北朝鮮「虐待労働」の証拠写真…米団体が公開。公開処刑の場面も
トランプ米大統領は昨年9月19日、初めて国連総会の一般討論演説を行い、核兵器開発に突き進む北朝鮮を「ならず者国家」と強く批判した。また、横田めぐみさんの拉致事件や幹部粛清などの人権問題に触れ、こうした体制が世界の脅威であることを強調。「正義が邪悪に立ち向かわなければ、悪が勝利する」とも訴えた。
あれから1年が経った今、トランプ氏は金正恩氏との2回目の会談を心待ちにしている。非核化の対話は始まったものの、北朝鮮の人権状況には何ら改善が見られないにもかかわらずだ。
トランプ氏だけではない。韓国の文在寅大統領や、米韓のその他の指導的な政治家たちも、北朝鮮の人権問題から目を背けている。しかし彼らは、いつまでそのような態度を取り続けられるのだろうか。金正恩体制による人権侵害は、ただの噂話ではない。すでに様々な証拠が蓄積されてきているのだ。
米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)によれば、米国のNGOである北朝鮮人権委員会(HRNK)は8月30日、咸鏡北道(ハムギョンナムド)の清津(チョンジン)にある25号管理所の収監者たちが強制労働させられる様子を撮った衛星写真を公開した(画像参照)。
管理所とは政治犯収容所のことで、あらゆる残酷な行為が横行する「この世の地獄」とも呼ばれる施設だ。
北朝鮮の人権侵害の様子が、衛星写真に捕捉されたのはこれが初めてではない。HRNKは過去、公開処刑の様子を捉えた証拠写真も公開している。
それも、人間を文字通り「ミンチ」にしてしまう、大口径の高射銃を使った公開処刑の様子だ。
また、管理所の写真自体はこれまでにも数多く撮影されているが、今回は初めて、収監者や警備隊員と見られる人影が確認された。収監者に対する強制労働はしばしば、事故や虐待による犠牲が生まれる。
今後もこのような監視活動が続けられれば、北朝鮮の人権侵害はいっそう明確な形で暴かれ、関係国の指導者たちが目を背けるのも難しくなるかもしれない。
また、北朝鮮当局によって行われた、過去の虐殺に関する証拠集めも進んでいる。
韓国・ソウルに本部を置く「転換期正義ワーキンググループ(Transitional Justice Working Group)」は、北朝鮮国内で銃殺が行われた場所、死亡者の遺体が集団埋葬された推定地、遺体の火葬場所などを示したマップの制作を進めている。TJWGはこれまで、数百人の脱北者との対面調査を行い、そこで得たデータを情報技術(IT)を駆使した手法で解析し、場所を推定。その場所を地図上の座標に落とし込む作業を続けてきた。
作業はまだ続いているが、昨年7月に中間総括として発表された報告書によると、銃殺や火あぶりなどの刑が行われた場所、集団埋葬の推定場所など計393カ所を把握したという。
先週、南北首脳会談のため文在寅氏を平壌に迎えた金正恩党委員長の態度はおおらかで、彼が今にでも国を開放するのではないかと錯覚した人も少なくなかったのではないか。しかし、いかに対話が進もうとも、彼が簡単に国を開くことができない理由が、ここにあるのだ。
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