「金正恩資金」のネコババがバレた幹部たちが辿る悲惨な末路
北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、今月3日の1面に「偉大なる党の領導と全人民的愛国忠情で天地開闢された人民の理想都市、三池淵郡邑地区竣工式を盛大に開催」という見出しの記事を掲載。金正恩党委員長が竣工式に参加したことを伝えると同時に、「天をも感服させる全人民的な愛国忠情と決死貫徹の闘争、自力更生がもたらした大勝利」だとして、三池淵(サムジヨン)郡の再開発プロジェクトを激賞している。
こうした大々的な報道は、金正恩氏の国際社会に向けた「制裁には屈しない」という意思表明の現れとも言えよう。しかし、そんなものにつきあわされる北朝鮮国民は疲弊しきっている。
労働力は、当局が挑発する突撃隊と呼ばれる半強制の建設ボランティア部隊で賄われるが、報酬は払われず、環境が劣悪なため、逃げ出す人が相次いでいる。
また、建設費は国民から徴収した事実上の税金によって賄われているが、幹部らによる着服が相次いでいる。そのあまりの深刻さに業を煮やした当局は、強硬策に出た。
両江道のデイリーNK内部応報筋によると、企業所の支配人や管理者、朝鮮労働党のイルクン(幹部)など、多くの幹部が着服に関与している。金正恩党委員長が直接指示する事業だけあって、全国的に建設資金が集められたが、それにもかかわらず資材が不足している。資材の調達に支障をきたすほど、着服が横行しているということだ。
それに対する政府の対応策は、「銃殺」だ。
今年6月には、国民から集められた建設資金のうち、4万ドル(約434万円)を着服した幹部が摘発され、銃殺刑に処された。本来は「見せしめ」のため公開処刑にされるところだろうが、一方で国の重要な施設の建設現場の士気にかかわるとの懸念もあり、銃殺は非公開で行われたという。
金正恩氏の「権威」を傷つけた幹部が知らぬ間に消えていた、との前例は過去にもあった。
また、15年の教化刑(懲役刑)という重い判決が下された幹部もいる。北朝鮮の教化所(刑務所)の劣悪な環境を考えると、死刑にも等しい判決だ。
現場のある三池淵だけではなく、黄海道(ファンヘド)と平安道(ピョンアンド)でも建設費を着服した幹部に対する調査と処罰が行われた。建設費の徴収と資材の徴発が大々的に行われたこともあり、放置していては示しがつかないということなのだろう。ただし、銃殺は行われず更迭や教化刑で済まされたという。
工事の最終的な完成は2020年。建設費の徴収や労働力の動員はそれまで続くと思われる。
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