凍った土を掘って木を植える北朝鮮の植林事業
金正恩総書記が2012年から進めている全国山林化計画。1990年代後半の「苦難の行軍」のころに深刻化した山林の荒廃を食い止め、山の保水力を取り戻し、災害の多発を防ぐというものだ。
毎年3月2日の植樹節の前後には、全国で植樹が行われる。ただ、北部では時期的に早すぎて、植えた木が枯れてしまうが、それは時期が遅すぎても同じことだ。
既に冬が到来した北部の両江道(リャンガンド)では、朝鮮労働党両江道委員会(道党)の指示に基づき植樹が行われていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
現地の情報筋は、恵山(ヘサン)では道党の指示に基づき、段々畑の造成と植林事業が進められ、工場、企業所の従業員、人民班(町内会)の住民を動員し、割り当てた地域で段々畑を作らせ、木を植えさせていると伝えた。
1世帯あたりの割当は15本だが、事業は木を植えただけでは終わらず、苗木に植えた人の名前を書いたビニール袋をぶら下げて、面倒を見させている。既に土が凍っており、植樹は非常に骨の折れる作業だ。
病気など何らかの事情がある人は、1万北朝鮮ウォン(約180円)を払って「代打労力」と呼ばれる人を雇い、動員に行かせなければならない。雇った人の食事も用意しなければならないが、それができなければ2倍の賃金を払わなければならない。病気でも代打労力を雇うほどの経済的余裕がない人は、苦しくとも山に足を運ばなければならない。
現地の別の情報筋は、工場や企業所の従業員は、仕事そっちのけで山で植林を行っていると伝えた。割り当てられた区域が遠い場合は、苗木、道具、働く人を乗せる車を借りなければならず、非常に負担になる。
今月に入って気温が氷点下まで下がり、地面が凍っていることから、動員された人々は辛い作業に不満の声を上げている。本来は10月中に終えよとの指示が出ていたが、凍った土を掘らなければならず、計画通りに進んでいない。
「春から秋まで、線路の補修、道路工事に動員されて疲れ果てた人々は、寒空に段々畑の造成と植林に駆り出され、当局を露骨に批判している」
「工場、企業所の従業員は1年中息つく暇も与えず、様々な動員令を下す当局に文句を言っている」(情報筋)
そんな苦労をして植えた木も、氷点下20度以下になる厳しい冬を乗り越えられず、枯れてしまうことだろう。
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