北朝鮮「日本の核武装化こそ問題」主張でドツボにはまる
北朝鮮の金正恩党委員長とトランプ米大統領とは28日、ベトナムの首都ハノイで2日目の首脳会談を行ったが、非核化の道筋で合意に至ることなく、日程を繰り上げて終了した。
独裁国家と民主主義国家が、信頼関係を築くことの難しさを示した事例と言える。両首脳が友好関係を強調しはいるが、核以外でも人権問題などで火種は残り、しょせんは水と油なのだ。
軍隊が虐殺
しかしどうやら、金正恩氏はその重大さに気付いていない。そのことは、北朝鮮が首脳会談を狙いすまして繰り出した、日本非難の論調にも見て取れる。
朝鮮労働党機関紙の労働新聞は23日、「日本の核武装化を警戒すべき」とする論評を掲載した。論評は「日本執権者の大多数が核野望を実現するためにやっきになってきた」「日本が核武装化に必死になって執着するのは安全のためではなく、敗北の復しゅうをするためである」などと主張している。
何を言っているのか、と笑うのは容易いが、ここは敢えて、核を巡る北朝鮮と日本の違いを考えてみたい。
そもそも何故、北朝鮮は国連制裁をものともせずに核開発を強行できたのか。その最大の理由こそ、恐怖政治で守られた独裁体制にある。
かつて中曽根康弘元首相は防衛庁長官在任時、日本の核武装の可能性について極秘裏に調べさせた。その結論は、「技術的には可能だが、国土の狭い日本には核実験場がないのでムリ」というものだったという。
日本が狭いというなら北朝鮮はもっと狭いが、言論の自由がないので、住民の反対運動など起きようもない。そんなことをすれば、軍隊に虐殺されるか、政治犯収容所で拷問され処刑されてしまう。
国連制裁をもたらすような無謀な政権は、民主主義社会でならば巨大なデモを呼び起こし、すぐに倒されてしまう。
そのような合理的で透明性のある民主主義が成立してあるからこそ、日本や米国のような国々は相互に信頼し、それがまた、核武装のような暴走への歯止めにもなるのだ。
そのような現実を理解できず、自分の核を棚に上げて他人に言いがかりをつけていては、「やっぱり民主主義のない北朝鮮の非核化はムリだ」との世論も出てくるはずだ。北朝鮮の日本に対する無謀な言いがかりは、いずれ墓穴を掘る結果につながりかねないのだ。
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