北朝鮮で「日本製の便器」が人気を呼ぶ独特の理由
日本政府は2006年、対北朝鮮独自制裁を始め、日本と北朝鮮を行き来していた貨客船万景峰(マンギョンボン)号の日本入港を禁止した。2009年からは、北朝鮮向けのすべての輸出を禁止する追加制裁を実施した。
かつて北朝鮮で高級品と言えば日本製だったが、制裁により輸入ができなくなったことや、韓国製やヨーロッパ製に取って代わられた。しかし、かつてほどではないにせよ日本製の人気は高い。
脱北者で韓国紙・東亜日報の記者であるチュ・ソンハ氏の著書『平壌資本主義百科全書』には、こんなくだりが登場する。
日本のヤマハピアノが2万ドル、中古なら7〜8000ドルです。家具もすべて日本製を最高級品扱いです。韓流なんて知りません。もちろんテレビはサムスンとLGが最高級品ですが(中略)炊飯器も韓国製が高級品ですが、それ以外は日本製が最高です。
一般的には韓国製が人気でも、富裕層の間では依然として日本製が最も人気が高いのだ。そんな中、平壌で需要が急激に高まっているのは日本製の便器、洗面台、シャワー、便器などの衛生陶器だ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
現地の情報筋によると、平壌では最近、マンションに備え付けられていた北朝鮮製や中国製の衛生陶器を取り外し、日本製に取り替える人が増えている。中区域の高級マンションに住む幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)の中には、温水洗浄便座まで取り寄せる人もいる。
金正恩党委員長は、普通のトイレを使えないことから、専用車両に特殊な装備を積んでいると言われるが、幹部やトンジュの間で日本製の便器に人気が集まるのは何故なのだろうか。
「日本製は耐久性が高くデザインも高級、不安定な電圧でも故障しない。平壌の人たちが考える一番のメリットは電気使用量が目に見えて少ない点だ」(情報筋)
幾分改善としたとは言え、電力供給は未だ不安定な状態でソーラーパネル発電機に頼らざるを得ないが、発電量が充分とは言えないため省エネは欠かせない。そこに加えて昨年から平壌市に適用されている電気代の累進制で、経済的負担が大きくなったことも大きい。
かつての北朝鮮では、電気代はいくら使っても1円に満たない激安料金だったが、昨年あたりから電気メーターの設置を進め、使用量に合わせて支払う仕組みに移行しつつある。それに伴い、電気代は290倍から2900倍の大幅値上げとなった。富裕層と言えども、電気代は気になるようだ。
また、大量の電気を使用して裕福な暮らしをしていることがバレるのを恐れている可能性もあるだろう。金持ちであることを自慢すれば、当局に目をつけられかねないからだ。
日本製の衛生陶器の急激な人気上昇に伴い、各貿易会社は商品を中国から取り寄せ、平壌市内の商店で販売している。ちなみに日本メーカーは中国に工場を持ち製造、販売しているが、北朝鮮に輸入されるものが日本製か中国製かについて情報筋は言及していない。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、金正恩党委員長が輸入病(何でもかんでも輸入に頼る風潮)の根絶と国産品の愛用を何度も強調しているが、平壌在住の幹部の家には韓国製、ドイツ製、日本製の家電製品があるのは当たり前だ。最近では、外国製のベッドを専門に扱う貿易会社も現れたという。
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