文在寅の「最後の砦」を突き崩す欧州からの刺客
韓国の文在寅大統領は4月9日、慶尚南道泗川の韓国航空宇宙産業(KAI)の生産工場で行われた韓国型戦闘機(KF-X)試作1号機の出庫式で演説し、「韓国も独自に作った先端超音速戦闘機を持つことになった。世界で8番目の快挙だ」と誇った。
KF-21という正式名称が付けられたこの戦闘機は、限定的ながらステルス性能を持つ4.5世代機だ。第5世代の米国製F-22やF-35には遠く及ばないものの、将来の可能性を開いた点では十分に意味ある実績だと言える。
とはいえ、巨額の開発予算が投じられる戦闘機は、戦いで必ず勝ち残ることが求められる。その点、KF-21に不安要素が多いのも事実だ。そして同機は今、実際の戦闘より先に国際競争で強力なライバルに追い詰められている。フランスのラファール戦闘機である。
韓国紙・中央日報によれば、インドネシアの現地メディアが10日、同国がラファール戦闘機の導入を決定したことを伝えたという。インドネシアはKF-21の共同開発国だが、開発予算の滞納が続いており、計画から離脱する可能性が囁かれている。韓国の専門家の間では、KF-21の性能の貧弱さに、インドネシア政府が不満を抱いているのではないかとの見方が語られている。
インドネシア政府の正式発表がないので事実関係は不明だが、フランスが政府を挙げて、ラファールの売り込みを行ってきたのは厳然たる事実だ。
ラファール戦闘機も、KF-21と同じ4.5世代機だ。しかしその性能は実戦でも証明されており、数次のバージョンアップで進化し続けている。
仮に、インドネシアがKF-21を捨ててラファールを取れば、韓国が被るダメージは甚大なものとなる。KF-21の開発に影響が出るのはもちろんだが、それだけではない。インドネシアが抜けた穴を自国で埋めるとなれば、その分、他に回す予算が圧迫される。韓国空軍では旧式のF-5、F-4戦闘機の運用が続いているほか、空対空ミサイルの更新も大幅に遅れているとされる。
それでも、主敵である北朝鮮を相手にする分には問題ないのだが、文在寅政権は「自主国防」の旗を高く掲げ、中国や日本に対してもライバル心を燃やしている。北朝鮮との融和が失敗に終わりつつある今、文在寅政権が外交・安保で独自色を残すための「最後の砦」であり、それを象徴するのが、海軍の軽空母導入構想だ。
しかし、超大型事業であるKF-21開発計画で困難が生じれば、ただでさえ国内で反対論の強い軽空母構想も頓挫しかねない。
もし、ここで文在寅政権がかじ取りを誤れば、韓国の国防力は今後長きにわたり、内実の伴わない「ハリボテ状態」に陥りかねないのだ。
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