『インスペクション』『アシスタント』ほか、新鋭監督が描き出す“社会”に抗う主人公たちの映画
シネマカフェ2023年6月11日(日)16時0分
A24の注目作『インスペクション ここで生きる』は、新鋭監督エレガンス・ブラットンの半生を描いた実話。ゲイであることを理由に母に捨てられ、生きるために海兵隊に志願した青年が直面する、軍という閉鎖社会に吹き荒れる差別と憎悪を描いた監督の長編デビュー作だ。
A24といえば、シャーロット・ウェルズ監督の長編デビュー作にして、世界の映画祭を賑わせた『aftersun/アフターサン』(全国公開中)が日本でもスマッシュヒットを飛ばしているが、ブラットン監督が本作で描き出したのは、自身が直面した困難な社会と、アイデンティティを守り抜く主人公の姿。
特にこの6月は、現代社会の問題をあぶり出し、逆境に立ち向かう主人公たちの力強さを描く作品が目白押し。劇映画の長編デビュー作にこうした題材を選び、作品に落とし込んでいく新進気鋭の監督たちのフレッシュな才能は、いま世界で高く評価されている。
『Rodeo ロデオ』公開中
バイクに跨るためにこの世に生を受けたジュリア(ジュリー・ルドリュー)。短気で独立心の強い彼女は、ある夏の日、ヘルメットを装着せずにアクロバティックな技を操りながら公道を全速力で疾走するバイカーたち、「クロスビトゥーム」と出会う。ある事件をきっかけに、彼らが組織する秘密結社の一員となった彼女は、超男性的な集団の中で自分の存在を証明しようと努力するが、次第にエスカレートする彼らの要求に直面し、コミュニティでの自分の居場所に疑問を持ち始める…。
ローラ・キボラン初監督にして2022年・第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員たちから絶賛され、本作のために特別に設けられたクー・ド・クール・デュ・ジュリー<審査員の心を射抜いた>賞を受賞。超男性的な反社会的アクロバティック集団でのジュリアのヒリヒリとした抗いは、まさに観る者の心を射抜くだろう。
『アシスタント』6月16日公開
名門大学を卒業したジェーンは、映画プロデューサーという夢を抱いて激しい競争を勝ち抜き、有名エンターテインメント企業に就職した。業界の大物である会長のもと、ジュニア・アシスタントとして働き始めたが、そこは華やかさとは無縁の殺風景なオフィス。早朝から深夜まで事務作業に追われる毎日で、あらゆるハラスメントが常態化していた。ある日、会長の許されない行為を知ったジェーンは、この問題に立ち上がることを決意する。
ドキュメンタリー映画作家のキティ・グリーンは、2017年に巻き起こった#Me Too運動を自身初の劇映画の題材を見出し、映画業界だけではない、今日の職場における大きな問題をフィクションの形で掘り下げ、2020年ベルリン国際映画祭パノラマ部門、サンダンス国際映画祭スポットライト部門に正式出品。“わたしは、どうする?”を問いかける、新人アシスタントの決定的な1日を描いた静かな衝撃作。
『インスペクション ここで生きる』8月4日公開
海兵隊に在職中だった20代で初めてカメラを手にし、そこから映像記録担当としてキャリアを始めたブラットン監督の長編デビューにして、彼の体験に基づく実話である本作。社会からも除外され、“透明だと思っていた”自分を癒やすために映画を撮ろうと決意した監督は、「この映画で主人公が感じる欲望、恐れ、そして最終的に抱く目標まで、すべて本物です」と語る。
理不尽な日々に幾度も心が折れそうになりながらも、その都度自らを奮い立たせ、毅然と暴力と憎悪に立ち向かう青年フレンチ。孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の信念は、徐々に周囲の意識を変えていく。
主人公であるエリス・フレンチを演じるのは、俳優、そして歌手としても活動し、2019年のトニー賞では別々のパフォーマンスで2つの部門(演劇主演男優賞/ミュージカル助演男優賞)にノミネートされるという、史上6人目の快挙を成し遂げたジェレミー・ポープ。本作では第80回ゴールデン・グローブ賞で主演男優賞(映画・ドラマ部門)にノミネートされたほか、世界各国で高い評価を受けた。
また、音楽は「21世紀の最重要バンド」と評される「アニマル・コレクティヴ」が担当。逆境に屈せず前を向く主人公フレンチの姿をエモーショナルに彩っている。セクシャリティ、宗教、人種。すべてが検閲・点検=“インスペクション”される場所で、自らのアイデンティティを貫き、そして他者からの理解を諦めずに闘ったある新鋭監督の投影であるフレンチの姿は、観る者の心を震わせるだろう。
