引き起こしました」と語るクルサーク監督。実際、チェコ警察からは映画の内容を児童への性的搾取の犯罪の証拠とするための協力を求められ「いま取材を受けている時点で(※3月下旬)、52人の男性と1人の女性が捜査をウケており、既に8人が裁判で有罪判決を受けました」。
動いたのは警察だけではない。
「映画を見た政治家たちは、サイバー環境における犯罪に対する取り締まりを強化することを決めました。また映画公開後に3つの省庁から連絡があったのですが、そのうちのひとつ、文部省は子どもたちへの性教育のカリキュラムを改正し、小学3年生から性教育を取り入れることを考えているとのことでした」。
少女たちを陥れる卑屈な手口とは
映画を見ると、男たちが画面を通して時に言葉巧みに女性の容姿を称えたり、理解者であるように振る舞いながら、性的に搾取しようとするおぞましい姿が映し出される。映画はチェコで撮影されたが、もちろん同じことは日本でも既に起きている。時にニュースとして報じられることもあるが、それは氷山の一角に過ぎないだろう。
とはいえ、大人たちの多くは、こうした「未成年の少女がチャット相手に裸の写真を送らされた」といった事件の報に接して、こんな疑問を抱くのではないだろうか? なぜ少女たちは、ネットで(大人たちから見て)安易に会ったこともない相手に裸の写真を送ってしまうのか――?
クルサーク監督は本作のための取材を重ねた経験から、少女たちの心理をこう説明する。
「12歳の少女たちは、いわば大人と子どもの“境目”と言える非常にデリケートな時期を生きています。親をはじめ、周りの大人たちは彼女たちに厳しいことを言う存在であり、なかなか対等と言える関係を築くことはできません。そんな時、ネットには親や教師たちと同じような年齢で、自分と対等に接してくれる存在、自分のことを理解してくれているようにふるまう存在がいるわけです。少女たちは、自分を大人として接してくれる存在、優しくしてくれる存在を求めてしまいます。
そうした状況でネットでコンタクトを取ってくる男たちは、まず彼女たちと友達になろうとしてきます。彼女たちのプロフィールはオープンにされていて、それを見れば趣味やペット、好きなものが全てわかります。そうした情報をミラーリングして、彼女たちに話を合わせてくるのです。そうすることで少女たちは徐々に、彼らを“信頼できる存在”と認識していきます。ある時点で彼らがこうした関係を「終わりにしたい」と告げると、少女たちは『関係を維持したい』と願います。そうした少女たちの心理に付け込んで『じゃあ裸の写真を送ってくれるなら…』と要求し、彼女たちもそれに応じてしまうのです」。
子どもたちを大人の歪んだ欲求から守るために
改めていま、クルサーク監督は、子どもたちを大人の歪んだ欲求から守るために必要なこととして「正しい知識を教えること」と「親子の信頼関係を築くこと」の重要性を説く。
「こんな例えがあります。“満員の地下鉄で、スリと遭遇するのを避けることはできないかもしれないが、リュックを開けっ放しにしないことで被害を防ぐことはできる”というものです。ネット環境も同じことが言えます。悪質な行為を行なう者たちを根絶やしにすることよりも、子どもたちが被害者にならないためにネットの正しい使い方を教育すること、家庭で信頼関係を築くことが重要です。
専門家が指摘していますが、13~14歳の思春期の子どもたちは(チャットの)相手のプレッシャーに怯えてしまうものですが、それ以上に彼ら、彼女たちが怯えるのは『もし親にバレてしまったらどうしようか?』ということだと言います。実際、チェコでは昨年、こうしたネット上のやり取りのプレッシャーの末に14人の子どもたちが自殺しています。もし、彼らが親に相談することができていたら、こんな悲劇は起こらなかったのです。『何があっても相談しろ』と言える関係性を築くことが大切なのです」。
チェコで行われたそんな“実験”の様子をカメラに収めた衝撃のドキュメンタリー『SNS-少女たちの10日間-』が公開を迎えた。
10日の間に、3人にコンタクトを取り、裸の写真を送らせようとしたり、直接会おうとするなど、卑劣な誘いをかけてきた成人男性は2,458名――。
子どもを持つ多くの親たちを戦慄させ、チェコ警察、さらには国家までをも動かすことになった問題作が日本に上陸する! 公開を前に共同監督のひとりであるヴィート・クルサークがリモートインタビューで本作への思いを語ってくれた。
社会を動かした衝撃のドキュメンタリー
本作の製作にあたり、クルサーク監督と共同監督であるバーラ・ハルポヴァーの2人が、「12歳・女子」を演じる3人の女優と事前に約束したのが以下のルール。
