「河原に引き出され公開処刑」北朝鮮”20代女性”たちの受難
2020年12月に制定された北朝鮮の反動思想文化排撃法。主に韓流の流入阻止を目的に制定された法律だ。デイリーNKが昨年入手した説明資料によると、南朝鮮(韓国)の映画、録画物、編集物、図書、歌、絵、写真などを見たり聞いたり、流入、流布させた者には5年から15年の労働教化刑(懲役刑)に処すと同法27条で定められている。
しかし、恣意的な理由で量刑がころころ変わるのが、北朝鮮式の法治主義。この法律に違反した容疑で逮捕、起訴された女性に対して最近、15年を超える判決が下された。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
道内の价川(ケチョン)市で先月初旬、20代女性のチェさんが82連合指揮部に逮捕された。容疑は韓流ドラマ・映画などが保存されたUSBメモリやSDカードを数年間に渡り、20ドル(約2600円)から70ドル(約9130円)で売りさばき、これらを誕生日を迎えた友人などに視聴させていたというものだ。ちなみに82連合指揮部とは、主に韓流の視聴、流通を取り締まる組織だ。
ところが、逮捕されたタイミングが悪かった。北朝鮮当局は政治的に重要な時期に事件や事故が発生することいっさい許容しない。先月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)110周年の直前に違法行為を働いたということで、最高刑が15年のところを20年の宣告を受けてしまったのだ。
これが法律に基づいた判決なのかは不明だが、恣意的な法運用がなされる北朝鮮では特に珍しいことではなく、死刑にならなかっただけマシと言える。実際、今年1月には同じく韓流コンテンツを密売していた別の20代女性が、河原に引き出され公開処刑されている。
もっとも、北朝鮮の教化所(刑務所)は暴力が横行し、衛生・栄養状態も極めて悪い。教化所幹部からワイロと引き換えに、減刑や強制労働の免除などを得たとしても、生きて出所できるかは非常に微妙なところだ。
ちなみに、今回の事件では逮捕から取り締まり、裁判までわずか10日で行われた。通常、数ヶ月かかるのと比べると非常に迅速な処理だ。これについて情報筋は、「若者に対する思想教養事業が強化されている状況での摘発で、韓流を含めた非社会主義、反社会主義の『殲滅戦』遂行の意思を強く見せつける意図があった」と見ている。
チェさんの一件は、取り締まりが強化される中でも、韓流ソフトを購入、視聴していた人々にとって非常にショッキングだったようで、多少は自重するだろうと情報筋は見ている。
これだけ強力な取り締まりが1年以上行われていても、韓流視聴をやめようとしない人が数多く存在したことは、当局が「殲滅戦」をいかに繰り広げようとも、ほとぼりが冷めれば、また元の木阿弥になるであろうことを示している。
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