【インタビュー】吉高由里子 2年間の充電期間を経て「やっぱり自分が引きずられるような作品が好き」
シネマカフェ2017年9月22日(金)16時0分
“ユリゴコロ”とは心の拠りどころのこと。人はそれぞれ自分に生き甲斐を与えてくれる拠りどころを持っている。けれど、そのユリゴコロが“人の死を味わうこと”でしか感じられなかったとしたら…。数々の国内ミステリーランキングを賑わせた沼田まほかるのベストセラー・ミステリーの映画化。主演は吉高由里子。彼女に託されたのは、特殊な殺人者であり、悲しみや美しさも表現するヒロイン美紗子だ。
2年間の充電期間を経て、5年ぶりに主演映画に挑む吉高さん。ふんわりとした雰囲気、飾らない人柄の彼女が、初めて殺人者を演じる。
「ごく最近の私しか知らない人にとっては、こういう役もやるんだ、じゃあこんな役もやって欲しい、とかいろいろな声が聞こえてきたらいいですよね。映画デビュー作『紀子の食卓』も衝撃のミステリーなので、こういう系はひさびさです。しかも、殺人者役。これまで演じたことのない役と観たことのない物語、惹かれる要素はたくさんありました」。
どんな準備をしたのか──。
「役づくりといっても、殺人者なので事前に何か準備をすることは難しくて。美紗子が登場するのは過去パートなので、衣装はロングコートやレトロなワンピースなど、昭和チックなものばかりでした。メイクはほとんどしていないように見えるメイクです。生きたいという性(さが)を感じないように仕上げてもらっています」。
衣装やメイクはもちろん美紗子を演じる手助けになったそうだが、彼女の内面、どういう人物であるのかを説明するのは「すごく難しいけれど…」と説明する。
「洋介と出会う前までは、美紗子は愛することもそこから生まれる感情も知らなかった。でも、愛情を知ってしまったことで、怖い、嬉しい、寂しい…生きたいと感じてしまった。生きたいと思う性に戸惑いながら過ごしている女性です。物語としてはミステリーから始まりますが、そこからラブストーリーになっていく。それは(ロマンス的なラブストーリーではなく)、みんなそれぞれ誰かを守ろうとすることで、愛情がこんがらがっていく物語。男女の愛だけではない、家族の愛、血のつながりとか…ですね」。
人の死を味わうことと人から愛されること、どちらにもユリゴコロを感じる美紗子。それだけでも難役だが、美紗子の心情はナレーションとして語れるため、吉高さんのお芝居としてのセリフはかなり少なく、しかも受けの芝居。このキャラクターを演じられる女優はそうそういない、吉高由里子だからこそ成立していると思える圧倒的な演技だ。
「美紗子のセリフは本当に少なくて、感情も表に出さない役でした。相手の感情を避けることをしないし、構え方も知らない、来るもの全部を受ける。こんなに受け身のお芝居は初めてで。普段はどんな役でも(現場を離れると役に)引っぱられることはあまりないタイプだと思っていました。でも、今回はロケーション地が持っている雰囲気なのか、夏の停滞している暑さや台風が近づく重力なのか、何かに引っぱられていました。撮影中は地方に行ったきりで、ホテルと現場の行き来だけ。自宅から現場に通える場合は、家に帰ることでリフレッシュすることができますが、この作品ではそれはできず…でしたが、結果的によかったと思います。とにかく簡単ではない現場でした」。
そのなかでも特に大変だったと記憶しているのは、洋介と別れるダムのシーン。熊澤尚人監督が思い描く理想のダムを見つけるロケーション探しも大変だったそうだが、松山ケンイチさんの演じる洋介の想いと自分自身の想いをぜんぶ受け止るシーンだ。吉高さんは、こうふり返る。
「いままで感じたことのないベクトルから感情を持ってきて演じました。たしか撮影は2日間かけて、30カット近くあって、もう『なんなのっ』って思うくらい長い撮影でした。人って、イライラしたりストレスが溜まって、自分なんて幸せじゃない…と思っているとき、1日3回いいことをしたり、人の役に立つことをすると幸福感に満たされるそうなんですね。これはテレビからの情報で、撮影後に知ったことなので、撮影中はもう、ストレスコントロールで大変でした(笑)。それでも、やっぱりこういうテイストの作品、自分が引きずられるような作品が好きだと思えた。オールアップを迎えて『喜怒哀楽、いろいろな気持ちにさせてもらい、ありがとうございました』って言ったのを覚えています。女優として、もの凄くいい経験をさせてもらいました」。
今年29歳を迎えた吉高さん。「少しは大人になったかな」と、少し前の自分と向き合い見えてきたのは──。
「こう思ってほしい、こう見えてほしい、こういう人間として映りたいとか、そういうことを求めなくなりました。人は、嫌な思いをするから嬉しさを感じるわけだから…そういう物事のつながりが分かってきたのは、大人になったのかな(笑)。年を重ねると、人から怒られることってなくなっていくじゃないですか。そうすると、人って知らず知らずに傲慢になっていくと思うから、そうならないように…。あとは、年を重ねていったとしても、女性らしさも忘れないようにしたいですね」。
