「山火事防止」が利権に化ける北朝鮮の森林保護策
北朝鮮で「人に知られず実は金持ち」と呼ばれる職業がある。山林保護員だ。文字通り、山林を保護する役割を担っており、一見して利権とは何の関係もないように見える。しかし、ありとあらゆる権限がカネを生み出す源泉となる北朝鮮ならではの現象が、山奥の村で起きている。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
今月6日、当局から「山林保護員の役割を高め、山火事を防止することについて」という指示が下された。降水量が少なく、強風の吹くこの季節は山火事が多発する。1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」に際して復活した焼畑農業はもちろんのこと、山菜やキノコ、木の実を取ったり、薪を拾ったりするために山に入った人の喫煙や煮炊きから火が燃え広がったりと、様々な事例が考えられる。
北朝鮮は近年、かなり強引な手法を動員して植林事業を進め、減少続きだった山林がようやく増加に転じた。そんな成果も、一度の山火事でダメになってしまう。
今回の指示は、そんな事態を防ぐために出されたと思われる。詳細な内容は伝えられていないが、山林保護員にとっては決して悪い話ではないだろう。
彼らは、管轄区域をあたかも自分の所有であるかのように振る舞い、村人から入山料を取っている。1人あたり5000北朝鮮ウォン(約90円)、または酒やタバコだ。村人の生活は、山に入って薪を切り出さなければ成り立たないことから、黙っていてもワイロが転がり込んでくることになる。
ただ、薪の切り出しを認めることは、金正恩総書記が進める国土の樹林化・原林化に反する行為。山奥とあって、監視の目が行き届かないとはいえども、最悪の場合、国の政策に背く反革命分子の烙印を押され、管理所(政治犯収容所)送りになりかねない行為だ。
昨今、収賄に対する締め付けが強化されている影響か、ワイロの相場は上昇傾向にある。
道内の三水(サムス)郡に住むキムさんは、山林保護員にワイロを掴ませ、山で薪を切り出して生計を立ててきたが、最近になって要求されるワイロの額が3倍になり、山に入れなくなってしまったという。
一方で、薪商人と最初から組んで、利益を山分けする条件で入山を認める山林保護員もいると、情報筋は伝えている。
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