北朝鮮が兵役延長「世界一長い10年」に若者らが絶望
米中央情報局(CIA)が21日に公開した「ザ・ワールド・ファクトブック」で、北朝鮮の兵役期間について男性で最長10年、女性は最長8年に達するとした。昨年のファクトブックでは男性が7~8年となっており、これに比べると2~3年延びたことになる。
これは、もともと男性は9〜10年、女性は6〜7年だったものが、2021年にいったん短縮され、再延長された形となる。ちなみに、10年もの兵役は世界一の長さだ。
もっとも、兵役の短縮後も服務期間を終えた若者を故郷へ帰さず、農村や炭鉱に「集団配置」してこき使っていた。そして再延長された今後も、後半の3年間は農場で働かされるという。
ことの経緯について、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が詳しく伝えている。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋がRFAに伝えたところによると、国防省は最近、各道の軍事動員部に今年改定された軍服務規定を下した。そこには、今年兵役に就くすべての者は、現行より3年増えた10年または11年の服務となると明記されていた。
今後は、7年から8年を軍部隊で勤務し、残りの3年は農場で仕事をすることになる。つまり、上述の「集団配置」を兵役の期間に組み込んだ形だ。女性の場合、5年の軍部隊での勤務の後、3年間の農村生活が強いられる。
北朝鮮当局は集団配置以外にも、都市部の若者を働き手が不足している農村や炭鉱に送り込む「嘆願事業」を行っている。しかし、ビジネスチャンスの多い都市部から、一生貧困から逃れられない農村や炭鉱に縛り付けられることを嫌い、ワイロを使って対象から抜いてもらったり、逃亡したりするなど、様々な問題が生じていた。
軍では栄養失調にかかるほどの食糧事情の悪さに耐えかね、脱走兵が続出している。
とはいうものの、部隊を丸ごと地方に送り込めば統率は民間人よりもきく。それだけあって、兵役の再延長は労働力不足の解消に役立つという考えに基づいているようだ。
ただ、突如として兵役を3年も伸ばされた入隊予定者やその家族からは、強い不満の声が上がっている。
「黄金のように大切な青春時代を男性は10年から11年、女性は8年の犠牲を強いられるなんて、こんな奴隷制度が地球上のどこにあるのか」(情報筋)
また、両江道(リャンガンド)の情報筋によると、兵役が再び3年間延長されたことで、入隊対象年齢の若者の間では、軍を避けようとする風潮がさらに強まっている。もともと、高等中学校(高校)卒業生の10%から15%が推薦を受けて大学に進学する。こうすることで兵役が免除されるが、エリート養成機関の第一高級中学校を除いては、大学推薦を制限する措置を取った。
多くの人々は、「7年でも十分に長いのに、さらに3年働けだなんて、こんな兵役制度では希望がない」などと、兵役延長に激しい怒りを示しているという。また、今年入隊する人のみならず、今年除隊する人も、また現在兵役中の人も一律に兵役が急に延長され、絶望しているという。特に最後の3年は農村で仕事をしろ、というところから、当局の思惑が透けて見えるからだろう。
「除隊を控えた20代後半の若い兵士たちが、除隊前に農村に送り込まれ、農村の女性と結婚して家庭を持てばそこに定着して、農村人口が増えるだろう」(情報筋)
北朝鮮の人口は公称より500万人ほど少ないとの説がある。また、先の見えない貧困から抜け出すために、農村を捨てて都会に向かう農民も少なくない。農業機械化が遅れていることもあり、人手不足は収穫減少につながるのだ。
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