「仕方なく性上納も」脱北女性が語る北朝鮮軍の実態
新型コロナウイルス対策として国境を封鎖した北朝鮮が、中国との国境地帯の警備を強化する中、増強兵力として女性兵士が投入されていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の軍関係の情報筋はRFAに対し、「最近、国境地域の警備強化のため兵力が継続的に増強されているが、警備隊に新たに編入されているのは主として女性兵士の部隊だ。中隊単位で各地域に配置されており、臨時に設営された兵舎で寝起きしながら、見張り所での任務についている」と話した。
情報筋はまた、「国境地域に女性兵士の部隊を投入している理由は、基本戦闘単位である男性兵士の部隊は様々な国家建設事業や水害復旧に動員されているため。男性兵士の不足で、女性兵士のような非戦闘単位の隊員たちを、戦闘単位に編入するしかなくなっている」と続けた。
こうした兵力の不足は、今に始まったことではない。より本質的な背景としては、少子高齢化があると思われる。
北朝鮮は最近、兵役期間を男性は9〜10年から7〜8年、女性は6〜7年から5年に短縮した。これだと兵力はいっそう減ることになるが、その埋め合わせとして、女性の兵役義務が本格実施されたとの情報がある。
北朝鮮でもこれまでは、女性に対する兵役は全面施行されているわけではなかった。
2015年から行われることになっていたが、様々な抵抗でうまく進まず、2019年4月からどうにか実施。2020年に入っても試験的実施に留まっていたが、RFAの咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、この4月から本格実施に移行したという。
しかし、女性の兵役義務に対しては、なおも国民の抵抗が強いと言われる。RFAの情報筋も、2019年の女性兵役実施の布告に対して、卒業を控えた娘を持つ親の間で激しい動揺が広がったと伝えている。軍内では女性兵士に対する上官の「性上納」強要などの虐待が横行しているためだ。
ある脱北女性は、RFAの取材に次のように語っている。
「(兵役の義務化前にも)軍に志願する女性はいましたが、その理由は(朝鮮労働党の)党員証を持つためですが、指揮官たちはそれと引き換えにワイロを要求し、性上納も強要します。それでも、告発することなどできません。そんなことをして生活除隊(不名誉除隊)でもさせられたら、それ以上の発展は望めないからです。それで仕方なく、上官の性的な奴隷になってしまうのです」
北朝鮮は巨大な軍隊を様々な国家事業に投入し、労働搾取を行うことでどうにか国の屋台骨を維持してきた。しかし少子高齢化が進行し、国民の兵役忌避が強まれば、そうした構造も維持するのが難しくなるかもしれない。
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