コロナ発生の北朝鮮、平壌にも隔離施設を新設
北朝鮮当局は昨年8月、保健省と首都・平壌を除く各地域の人民委員会(道庁、市役所)に対し、伝染病専門隔離施設を建設するための事前事業に着手せよとの指示を下した。これに基づき、平壌を除く13の道と直轄市に、従前の臨時施設に変わって、専用の隔離施設が建設された。
平壌にだけ施設がないのは、「革命の首都である平壌に、そんな施設を置くわけにはいかない」ということに加え、金正恩総書記を新型コロナウイルスにさらすリスクを最小化するという理由がある。今まで、平壌で起きたコロナ集団感染を疑わせる事態では、患者は市外の隔離施設に移送されている。
しかし、12日の新型コロナウイルス感染者発生の発表後に、平壌にも隔離施設が建設されたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
設置されたのは市内南西の楽浪(ランラン)区域と、北東の恩情(ウンジョン)区域で、いずれも中心部からはかなりの距離がある。これは、当局の「48時間以内に隔離施設を完成させよ」との指示に基づくもので、建物はプレハブと思われる。
今まで、平壌で発生した発熱患者は、平安南道(ピョンアンナムド)安州(アンジュ)にある施設で隔離を行っていたが、新たな発熱患者は安州ではなく市内の施設に送られているとのことだ。
また、オミクロン株は従来の変異株と比べ死亡率が低いことは北朝鮮でも知られており、オミクロン感染が確定した患者に限って施設に移送し、その家族は、玄関扉に「隔離」と張り紙をした上で、封印する形で隔離を行っている。
さて、今まで何があっても、国内でのコロナ感染を認めようとしなかった北朝鮮が、突如として感染者発生を公式発表したことに対して、住民の間では多少の混乱があるようだ。
情報筋は「2年前や去年には自主隔離したり、臨時隔離施設送りにしたりした人ついては、最近のケースと同じ症状であっても(当局が)コロナと言ったことはなかった」とし、実際にはかなり前からコロナ感染が広がっていたのではないかという噂が出回っている。
ちなみに、パンデミックが始まった2020年2月ごろには、既に「国内で感染者が発生した」との話が出ていた。その後も、各地でコロナ感染を疑わせる事態が発生しているが、正確な検査が行われていない上に、平素から様々な感染症の集団感染が発生していることから、断定できない状態が続いていた。
医療の現場でも、たとえコロナを疑わせる症状の患者でも、コロナと診断することはできなかったが、公式認定後は変化が生じたようだ。
「医療保健部門の人々も、コロナの症状と似た病気は(20年1月末の)国境封鎖後にも多かったが、保健省の指導書が下されず、病名を正確に診断することはできかった。今では『コロナと言っても良い』との指導書が下され、病院ごとに(コロナかどうかを判断する)協議会が行われている」(情報筋)
情報筋は住民の反応として、自国が2年間鎖国している間に、諸外国で様々な治療薬やワクチンが開発されたことを不幸中の幸いと考え、国際社会の支援に期待していると伝えた。
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