金正恩の「拷問部隊」が旧正月の小遣い稼ぎ
中国との国境に接する両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)では、チャイナテレコムなどの中国キャリアの携帯電話の電波が届き、多くの市民が利用していた。北朝鮮の携帯電話とは異なり、海外との通話も可能で、制限があるとはいえネットにも繋がり、国外の情報を得るには欠かせないからだ。
ところが、昨年末から市内中心部ではつながりにくい状態が続いている。当局が、新たに妨害電波の発信機を導入したからだ。
だが、「上に政策があれば、下には対策がある」というのが北朝鮮の常である。市民は、郊外に行けば携帯電話が通じることを知り、そこまで出かけて使っていた。ところが、それが事実上の「罠」となってしまった。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
「恵山市郊外の一部地域で中国の携帯電話が通じるらしい」という噂が広がりだしたのは、今月10日ごろ。海外からの送金を北朝鮮国内に伝える送金ブローカーなど、携帯電話が欠かせない人々は、噂になった場所に殺到した。
しかし、そこで通話をしようとしたところ、その場で保衛部(秘密警察)に逮捕される事態が相次いでいる。件の噂を聞きつけた保衛部が、そこを狙って集中取り締まりを行っているからだ。情報筋の話では、毎日1人は逮捕されているとのことだ。14日には、中国キャリアの携帯電話を貸し出す電話ブローカーが逮捕された。
電波の届く地域には、私服姿の保衛員が張り込みを行い、携帯ユーザーがその近辺に住む親戚や知人の家に入るのを確認する。何も知らずに通話をしているところに、保衛員が踏み込み現行犯で逮捕するという流れだ。持っていた現金は全額没収された上で、保衛部に連行され、暴力的な取り調べを受けることになる。
送金ブローカーは普段、誰か後をつけていないか、誰かに見られていないか相当神経を使っているが、市内中心部で携帯電話が通じなくなったことで収入が減り、ブローカー同士で先を争って送金案件を引き受けようとする。それでついつい注意を怠り、張り込み中の保衛員に気づかない場合が多いという。
なぜこのような事態になったのか。情報筋は次のように説明した。
「保衛員たちは、旧正月(今月22日)を控え、カネも儲けて成果も挙げようと、ウキウキして取り締まりに向かっている」
中国キャリアの携帯電話を厳重に取り締まるという国の方針を悪用して、金儲けに熱心になっているというのが実情のようだ。逮捕後も、拷問にかけて「ワイロを払えば釈放してやる」と持ちかけ、多額の外貨をむしり取る。保衛員にとっては、一度で二度美味しい取り締まりだろう。
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