北朝鮮「美貌のウェイトレス」たちを襲う新たな災難
国連安全保障理事会の制裁決議は、国連加盟国に対し、自国に派遣された北朝鮮労働者を今年末までに送還することを義務付けている。
大口派遣先の中国には、北朝鮮レストランの美人ウェイトレスや各種工場の労働者ら、最大で8万人の北朝鮮労働者が派遣されていたとされる。
制裁決議が出た後も、北朝鮮労働者に比較的甘い態度を取り続けてきた中国だが、最近では本気で追い出しにかかっている模様だ。
北朝鮮事情に精通したデイリーNKの情報筋は、先月から中国の丹東にやってくる北朝鮮の人が減っていると伝えた。今年初めに中国が北朝鮮人にビザをあまり出さないようになるとの話があったが、それが実行されているもようだという。
「出稼ぎに来た人たちは人件費も安くよく働いてくれる人が多かったが、徐々に減っていてこっち(中国)の社長たちが困っている」(情報筋)
デイリーNKの情報筋は、中国当局が3月初め、遼寧省丹東にいる北朝鮮労働者のビザの1回の滞在期間を1週間に制限する措置を取ったと伝えた。また、5月から6月にかけて渡江証(臨時パスポート)所持者や私事旅行者(親戚訪問)の往来を制限し、年末までに全員を追い返す計画を立てているとも伝えている。
東京新聞も4月23日、中国政府が国内に滞在する北朝鮮労働者を6月末までに帰国させるように中国企業に求めていると報じた。
中国のこのような動きについて現地では、貿易紛争を抱える米国を北朝鮮問題で刺激したくないとい心理が働いた結果と見られている。米国は北朝鮮が明確な非核化措置を取るまでは制裁を続ける姿勢を取っているが、制裁に違反して北朝鮮労働者を新規に受け入れることは、米国の機嫌を損ねて、最優先課題である貿易紛争の解決の障害になるということだ。
北朝鮮も概ねそのような見方をしているようだ。中国で活動する北朝鮮の貿易関係者は「米国との貿易紛争をしている中国が対北朝鮮制裁をきちんと守っていることを示すために、北朝鮮労働者を追い返しているのではないか」と述べた。
当の北朝鮮労働者は、なんとか中国に残る方法はないかと考えているようだ。吉林省では、転職することで当局の追求を逃れようとする労働者がいるという。
「ここ(吉林省)では北朝鮮労働者が他のところに移動しつつある。おそらくまもなくあるであろう(中国政府の)帰国措置のせいで、密かに転職して、制裁を回避しようとしているのだろう」(情報筋)
同時に、研修生に身分を偽って働き続けようとする人も現れるだろうと情報筋は見ている。研修生なら労働者とみなされないからだ。
北朝鮮を取り巻く状況が劇的に変化しない限り、北朝鮮労働者にとっても、彼らを重宝してきた中朝国境沿いの中国企業、地方政府にとっては苦境が続きそうだ。
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