北朝鮮「虐殺された芸術団」の美人歌手が生きて帰って来た
2015年3月、北朝鮮の芸術関係者を震撼させる事件が起こった。金正恩党委員長の夫人である李雪主(リ・ソルチュ)氏も所属していた銀河水管弦楽団の複数のメンバーが処刑されたのだ。銀河水管弦楽団は、金正日総書記によって2009年に創設され2012年まで精力的に公演活動を行っていたが、2013年に解散させられていた。処刑は解散から2年後の2015年に行われた。同楽団のメンバー4人は、裸で立たされた上で、遺体が原形をとどめなくなるまで機関銃で乱射されるという実に残忍な方法で処刑された。
解散、そして複数のメンバーが処刑される憂き目にあった銀河水管弦楽団だが、一部メンバーが復帰したようだ。
先月、北朝鮮の友好芸術団が中国を訪問し、27日から28日にかけて北京の国家大劇院で公演した。韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使はこの公演で、銀河水管弦楽団に所属していた女性歌手のソ・ウニャン氏とファン・ウンミ氏の姿が確認されたと自身のブログで述べた。
ソ・ウニャン氏、ファン・ウンミ氏は銀河水管弦楽団を代表する歌手だったが、確かに2013年の解散以降、表舞台から消えていた。太氏によると、2人は処罰を免れて芸術団と音楽大学の教員などを務めていたという。今回の公演で確認されたことから2人は表舞台に復帰し、さらに「銀河水楽団の他の俳優らも音楽大学や2部類芸術団から1部類芸術団に復帰した可能性が高い」と太氏は分析する。
ちなみに、中国に派遣された友好芸術団の団長である玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏は、北朝鮮の朝鮮中央テレビで朝鮮労働党の副部長と紹介された。副部長とは、次官級に相当するだけに、玄氏はもはや金正恩氏の側近中の側近といってもいいだろう。
金正恩氏の実妹である金与正(キム・ヨジョン)氏が朝鮮労働党第1副部長として、公私共々金正恩氏を支えているように、玄氏も元芸術家として重要な役割を担っているようだ。
存在感を高める玄氏や、復帰したソ・ウニャン氏、ファン・ウンミ氏のように安泰な人生を歩む芸術家がいる一方で、文字通り「血の雨」を浴びながら葬り去られた芸術家もいる。
銀河水管弦楽団のコンサートマスターだったムン・ギョンジン氏だ。ムン氏はモスクワにも留学し、ハンガリーのカネッティ国際ヴァイオリンコンクールで優勝するなど、華々しい経歴の持ち主だった。彼の才能にほれ込んだ金正日総書記は、1億7千万円相当の1716年製ストラディバリウスを購入し貸与したと言われている。しかし、金正日氏が愛し育てた素晴らしいヴァイオリニストを、息子の金正恩氏は容赦なく処刑した。
昨年の米朝首脳会談や南北会談を通じて、金正恩氏は「開かれた指導者」をアピールしている。しかし最高指導者になって以後、気に入らない幹部や芸術家をはじめ多くの国民を処刑した事実は消し去ることはできない。
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