台風被災地でも「吊し上げ」…金正恩の”ブチ切れ”災害対策
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、金正恩総書記が、台風による浸水被害に遭った地域を現地指導したと報じた。平安南道(ピョンアンナムド)の安石(アンソク)干拓地では、激しい言葉で現場の担当者や中央官僚を罵った。
さらに、批判は金徳訓(キム・ドックン)内閣総理にまで及び、「無力な活動態度と歪んだ観点にも大いに問題がある」と指摘し、「内閣総理の無責任な活動態度と思想観点を党的に深く検討する必要がある」とも述べた。
叱責された幹部たちは、水質管理を怠ってスッポンを死なせたとして、金正恩氏を激怒させて処刑に追い込まれたスッポン工場の支配人と同じ運命をたどるのかもしれない。
一方、金正恩氏が同様に視察を行った江原道(カンウォンド)の安辺(アンビョン)郡では、「思想闘争会議」が行われたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
朝鮮労働党中央委員会(中央党)の組織指導部は、党の江原道委員会(道党)の幹部を参加させた上で、安辺郡委員会(郡党)に対する「思想闘争会議」を2日間にわたって行った。責任追及と自己批判、そして相互批判を行う一種の「吊し上げ」だ。
重苦しい空気が漂う中で行われた会議では、郡党の幹部が繰り返し頭を下げて反省する様子を見せた。これに対して組織指導部は、次のような批判を加えた。
「台風が来ると予告したのに、昨年と同じような状況を招いたのは、イルクン(幹部)たちが安易な態度で臨み、無責任な働き方をしたからだ」
「党は、住民の食糧問題を毎日心配し、方針と指示を下して、今年の穀物生産は他の年よりよくなるように期待を寄せていたが、イルクンたちはいつもどおりの安易な態度で終始し、生活態度は何も変わっていない」
組織指導部はさらに、浸水被害が繰り返されたことについて、「郡の責任を担うイルクンたちが、主導的な役割を果たしていないことを意味する」として、田畑や住宅の浸水被害を防げず、党に心配をかけたとして、郡党の幹部全員をその場で解任した。
一方、災害復旧について組織指導部は、軍部隊のみならず、一般住民や学生も総動員して早急に終えるよう指示し、治山治水事業を進めて災害を予防する計画案も示した。
会議を見守った他の市・郡のイルクンはこうぼやいたという。
「毎年強力な対策を立てても、自然災害を防ぐことは難しい。国が解決に乗り出すべき部分だが、問題が起きれば(現場の)イルクンにばかり責任を負わせる」
金正恩氏と朝鮮労働党は無謬の存在だ。自らが認めない限り、その政策や指示に問題があったとしても、何人たりとも指摘できず、逆らうこともできない。無謬のはずの政策がうまく行かなかったのは、現場の幹部が正しく遂行しなかったからだ、というのが北朝鮮の理屈だ。そうして、幹部に責任がなすりつけられる。
叱責された幹部は、水質管理を怠ってスッポンを死なせたとして、金正恩氏を激怒させて処刑に追い込まれたスッポン工場の支配人と同じ運命をたどるのかもしれない。
そもそも、北朝鮮で自然災害が多発することの遠因には、金正恩氏の祖父・故金日成主席の提唱した全国段々畑化計画がある。山を削って段々畑を造成し、農業生産量を増やそうとするものだったが、土砂の流出、それによる水害多発と凶作、飢餓という結果をもたらした。
その間違いに気づいたであろう金正恩氏は、植林事業を熱心に推し進めているが、成果が出たのか検証は行われていない。また、地球温暖化による異常気象の多発に対しては、防災インフラの整備で対応しなければならないが、一朝一夕にできるものではなく、北朝鮮お得意の「速度戦」で工事を進めれば、手抜き工事による二次災害が起きかねない。
祖父と父の失政の尻拭いをさせられる立場の金正恩氏は、その責任を幹部になすりつけることで、無謬性を保とうとしているのだろう。
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