北朝鮮の留学生が怯える「恐怖の夏休み」…家族と生き別れの例も
北朝鮮当局は夏休みシーズンを迎えると、中国の大学に通う自国の留学生全員に対して帰国命令を下す。北朝鮮の学生にとっては忘れたころに巡ってくる「恐怖」と言える。
なぜなら、帰国したら二度と大学に復帰できない留学生が少なくないからだ。大学を中退させられるだけではなく、収容所に送られ、家族と生き別れになる可能性すらあるのだ。
血の粛清も
脱北者のイさんによると、帰国命令は思想検討のためだという。
「当局は海外にいる留学生を平壌に集め、15〜20日間ほど、人民大学習堂や青年同盟の強要学習所で思想学習と思想検討を受けさせる」
海外で資本主義に染まった考え方を徹底的に追及、除去することで、脱北を防ぎ、社会に悪影響を与えないようにするのが目的だ。
一連の日程の中でもっとも重要なものは「大論争」と呼ばれるものだ。
「思想的に問題がある」と見られた人物を壇上に立たせ、他の学生に徹底的に批判させるというものだ。その対象は、国家保衛省(秘密警察)が常日頃の監視の結果に基づき、あらかじめ選定する。こうなれば大学に戻れないのはもちろん、その後の出国も困難になる。ひどい場合には収容所に送られるかもしれず、人生は終わったも同然だ。
国の未来に重要な貢献をするであろう留学生に学業の放棄を強いるのは、当局がいかに彼らを危険視しているかの表れだ。極端な例だが、かつてソ連の軍事大学で学んだ北朝鮮留学生らが、帰国後にクーデターを起こそうとしたケースもある。もちろん、その企みは「血の粛清」で幕を閉じた。
当局の都合で、勝手に転校させられることもある。
別の情報筋によると、遼寧省丹東にある唯一の4年制総合大学にはかつて10数人の北朝鮮出身の学生がいたが、昨年春に急に姿を消してしまい、学校に来なくなってしまった。ある学生は、大連の大学に転入させられたという。
北朝鮮当局は「大学のレベルが低いから」という言い訳をしている。しかし、本当の理由は別のところにあるようだ。
情報筋によると、この大学の韓朝学院(韓国朝鮮学部)は、朝鮮語ではなく韓国語を教えるようになり、教員も韓国人に入れ替えられ、韓国の大学と姉妹提携を結ぶなど、韓国との交流を進めた。北朝鮮当局は、留学生が韓国文化に染まってしまうことを恐れたものと思われる。
しかし転校させたところで、韓国人留学生のいない大学など中国にはほとんどない。北朝鮮留学生の受難は続く。
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