「鳥のエサを食えと言うのか」金正恩の特別配給に庶民の不満爆発
北朝鮮の金正恩総書記は、6月の党中央委員会第8期第3回総会で、国民に軍糧米を配給せよとする特別命令書を発したと伝えられている。
これに基づいたものと思われる食糧配給が行われた地域もあれば、未だに何も行われていない地域もあるが、北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)では今月12日からコメの配給が始まったと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えている。
しかし、住民の間では強い不満が出ているという。
配給の貧弱さに失望し、「鳥のエサを食えというのか」などの声が上がっているという。北朝鮮当局はすでに、世論の不満をなだめるだけの余力すら失っているのかもしれない。
今回の配給は、道内最大都市の清津(チョンジン)を中心に、12日午前から1人あたり1週間分の食糧を配給するというものだが、有償での配給で、コメは1キロ3500北朝鮮ウォン(約70円)、トウモロコシは1500北朝鮮ウォン(約30円)で売り渡されている。
ちなみに、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、8日に恵山(ヘサン)で、1キロ4000北朝鮮ウォン(約80円)で5日分のコメが有償で配給されたと伝えているが、価格や量が地域ごとに異なる理由はわかっていない。
清津では、かつて全国的な配給が行われていた時代には、地方政府の糧政事業所と繋がった配給所で配給されていたが、今回は市の人民委員会(市役所)を経て各世帯に人員数に応じた分の食糧切符を配布。住民はこれをもって、トウモロコシとコメを8対2の割合で有償での配給を受ける形となっている。
これに伴い、清津の市場でのコメ価格は7200北朝鮮ウォン(約144円)から5300北朝鮮ウォン(約106円)に、トウモロコシは4300北朝鮮ウォン(約86円)から3500北朝鮮ウォン(約70円)に値下がりした。同様の現象は恵山でも起きている一方で、首都・平壌では「どうせ配給は長続きしない」と踏んだ商人の売り惜しみで、価格の変動は起きていないと伝えられている。
市場価格より安く穀物を手に入れた清津市民だが、早速不満の声があちこちから上がっている。
「生まれて初めて国から配給だか救済米だかわからないが、コメを受け取った。しかし調味料もなく、人が毎日食べる主食をこの程度だけ配るとは、命だけは助けてやるということではないのか」(清津市民の声)
国内有数の巨大市場を有する清津の市民としては、地域、国の経済を引っ張ってきたという自負心は相当なもののようだ。
「コロナ前には国境(の向こうの中国)が羨ましくないほど自分たちで商売をして豊かに暮らし、咸鏡北道を食べさせてきた」
それだけあって、今回の配給を見て、バカにされていると感じ、怒りをあらわにしているようだ。
「国境を完全に封鎖し、住民生活がこれほど苦しいのに、国というものは『鳥の餌』ほどの配給しかしないとはどういうことか。民心を慰めるだけの配給など望んでもいない」
一方、トンジュ(金主、新興富裕層)は国境が開かれ、貿易が再開される日を指折り数え待っているようで、「清津市民が3ヶ月間食べられる食糧を中国の業者から受け取って、3日で広場いっぱいに積み上げる自信がある」と大口を叩いている。
そして、「国は何もできないくせに、人民生活を不安にする。(人民を食べさせる)自信がないのなら、黙って見ているだけでいい、人を捕まえたりするな」と、食糧難を根本的に解決する策を出せずにいる国に対して不満を示した。
ただ、国境開放、貿易再開がいつになるか見通しが立たない中、トンジュがいくら自信を見せても、虚しく響くばかりだ。
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