「誰も共感していない」“消息不明”の金与正氏に冷たい視線
北朝鮮の金正恩総書記の妹・金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党宣伝扇動部副部長の消息が、54日間にわたり公開されていない。韓国紙・朝鮮日報が6日付で伝えたところによれば、韓国の情報当局も彼女の動静を把握できておらず、「金与正氏の周辺で異常事態が起こった」との見方さえあるという。
ただ、韓国の専門家の間では、金与正氏は権力中枢で内部作業に取り組んでいるという見方が大勢のようだ。
昨年6月、韓国と合同で運営していた南北共同連絡事務所を爆破して以来、「対外強硬派」の立ち位置を固めたように見える金与正氏は、いよいよ体制の根幹を支える役割を与えられたのかもしれない。
ただ、彼女に対する末端幹部や一般国民の評価は高くはないとされ、「(金与正氏の)談話には誰も共感していない」などの声も聞かれる中、どれほど効果的に役割を果たせるかは未知数だ。
朝鮮日報によると、韓国の専門家の間では金与正氏が姿を消したことについて「権力を握って10年の節目を控えた金正恩氏の偶像化作業に宣伝扇動部が中心的な役割を果たしているため」との分析もあるという。
確かに今、思想統制を担当する宣伝扇動部の役割が重要性を増しているであろう状況は、様々な動きから推測できる。
たとえば朝鮮労働党機関紙・労働新聞は11月8日の1面に掲載した「鍵となる初年の戦闘の決勝戦は遠からず、必勝の信心高く勇気百倍で前進!」という記事の中で、「偉大な首領でいらっしゃる敬愛する金正恩同志」と、金正恩氏に対して首領という呼称を使用している。
首領、将軍、元帥などと、北朝鮮の歴代の最高指導者の呼称は様々あるが「首領」「偉大な首領」と言えば、通常は故金日成主席を指す。この「常識」を変更するのは、党宣伝扇動部にとっては極めて重大な作業だ。
だが、北朝鮮国民は、金正恩氏と金与正氏の兄妹にそのような大きな変化を主導する資格があると見ているのだろうか。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、北朝鮮メディアが金正恩氏のことを「革命の首領」「人民の首領」などと呼んでいることについて、「このような呼び方に市民は首を傾げている」とする、平壌の情報筋の反応を伝えている。
「まだ40代にもなっていない金正恩氏が、自らを祖父金日成氏と同じ地位に立たせたのは、父親の金正日総書記とはあまりにも異なる姿だ」(情報筋)
金与正氏に対する見方はさらにシビアだ。同じくRFAによると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のある幹部は「(米韓合同軍事演習などに対し)激しく反発する金与正の談話に共感する住民はひとりもいない」と語っている。
金正恩氏ら兄妹は、少なくとも傍目には、順調に金王朝による独裁の足場を固めてきたように見える。しかしそんな彼らにとっても、祖父と父が築いてきた「常識」を変更することは、決して容易いことではないのだ。
Copyright(C)DailyNKJapan 2014
「消息不明」をもっと詳しく
「消息不明」のニュース
-
消息不明だった“北朝鮮のクリロナ”が3年ぶりに登場 W杯予選出場に欧州メディアも驚嘆「世界からも姿を消していた」11月17日18時0分
-
北朝鮮女性20人「集団亡命」か…海外で消息不明、米メディア報道3月23日6時46分
-
北朝鮮女性ら20人が集団脱北か…先月中旬、中国で消息不明に3月22日11時8分
-
おばたのお兄さん「精子が全然なかった」不妊治療で男性に知ってほしいこと2月25日16時31分
-
「誰も共感していない」“消息不明”の金与正氏に冷たい視線12月7日6時27分
-
「glee」ナヤ・リヴェラが湖で消息不明、転落か…ボートに残された4歳の息子は無事7月9日16時30分
-
搭乗飛行機が墜落か…消息不明のサラ、現地警察が「捜索打ち切り」を決断1月25日0時59分
-
韓国の情報力劣化か…金正恩氏の側近「消息不明77日間」は間違い12月26日15時34分