リウマチ薬として覚せい剤使用の北朝鮮女性を逮捕
北朝鮮で蔓延する覚せい剤。当局はこれまで、拷問や公開処刑など強硬な手段を駆使し、覚せい剤乱用の抑え込みを図ってきたが、根絶には程遠いのが現状だ。
根絶を妨げている原因の一つが、医薬品の不足だ。他の国なら簡単に手に入る薬ですら入手できず、手っ取り早い代用品として覚せい剤が使われてしまっている。北朝鮮の北東部、咸鏡北道(ハムギョンブクト)では、抗リウマチ薬の代用として覚せい剤を使っていた女性が逮捕された。
デイリーNKの内部情報筋によると、逮捕されたのは、清津市の水南区域で金属を扱う商売をしていた女性だ。女性は数年前に関節リウマチを発症、西洋医学の薬、漢方薬などを服用していたが、一向に良くならないため、「オルム」、つまり覚せい剤に手を出してしまった。
覚せい剤の成分であるメタンフェタミンは、強い鎮痛作用があるが、あまりにも弊害が深刻で禁止されたのは周知のとおりだ。しかし、北朝鮮では「薬の代用」「万病に効く薬」として長年扱われ、市場で1グラム1万5000北朝鮮ウォン(約180円)で購入できる。
関節リウマチは、免疫システムの異常で自分の体、中でも関節を攻撃するという自己免疫疾患だ。治療するには、抗リウマチ薬と非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を服用する。後者は、日本や韓国なら処方箋なしで薬局で購入できるありふれた薬だが、北朝鮮ではそうはいかない。
「無償医療」を誇る北朝鮮だが、実際は病院に薬はなく、市場で購入して服用する。医薬品は不足しているのに、覚せい剤は売られているという状況だ。
女性を逮捕したグルパ(取り締まり班)は、家宅捜索の上、女性を取り調べて販売ネットワークなどの解明を目論んだが、女性が痛みのあまり悲鳴を上げて発作を起こした。取調官は女性に暴力をふるって押さえつけたが、それでも悲鳴と発作は収まらず、取り調べが困難な状況だ。
情報筋は司法機関関係者の話として、女性は長期間覚せい剤を使用してきたため、重罪は免れないが、起訴に持ち込むための取り調べすらできない状態で処置に困っているとのことだ。
金正恩党委員長を悩ませ続ける覚せい剤汚染だが、その元凶は父親の金正日総書記だ。
資金確保のために大学教授や国営製薬工場に製造させた覚せい剤を輸出させたが、横流しにより国内にも流通するようになった。おりしも当時は大飢饉「苦難の行軍」の真っ只中。人々は生き抜くために覚せい剤の密売を始めた。やがて北朝鮮には、覚せい剤中毒者があふれかえるようになったのだ。
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