2年間の充電期間を経て、5年ぶりに主演映画に挑む吉高さん。ふんわりとした雰囲気、飾らない人柄の彼女が、初めて殺人者を演じる。
「ごく最近の私しか知らない人にとっては、こういう役もやるんだ、じゃあこんな役もやって欲しい、とかいろいろな声が聞こえてきたらいいですよね。映画デビュー作『紀子の食卓』も衝撃のミステリーなので、こういう系はひさびさです。しかも、殺人者役。これまで演じたことのない役と観たことのない物語、惹かれる要素はたくさんありました」。
どんな準備をしたのか──。
「役づくりといっても、殺人者なので事前に何か準備をすることは難しくて。美紗子が登場するのは過去パートなので、衣装はロングコートやレトロなワンピースなど、昭和チックなものばかりでした。メイクはほとんどしていないように見えるメイクです。生きたいという性(さが)を感じないように仕上げてもらっています」。
衣装やメイクはもちろん美紗子を演じる手助けになったそうだが、彼女の内面、どういう人物であるのかを説明するのは「すごく難しいけれど…」と説明する。
「洋介と出会う前までは、美紗子は愛することもそこから生まれる感情も知らなかった。でも、愛情を知ってしまったことで、怖い、嬉しい、寂しい…生きたいと感じてしまった。生きたいと思う性に戸惑いながら過ごしている女性です。物語としてはミステリーから始まりますが、そこからラブストーリーになっていく。それは(ロマンス的なラブストーリーではなく)、みんなそれぞれ誰かを守ろうとすることで、愛情がこんがらがっていく物語。男女の愛だけではない、家族の愛、血のつながりとか…ですね」。
人の死を味わうことと人から愛されること、どちらにもユリゴコロを感じる美紗子。それだけでも難役だが、美紗子の心情はナレーションとして語れるため、吉高さんのお芝居としてのセリフはかなり少なく、しかも受けの芝居。このキャラクターを演じられる女優はそうそういない、吉高由里子だからこそ成立していると思える圧倒的な演技だ。
「美紗子のセリフは本当に少なくて、感情も表に出さない役でした。相手の感情を避けることをしないし、構え方も知らない、来るもの全部を受ける。こんなに受け身のお芝居は初めてで。普段はどんな役でも(現場を離れると役に)引っぱられることはあまりないタイプだと思っていました。でも、今回はロケーション地が持っている雰囲気なのか、夏の停滞している暑さや台風が近づく重力なのか、何かに引っぱられていました。撮影中は地方に行ったきりで、ホテルと現場の行き来だけ。自宅から現場に通える場合は、家に帰ることでリフレッシュすることができますが、この作品ではそれはできず…でしたが、結果的によかったと思います。とにかく簡単ではない現場でした」。
そのなかでも特に大変だったと記憶しているのは、洋介と別れるダムのシーン。熊澤尚人監督が思い描く理想のダムを見つけるロケーション探しも大変だったそうだが、松山ケンイチさんの演じる洋介の想いと自分自身の想いをぜんぶ受け止るシーンだ。吉高さんは、こうふり返る。
「いままで感じたことのないベクトルから感情を持ってきて演じました。たしか撮影は2日間かけて、30カット近くあって、もう『なんなのっ』って思うくらい長い撮影でした。人って、イライラしたりストレスが溜まって、自分なんて幸せじゃない…と思っているとき、1日3回いいことをしたり、人の役に立つことをすると幸福感に満たされるそうなんですね。これはテレビからの情報で、撮影後に知ったことなので、撮影中はもう、ストレスコントロールで大変でした(笑)。それでも、やっぱりこういうテイストの作品、自分が引きずられるような作品が好きだと思えた。オールアップを迎えて『喜怒哀楽、いろいろな気持ちにさせてもらい、ありがとうございました』って言ったのを覚えています。女優として、もの凄くいい経験をさせてもらいました」。
今年29歳を迎えた吉高さん。「少しは大人になったかな」と、少し前の自分と向き合い見えてきたのは──。
「こう思ってほしい、こう見えてほしい、こういう人間として映りたいとか、そういうことを求めなくなりました。人は、嫌な思いをするから嬉しさを感じるわけだから…そういう物事のつながりが分かってきたのは、大人になったのかな(笑)。年を重ねると、人から怒られることってなくなっていくじゃないですか。そうすると、人って知らず知らずに傲慢になっていくと思うから、そうならないように…。あとは、年を重ねていったとしても、女性らしさも忘れないようにしたいですね」。
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