中国に派遣された北朝鮮の女性労働者が相次いで自殺
国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議をかいくぐり、中国に派遣されている北朝鮮の女性労働者。様々な人権侵害にさらされていると指摘されているが、自ら命を絶つ者が相次ぎ、現地に動揺が広がっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
遼寧省丹東の朝鮮族情報筋は、郊外の東港の縫製工場で北朝鮮の女性労働者2人が自ら命を絶つ事件が起きたと伝えた。
情報筋は、北朝鮮労働者の同僚の機械修理工から聞いた話として、26歳の北朝鮮出身の女性労働者Aさんが旧正月の前日(1月31日)の夜、寮のトイレで自殺を図っているのを翌日になって同僚に発見された。
Aさんは、1500ドル(約17万3000円)もの莫大な額の外貨をヤミ金業者から借りて、派遣会社の幹部にワイロとして手渡し、コロナ前に中国に労働者としてやって来た。
当初は2000元(約3万7000円)の月給がもらえるとの契約を交わしたが、実際にもらえたのは300元(約5500円)ほど。残りは管理者が、平壌市1万世帯住宅建設の費用としてピンはねしたのだという。労働者が抗議、通報しても、彼女らの給料をピンはねして国家建設に多くの上納金を支払った管理者のほうが立場が強く、結局黙らざるを得ない状況だったという。
一般的に北朝鮮のヤミ金から1700ドルを借りた場合、月々の利子は70ドル(約8100円)から100ドル(約1万1600円)になる。これを帰国時にまとめて渡される給料から支払うのだが、300元の月給では到底返しきれない。
やがて、新型コロナウイルスの世界的大流行が始まり、北朝鮮への帰国ができなくなってしまった。北朝鮮に残してきた両親は、借金の催促に苦しめられている。Aさんは、そんな八方塞がりの状況に絶望して、自ら命を絶ったものと思われる。
派遣会社の幹部は、責任追及を恐れて労働者にかん口令を敷いた上で、Aさんは持病で亡くなったと当局に報告、遺体を火葬して鴨緑江に散骨してしまった。
そもそも北朝鮮で火葬は忌み嫌われる。海外にいる場合は致し方なく火葬した上で、遺骨は家族に手渡すのが通常の流れだが、それを無視しての散骨である。都合の悪いことを隠蔽しようとする姿勢が露骨に見て取れる。
情報筋は、北朝鮮労働者の置かれた環境が2〜3年前に比べて非常に劣悪になったとして、1日12時間の長時間労働に、栄養失調、様々な病気、ホームシックなどで心身を病む人が多いと述べた。
別の情報筋は、同じ東港の衣類工場に派遣されていた北朝鮮女性労働者Bさん(27歳)が、マンションで自ら命を絶っていたのが、死後しばらく経ってから発見されたと伝えた。派遣会社は、Bさんが過失で死亡したと当局に報告し、それを知った同僚は激しく憤っているという。
Bさんは、北朝鮮に婚約相手を残し、結婚資金を稼ぐために中国にやって来た。ところが、コロナ鎖国で帰国できなくなってしまった。彼女は管理者に帰国させてほしいと何度も懇願したものの、管理者は「外貨稼ぎが愛国」だとして、同僚らの前で激しく罵った。
腰を悪くして、その治療費でわずかばかりの月給を使い果たし、帰国もできない状況に絶望したBさんは、結局命を絶ってしまった。
派遣会社は、Bさんが過失事故で死亡したと当局に報告し、遺体を火葬し、鴨緑江に散骨してしまった。この措置を知った同僚は激しく憤り、その様子を見ていた中国人労働者も、彼女の悲惨な最期に胸を痛め、怒りをあらわにしているとのことだ。
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