『インスペクション ここで生きる』はTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国にて公開。
A24といえば、シャーロット・ウェルズ監督の長編デビュー作にして、世界の映画祭を賑わせた『aftersun/アフターサン』(全国公開中)が日本でもスマッシュヒットを飛ばしているが、ブラットン監督が本作で描き出したのは、自身が直面した困難な社会と、アイデンティティを守り抜く主人公の姿。
特にこの6月は、現代社会の問題をあぶり出し、逆境に立ち向かう主人公たちの力強さを描く作品が目白押し。劇映画の長編デビュー作にこうした題材を選び、作品に落とし込んでいく新進気鋭の監督たちのフレッシュな才能は、いま世界で高く評価されている。
『Rodeo ロデオ』公開中
バイクに跨るためにこの世に生を受けたジュリア(ジュリー・ルドリュー)。短気で独立心の強い彼女は、ある夏の日、ヘルメットを装着せずにアクロバティックな技を操りながら公道を全速力で疾走するバイカーたち、「クロスビトゥーム」と出会う。ある事件をきっかけに、彼らが組織する秘密結社の一員となった彼女は、超男性的な集団の中で自分の存在を証明しようと努力するが、次第にエスカレートする彼らの要求に直面し、コミュニティでの自分の居場所に疑問を持ち始める…。
ローラ・キボラン初監督にして2022年・第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員たちから絶賛され、本作のために特別に設けられたクー・ド・クール・デュ・ジュリー<審査員の心を射抜いた>賞を受賞。超男性的な反社会的アクロバティック集団でのジュリアのヒリヒリとした抗いは、まさに観る者の心を射抜くだろう。
『アシスタント』6月16日公開
名門大学を卒業したジェーンは、映画プロデューサーという夢を抱いて激しい競争を勝ち抜き、有名エンターテインメント企業に就職した。業界の大物である会長のもと、ジュニア・アシスタントとして働き始めたが、そこは華やかさとは無縁の殺風景なオフィス。早朝から深夜まで事務作業に追われる毎日で、あらゆるハラスメントが常態化していた。ある日、会長の許されない行為を知ったジェーンは、この問題に立ち上がることを決意する。
ドキュメンタリー映画作家のキティ・グリーンは、2017年に巻き起こった#Me Too運動を自身初の劇映画の題材を見出し、映画業界だけではない、今日の職場における大きな問題をフィクションの形で掘り下げ、2020年ベルリン国際映画祭パノラマ部門、サンダンス国際映画祭スポットライト部門に正式出品。“わたしは、どうする?”を問いかける、新人アシスタントの決定的な1日を描いた静かな衝撃作。
『インスペクション ここで生きる』8月4日公開
海兵隊に在職中だった20代で初めてカメラを手にし、そこから映像記録担当としてキャリアを始めたブラットン監督の長編デビューにして、彼の体験に基づく実話である本作。社会からも除外され、“透明だと思っていた”自分を癒やすために映画を撮ろうと決意した監督は、「この映画で主人公が感じる欲望、恐れ、そして最終的に抱く目標まで、すべて本物です」と語る。
理不尽な日々に幾度も心が折れそうになりながらも、その都度自らを奮い立たせ、毅然と暴力と憎悪に立ち向かう青年フレンチ。孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の信念は、徐々に周囲の意識を変えていく。
主人公であるエリス・フレンチを演じるのは、俳優、そして歌手としても活動し、2019年のトニー賞では別々のパフォーマンスで2つの部門(演劇主演男優賞/ミュージカル助演男優賞)にノミネートされるという、史上6人目の快挙を成し遂げたジェレミー・ポープ。本作では第80回ゴールデン・グローブ賞で主演男優賞(映画・ドラマ部門)にノミネートされたほか、世界各国で高い評価を受けた。
また、音楽は「21世紀の最重要バンド」と評される「アニマル・コレクティヴ」が担当。逆境に屈せず前を向く主人公フレンチの姿をエモーショナルに彩っている。セクシャリティ、宗教、人種。すべてが検閲・点検=“インスペクション”される場所で、自らのアイデンティティを貫き、そして他者からの理解を諦めずに闘ったある新鋭監督の投影であるフレンチの姿は、観る者の心を震わせるだろう。
『インスペクション ここで生きる』はTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国にて公開。
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