金正恩氏「外交のやり方を変えろ」部下を叱責…自分の責任は棚に上げ
米国のトランプ大統領は5月24日、北朝鮮の金正恩党委員長に宛てて米朝首脳会談を中止する旨を通告する書簡を送った。これを受け取った金正恩氏は、外務省と朝鮮労働党中央委員会の組織指導部に「過去のやり方を変えろ」という指針を下したという。
デイリーNKの対北朝鮮情報筋によると、金正恩氏がこのような指針を下したのは書簡が発送された翌日の25日のことだ。情報筋によれば、その内容は「従来型の外交術で朝米会談を主導しても、長年の敵対国家である米国としては(こちらを)信頼できない」「外交において信頼は命であり、最優先」であると強調した。
これは、米国に対して優位を占める目的から、金桂冠(キム・ゲグァン)第1外務次官と崔善姫(チェ・ソニ)外務次官が、米国を脅したり激しく非難したりする談話を、朝鮮中央通信を通じて発表したことを念頭に置いた言葉であると思われる。このような交渉戦術は過去のやり方で、状況を悪化させうるという点を指摘したものだろう。実際、トランプ氏はペンス副大統領を「まぬけ」と罵った崔善姫氏の談話を問題視し、金正恩氏に会談の中止を通告した。
しかし北朝鮮において、外交上の重要な談話や声明が、金正恩氏の承認なしに発表されるとは考えにくい。そもそも金正恩氏は、自国のメディア戦略を自ら統括している可能性がある。そうでなければ、北朝鮮メディアが金正恩氏の「ヘンな写真」を次から次へと公開できるはずがない。
このような事情を踏まえると、今回の指示には金正恩氏の「責任逃れ」の側面があることも否定できない。
いずれにしても北朝鮮は、米国に対する態度を変えた。25日、金正恩氏の委任を受けた金桂冠氏が、トランプ氏に会談開催を「哀願」するかのような談話を発表したのだ。その直前、崔善姫氏が米国向けの談話で「われわれは対話を哀願しない」などと述べていたことを考えると、ほとんど支離滅裂とも言える流れだ。
とにかく、この機にぜひとも対米関係を改善したいというのが、金正恩氏の本音であるということだろう。しかしこのような経緯を見ていると、金正恩氏は首脳会談でトランプ氏に圧倒されるのではないかと思えてくる。
米朝首脳会談は、それ自体が金正恩氏や北朝鮮に利益をもたらすわけではない。会談の後には、米国との様々な問題における長くてタフな交渉が待っている。その始まりに過ぎない首脳会談でつまづけば、金正恩氏は取り返しのつかない失点を犯す可能性すらあるのだ。
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