発熱症状を隠した男性を処刑…北朝鮮「新型コロナ」対策の過激度
北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)で先月中旬、50代男性の密輸業者が銃殺刑となる事件があったと、デイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。
男性は密輸のため中国に渡り、現地で発熱の症状が出たものの、帰国後にこれを隠していたことがバレたのだという。
北朝鮮は新型コロナウイルスの侵入を防ぐため、早い段階で国境を封鎖するなど、防疫措置に全力を挙げている。医療体制の脆弱な北朝鮮にとって、新型コロナウイルスの蔓延は体制不安につながりかねない問題だ。すなわち、防疫規則を破る者は危険分子とみなされ、治安維持のため極端な重罰が適用されているのだ。
情報筋によれば、男性は1月初め、密輸のために中国に渡った。発熱するなど体調不良を認識したが、現地では診断を受けられず、密かに北朝鮮へと戻った。そこで、新型コロナウイルスを巡ってただならぬ空気が漂っているのを感じ、身の危険を覚えてしばらく隠れて過ごしていたという。
北朝鮮当局は新型コロナウイルスの侵入を防止するため、1月末には国境を閉ざし、外国人の入国を禁止。海外からの帰国者に対しても徹底的な検疫を行ってきた。
この男性も、自ら申し出て検疫を受けていれば、死刑にまではならなかったかもしれない。調査を受けて密輸の事実が発覚しても、その部分についてはワイロでもみ消せる可能性もあった。
しかし結局、男性は近所の住民の通報により道保衛部(秘密警察)に逮捕され、「祖国反逆罪」により銃殺された。
北朝鮮の刑法第63条に定められた祖国反逆罪は、国家を裏切って外国に逃亡したり、内通したり、秘密を渡したりした場合に適用され、5年以上の労働教化刑(懲役)を受けることになっている。罪状が重い場合には無期刑や死刑、財産没収も可能とする付則もある。
このような規定に比べても、密出国や防疫規則違反で死刑にするのは、かなりやり過ぎに思える。
しかし北朝鮮当局にとって、体制の安寧は他のすべてに優先する課題だ。そのためには、法の拡大解釈など屁でもないだろう。ただ、このような強硬すぎる姿勢には、この男性と同じような経緯で体調不良に至った人々が、当局に名乗り出るのを困難にする逆効果を生むリスクもある。
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