美人ウェイトレスに労働者…「生き残り」に必死な北朝鮮
国連安全保障理事会で2017年9月12日に採択された制裁決議2375号は、国連加盟国に対して北朝鮮出身の労働者の新規雇用を禁じている。また、同年12月22日に採択された制裁決議2397号は、2019年末までに現在雇用している北朝鮮労働者をすべて本国に送り返すことを義務付けている。
その中には、北朝鮮の「看板娘」とも言える北朝鮮レストランの美貌のウェイトレスたちも含まれる。
最も多くの北朝鮮労働者を受け入れているのは中国だ。一時は制裁決議を誠実に履行する姿勢を見せていたが、最近は態度を変化させているもようだと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。
中国の国境都市の情報筋によると、北朝鮮の外貨稼ぎ機関の幹部が現地の中国企業を訪ね歩き、北朝鮮労働者を売り込む営業活動を行っている。
中国当局は、以前からいた北朝鮮労働者を6月末までに北朝鮮に帰国させるように指示を出していたが、多くの企業は守っておらず、未だに北朝鮮労働者を雇用し続けている。熱心な働きぶり、離職率の低さ、賃金の安さから北朝鮮労働者に魅力を感じているからだろう。
つまり、当局はさほど厳しい取り締まりを行っていないということだが、そこに目をつけた北朝鮮の外貨稼ぎ機関の幹部らは、なんとかして自国の労働者を雇ってもらえないかと売り込みに歩いているということだ。
中国企業の方も、当局が北朝鮮労働者の解雇、帰国を強制しないことから食指が動いているようだが、北朝鮮側から「3ヶ月分の賃金を先払いしてくれ」という「常識外の要求」(情報筋)を突きつけられたために、躊躇しているという。
北朝鮮の幹部は、さすがに旗色が悪いと見たのか、2ヶ月分だけでもいいから先払いしてくれないかと泣きつき、しつこく契約を成立させようとしてきたとのことだ。契約が成立したかどうかについて、情報筋は言及していない。
「北朝鮮側も3ヶ月分の賃金先払いの要求が行き過ぎだということを知らないわけがない。それでもそんな要求をしてくるのは、北朝鮮の外貨事情がいかに急を要するかを物語っている」(情報筋)
このように、国連安保理の制裁決議で禁止されている北朝鮮労働者の新規雇用と思しき事例が各地で報告されている。
北朝鮮労働者が多いと言われている丹東郊外の東港の住民によると、今年の春ごろから少しずつ帰国を始めていた北朝鮮労働者は、いつのころからかまたやってきて、例年と同じ数の5000人に達したと述べた。
北朝鮮労働者の再入国、再雇用が「中国当局の黙認なしでは不可能」としたこの情報筋は、先月の習近平国家主席の訪朝、板門店での3回目の米朝首脳会談と関係があるものと見ている。
RFAは、米国、英国、フランス、ドイツの4カ国は共同名義で、国連加盟国に対して安保理決議に従い、自国内の北朝鮮労働者に関する中間報告書の提出と、年末までの帰国を求める書簡を出したが、常任理事国の中国とロシアは抜けていると報じている。匿名を要求した情報筋は、RFAの取材に、中国は書簡の発送を止めようとしていたとが述べている。
一方のロシアだが、2017年10月に新規雇用をやめる方針を示し、同年12月に労働者を出国させているとの報道もあったが、その後も国際社会からの指摘をのらりくらりとやり過ごしている状況だ。
ロシア内務省移民問題担当局のオリガ・カキロバ局長は昨年9月、インターファクス通信のインタビューに、今年12月22日までに労働を続けられるとし、1万9559人が労働を行っていると述べている。
今年3月に、ロシア極東のウラジオストクの情報筋は、平壌の企業から新たに労働者が派遣されたとし、いずれも建設現場やレストランなどで働いていると伝えている。建設労働者は昨年12月にビザが切れて一度帰国し、今度は教育研修用のビザを取得してロシアに再入国したようだ。
北朝鮮は、「技術学習生」という日本の「技能実習制度」と同様の制度を悪用し、北朝鮮の学生をインターンとして中国で働かせてきたが、同様の手口でロシアに労働者を派遣しているようだ。
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