1:自分から連絡しない
2:12歳であることをハッキリと告げる
3:誘惑や挑発をしない
4:(チャット相手からの)露骨な性的指示は断る
5:何度も頼まれた時のみ裸の写真(※映画スタッフが作成した偽の合成写真)を送る
6:こちらから会う約束を持ち掛けない
7:撮影中は現場にいる精神科医や弁護士などに相談する
撮影はカウンセラーや性科学者が同席する中で進められていった。映画はチェコで公開されるやセンセーションを巻き起こした。
「ある種の社会現象とも言える事態を引き起こしました」と語るクルサーク監督。実際、チェコ警察からは映画の内容を児童への性的搾取の犯罪の証拠とするための協力を求められ「いま取材を受けている時点で(※3月下旬)、52人の男性と1人の女性が捜査をウケており、既に8人が裁判で有罪判決を受けました」。
動いたのは警察だけではない。
「映画を見た政治家たちは、サイバー環境における犯罪に対する取り締まりを強化することを決めました。また映画公開後に3つの省庁から連絡があったのですが、そのうちのひとつ、文部省は子どもたちへの性教育のカリキュラムを改正し、小学3年生から性教育を取り入れることを考えているとのことでした」。
少女たちを陥れる卑屈な手口とは
映画を見ると、男たちが画面を通して時に言葉巧みに女性の容姿を称えたり、理解者であるように振る舞いながら、性的に搾取しようとするおぞましい姿が映し出される。映画はチェコで撮影されたが、もちろん同じことは日本でも既に起きている。時にニュースとして報じられることもあるが、それは氷山の一角に過ぎないだろう。
とはいえ、大人たちの多くは、こうした「未成年の少女がチャット相手に裸の写真を送らされた」といった事件の報に接して、こんな疑問を抱くのではないだろうか? なぜ少女たちは、ネットで(大人たちから見て)安易に会ったこともない相手に裸の写真を送ってしまうのか――?
クルサーク監督は本作のための取材を重ねた経験から、少女たちの心理をこう説明する。
「12歳の少女たちは、いわば大人と子どもの“境目”と言える非常にデリケートな時期を生きています。親をはじめ、周りの大人たちは彼女たちに厳しいことを言う存在であり、なかなか対等と言える関係を築くことはできません。そんな時、ネットには親や教師たちと同じような年齢で、自分と対等に接してくれる存在、自分のことを理解してくれているようにふるまう存在がいるわけです。少女たちは、自分を大人として接してくれる存在、優しくしてくれる存在を求めてしまいます。
そうした状況でネットでコンタクトを取ってくる男たちは、まず彼女たちと友達になろうとしてきます。彼女たちのプロフィールはオープンにされていて、それを見れば趣味やペット、好きなものが全てわかります。そうした情報をミラーリングして、彼女たちに話を合わせてくるのです。そうすることで少女たちは徐々に、彼らを“信頼できる存在”と認識していきます。ある時点で彼らがこうした関係を「終わりにしたい」と告げると、少女たちは『関係を維持したい』と願います。そうした少女たちの心理に付け込んで『じゃあ裸の写真を送ってくれるなら…』と要求し、彼女たちもそれに応じてしまうのです」。
子どもたちを大人の歪んだ欲求から守るために
改めていま、クルサーク監督は、子どもたちを大人の歪んだ欲求から守るために必要なこととして「正しい知識を教えること」と「親子の信頼関係を築くこと」の重要性を説く。
「こんな例えがあります。“満員の地下鉄で、スリと遭遇するのを避けることはできないかもしれないが、リュックを開けっ放しにしないことで被害を防ぐことはできる”というものです。ネット環境も同じことが言えます。悪質な行為を行なう者たちを根絶やしにすることよりも、子どもたちが被害者にならないためにネットの正しい使い方を教育すること、家庭で信頼関係を築くことが重要です。
専門家が指摘していますが、13~14歳の思春期の子どもたちは(チャットの)相手のプレッシャーに怯えてしまうものですが、それ以上に彼ら、彼女たちが怯えるのは『もし親にバレてしまったらどうしようか?』ということだと言います。実際、チェコでは昨年、こうしたネット上のやり取りのプレッシャーの末に14人の子どもたちが自殺しています。もし、彼らが親に相談することができていたら、こんな悲劇は起こらなかったのです。『何があっても相談しろ』と言える関係性を築くことが大切なのです」。
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