欧州から北朝鮮に強制送還された「ある女子高生」が辿る運命
韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使は18日に公開された月刊誌・新東亜(インターネット版)のインタビューで、昨年11月に消息を絶ったチョ・ソンギル駐イタリア北朝鮮代理大使の娘が本国に強制送還されたもようだと伝えた。
チョ氏は現在、妻とともにイタリア情報当局の保護を受けており、米国亡命を希望して待機中だという。太永浩氏によれば、現在高校生の娘は両親とともにイタリアで暮らしていたが、何らかの手違いがあり、いっしょに脱出できなかったもようだ。
韓国在住の他の脱北者はこうした場合の娘の処遇について、「良くて山間僻地への追放。悪ければ政治犯収容所に送られる」と解説している。北朝鮮の収容所は、あらゆる形の人権侵害が横行していることで知られる。
亡命を考える北朝鮮外交官にとって、最大の悩みは子どもをどうするかということだ。北朝鮮当局は外交官が海外に赴任する場合、「人質」として子どもを本国に残していくよう強制する。子どもが複数いる場合は、少なくとも1人を国に置いて行かせる。
2人いる息子を両方とも韓国に連れてくることのできた太永浩氏は、極めて幸運な例だ。それでも英国駐在時は、子どものことで悩みが尽きなかったようだ。英国メディアによれば、次男のグムヒョクさん(19)は、祖国・北朝鮮のイメージとはかけ離れた横顔があった。
好きなミュージシャンはリンキン・パークとエミネム。好きなアニメは「ドラゴンボールGT」で、趣味はゲームとネットサーフィン。13歳の頃からフェイスブックに親しんでいたという。
北朝鮮の体制を知る人ならば、父親が本国からの帰国命令に従った場合のグムヒョクさんの運命を考えたとき、背筋に冷たいものを感じずにはいられない。
太永浩氏の英国暮らしは10年に及び、息子たちも当然、資本主義社会の影響を強く受けた。本国に連れ帰っても、息子たちが適応できるはずがない――そう考えたことが、太永浩氏の亡命の動機になったとも伝えられる。
一方、太永浩氏は別のインタビューで、イタリアが北朝鮮指導層のぜいたく品を密輸するルートの中のひとつだったと指摘し、「2006年から2009年までイタリアで3年間研修を経たチョ・ソンギル氏は、密輸ルートに関わっていた可能性が大きい」とも話している。
北朝鮮へのぜいたく品の輸出は、国連安全保障理事会の制裁決議によって禁じられているが、英紙デイリー・メールは2017年4月、金正恩氏が「喜び組」のために、多額の金を費やして「セクシーアンダーウェア」を輸入していると報じたことがある。
また、「走り屋」として知られる金正恩党委員長は、制裁の監視の目をかいくぐり、高級外車を次々と入手している。
チョ・ソンギル氏がそのような「極秘情報」に触れていたとしたら、娘に対する監視や処罰も厳しいものになる可能性がある。
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