「戦争になったら最初に撃つ」ロシア在住の北朝鮮男性たちの告白
ロシアに派遣されて働く北朝鮮労働者の中で、脱北を考える人が増えているという。
北朝鮮は2020年1月、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために国境を封鎖し、自国民にすら帰国を許さない措置を取った。労働者は3年半以上もロシア国内で足止めされていたが、当局は昨年11月、健康を害して働けない者は順次帰国させよとの指示を下した。
ところが今年1月中旬になって、当局は突如としてその方針を翻した。帰国を希望する者があまりにも多く、「派遣した労働者から搾取して外貨稼ぎをする」というビジネスモデルに赤信号が灯りそうになったためと見られる。
デイリーNK(韓国語版)は、ロシア在住の北朝鮮労働者に対して、情報提供を求めるバナー広告を表示しているが、それを見たロシア在住の北朝鮮男性、Aさんから情報が寄せられた。
Aさんによれば、現在も帰国を果たす労働者は存在するが、その多くは労働者派遣に関わっている北朝鮮の貿易会社や建設会社の社長、朝鮮労働党委員会の書記らにワイロを渡し「健康に問題がある」ことにしてもらっているのだという。
長年家族と離れ離れにされ、帰国のその日を指折り数えつつ待っている他の労働者にとって、これほど腹立たしいことはないだろう。幹部らは、本当に健康を害して働けない人にも「計画金(ノルマ)は法律だ」と言い放ち、毎月650ドル(約9万8700円)を取り立てている。
「(病気になった)労働者たちは当初は仕事を休むが、4カ月もすると、1年分の貯えのほとんどを(上納金やワイロとして)搾取されるので、病気を押して働かざるを得ない」(Aさん)
実は、北朝鮮当局が毎月上納を求めている額は200ドル(約3万400円)なのだが、それが3倍以上に膨れ上がっていることも、労働者たちの不満の原因だ。社長や党書記が居住費、会社運営費などの名目で額を勝手に釣り上げ、そうして得たカネで高級車を乗り回したり、自宅を補修したりと、私的に流用しているという。
労働者が問題を指摘しようものなら「党の方針」だと言い繕い、上層部に問題を持ち込もうとすれば、「やれるものならやってみろ」「お前が損をするだけ」と半ば脅迫される。そんな幹部に対する労働者の不満は非常に大きく、こんな言葉すら飛び交う状況だ。
「幹部はほとんど強盗だ」
「戦争になったら(奴らからまず)銃で撃ち殺してやる」
中間幹部も上層部も全員がグルになっており、たとえ労働者の信訴(告発)が聞き入れられ検閲(監査)が行われたとしても、カネでいくらでももみ消すことが可能なので、やりたい放題のようだ。結局、損をするのは告発者の方だ。
帰国もできず、搾取されてばかりの労働者たちが考えるのは「脱北」だ。
「祖国を離れる時には徹底的に準備された(徹底した思想教育を受けた)人たちだったが、こんな経験をすると、さすがに変わってしまう。社長や党書記の汚いやり方のせいで、その道(脱北)を行くのだ」(Aさん)
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